2025年4月から「子の看護休暇」が変わる! 入園式や学級閉鎖でも使えるけど“お金”は出る?

配信日: 2025.04.22

この記事は約 4 分で読めます。
2025年4月から「子の看護休暇」の制度が拡充され、学級閉鎖や入園・入学式でも休暇取得が可能になります。一見、子育て世帯にとってありがたい制度改正のように思えますが、「実際は無給になるケースが多い」といった声も。
 
本当に“使いやすい制度”なのか?給与は出るのか?会社側の対応や就業規則の確認ポイントまで解説します。
重定賢治

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

私たちは、ある環境のなかで生きている

図表1は、私たちがある環境のなかで生きていることをイメージしてもらうために作成したものです。
 
今回の記事の内容は、生活環境のうち「仕事(職場)面での変化が家庭環境に影響を与える」という視点で読み進めていただければと思います。
 
図表1

図表1

※筆者作成
 

「子の看護休暇」の改正内容

要点をいうと、子の看護休暇が「子の看護“等”休暇」に改正されます。
 
現行の制度では、子の看護休暇は、子どもが病気やけがをしたり、予防接種や健康診断を受けたりすることを理由に親が仕事を休むためのものです(休暇の日数は、原則、1年間に5日で、子どもが2人以上いる場合は10日)。
 
今回の改正により、子の看護休暇を取得する理由に「感染症に伴う学級閉鎖等」と「入園(入学)式、卒園式」が追加されます。このようなことから、子の看護休暇という名称が「子の看護“等”休暇」に修正されます。
 
一般的にはこの点を理解していれば十分ですが、入園(入学)式や卒園式が取得事由に加えられることに着目すると、対象の児童が小学校3年生までであることの意味も、想像しやすくなるのではないでしょうか。
 
背景としては、父親の育児・子育てへの参加が求められる時代になっていることが考えられますが、国としては「仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス)を推進する」という目的があるのでしょう。
 
図表2 子の看護休暇の見直し

図表2

※厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
 
もう一つの改正点は、事業主から見た労働者の対象要件です。現行では、「週の所定労働日数が2日以下」と「継続雇用期間が6ヶ月未満」の場合、これに該当する労働者は、子の看護休暇の対象から除くことになっています。
 
今回の改正では「継続雇用期間が6ヶ月未満」という労働者の対象要件を撤廃し、改正後はより広く労働者が子の看護等休暇を取得できるようになります。この点は、職場復帰後の労働者の育児・子育て環境に寄り添ったものといえるでしょう。
 

子の看護休暇が改正されても、有給休暇を選ぶ親が多い?

子の看護休暇が改正されるといわれても、「正直、あまり影響がない」と感じる親は多いでしょう。例えば子どもが風邪をひいて、親が世話のために会社を休む場合、有給休暇(有給、有休)を取得するのが一般的です。
 
なぜこのような選択をするかというと、子の看護休暇(育児・介護休業法)には、賃金の支払いについて明確な規定がないからです。
 
多くの会社では、就業規則(会社が定める労働のルール)に「子の看護休暇を取得した場合、賃金の支払いを行う」などとは定められておらず、無給となるのが実情です(定めていれば、賃金が支払われる)。
 
このようなことから、育児・介護休業法が改正され、入園(入学)式、卒園式を理由に会社を休んだとしてもあまり影響がないと考えるのは当然のことでしょう。
 

今後の対策として

子の看護“等”休暇が始まると、「入園式でも、看護休暇で会社を休めるらしいよ?」といった話を耳にするかもしれません。おそらく、このような話を聞くと、「有給で休めるの?」と思ってしまう人もいるでしょう。
 
そう思う前に、まず、勤めている会社の就業規則で子の看護“等”休暇について給与の支払いがあるかどうかを確認するようにしましょう。あればよいわけですし、なければ有給を選べばよいわけです。
 
ひょっとしたら、勤めている会社の就業規則に不満を感じる人もいるかもしれません。この場合、就業規則に定められている内容だけでなく、他の諸規定についても目を通した上で、このまま仕事を続けるか、転職するかを判断するのも一つの手といるでしょう。
 
ほかにも、最近よく指摘されている労働組合を組織する、または労働組合に加入するといった団体交渉への参加が考えられます。労働者は労務を提供しているわけですから、待遇について改善するよう要求する権利も当然ながら持っています。
 
ハードルが高いかもしれませんが、中小企業で特に賃上げが進みにくいとされる理由はこのようなところに原因があったりもするため、一考の価値はあるでしょう。
 

まとめ

政府が子の看護休暇を改正する目的は、仕事と家庭の両立を推進することにあります。
 
国が提示している価値観を社員・従業員に浸透させるには、事業主への周知と意識改革が求められます。しかし、事業主にとっては人手不足の問題もあり、社員・従業員の待遇を改善したくても難しいというのが現状でしょう。
 
今後も働き方改革は進んでいきます。その過程で社会がどのように変化するか、そして、会社と家庭がどのように共存していくのか。人生設計において、このようなことについて考えてみるのも面白いかもしれません。
 

出典

厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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