「健康のために2駅分歩いているけど、交通費はそのままもらっている」という先輩。もし会社にバレたらどうなってしまうのですか?
配信日: 2025.04.21


CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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そもそも通勤手当ってどういうもの?
通勤手当(交通費)は、「実際にかかった通勤費用を会社が補助する」という目的で支給されます。会社は、申請された通勤経路や定期代に基づいて交通費を計算・支給します。
したがって、「実際に使っていない区間まで請求して受け取っている」と、虚偽申告(うそ)とみなされる可能性があるのです。
バレたらどうなるの?
では、虚偽の申告ということがバレたらどうなるのでしょうか?
まず考えられるのが、会社からの処分の可能性です。会社から受ける処分内容は、就業規則や会社の方針によって異なりますが、一般的には以下のようなケースが想定されます。
1.交通費の返還命令
受け取っていた過去の過払い分の交通費を返金するよう求められます。過去数ヶ月〜数年分さかのぼって請求されるケースもあります。
具体的には、実際は徒歩で通勤していたのに、6ヶ月定期代を申請していたことが発覚した場合、6ヶ月分の定期代が約5万円なら、その金額に相当する額の返金を求められます。
2.始末書・口頭注意・書面での注意
初回や悪意がなかったと判断された場合、「注意処分」として済むこともありますが、始末書の提出や、今後の是正を誓約させられるケースもあるでしょう。
3.減給・賞与カット
就業規則違反にあたるとして、「減給」や「賞与(ボーナス)の減額」の対象になることもあります。具体的には、通勤費の虚偽申請が社内監査で発覚した結果 、1ヶ月分の賞与の減額になるなどです。
4.懲戒処分(軽〜重)
故意や悪質性が高いと判断された場合、懲戒処分が科される可能性もあります。
懲戒処分にも、度合いによってさまざまです。最も軽い懲戒の戒告から文書での厳重注意としての譴責(けんせき)、減給処分、出勤停止、最も重い処分として、懲戒解雇になる場合も否定できません。
最悪のケースとしての懲戒解雇(最悪のケース)が適用されるのは、虚偽申請の金額が大きく、長期間続いていた場合、他の不正と併せて発覚した場合や、再三の注意にもかかわらず是正しなかった場合などがあげられます。懲戒解雇になると、退職金なし・即時解雇となる可能性もゼロではありません。
それだけではありません。税務や社会保険にも影響することがあります。通勤手当は、一定限度まで非課税扱いですから、申告ミスや実態と違う経路での受給は、税務調査で指摘されるリスクもあります。
健康のために歩きたい人はどうすればいい?
それでも「健康のために2駅歩く」という心構え、取り組みは素晴らしい健康習慣です。ただしその場合、実際に使っていない交通経路を申請し続けるのは避けるべきです。
実際にどうすればいいでしょうか。
具体的には、「最寄り駅まで徒歩通勤することを会社に申請し直す」または「実際に使う交通機関だけを正確に申請する」ようにしておけば心配いりません。企業によっては「健康目的で一部徒歩通勤OK」と認めている場合もあるので、総務部などに相談して正しく申請することが大切です。
まとめ
「ちょっとくらい……」と思っていた通勤費のズレですが、実は大きなトラブルを引き起こすリスクがあることを確認しました。
健康のための取り組みや工夫を否定するものではなく、それ自体は素晴らしいことですが、お金の扱いは「正しく、誠実に行う」ことが基本です。会社に対する信頼の損失や、人事評価への影響も大きいので、「バレなければいい」という安易な考え方はとても危険です。万一、バレた時のトラブルやリスクを考えれば正直に申告することが大切です。
出典
国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者