「ゴミ置き場が汚い」とマンションの管理組合が、「仕分けが甘い持ち主を特定する」と言っています。管理組合でも、人のゴミを“勝手に開ける”のは犯罪にならないの? 筆者の実体験もあわせ解説

配信日: 2025.04.20

この記事は約 3 分で読めます。
ある日、管理組合の会合で「ゴミの分別が守られていない」「ルール違反者を特定すべきだ」という声が上がり、住人のゴミを開封する案が議論されました。これは筆者の住むマンションで実際に起きた出来事です。ご近所トラブルはさまざまですが、こうした対応は法的にどこまで許容されるのでしょうか。
 
本記事では、管理組合が住人のゴミを開封する法的リスクと、繰り返されるルール違反への効果的な対策を紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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管理組合がゴミを開封する行為は違法になりうる

捨てられたゴミは、所有権を放棄したものと見なされますが、個人の特定などに悪用される恐れがあります。主に以下の法律に抵触する可能性があります。
 

不法行為(民法709条)

ゴミを無断で開封し、精神的苦痛やプライバシー侵害を引き起こした場合、住人は損害賠償を請求できます。
罰則:民事上の損害賠償責任(慰謝料や損害額に応じた賠償)
 

信用毀損・業務妨害(刑法233条)

ゴミの内容を公表し、それが誤った情報で住人の信用を傷つけた場合は、信用毀損(きそん)罪に該当する可能性があります。また、嫌がらせ目的で開封すれば、偽計業務妨害罪が成立することも考えられます。
罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
 

議会で可決すればゴミの開封は許されるのか?

マンションのルールを厳格にするには、特別決議(住民の3/4以上の賛成)が必要になりますが、あくまで法律が優先されます。一部の住民が「自分のゴミを開封されるのはプライバシーの侵害だ」と異議を唱えれば、法的なトラブルに発展する可能性もあります。
 
さらに、ゴミの取り扱いは自治体のルールにも関係します。自治体によっては「収集前のゴミは住民の管理下にある」と定めている場合があり、その場合、管理組合が勝手にゴミを開封する行為は不適切と判断される可能性もあるでしょう。
 

繰り返されるルール違反に対して管理組合の次の一手

通常の注意喚起では効果がないこともあります。そこで、管理組合が取るべき次の対策を紹介します。
 

特定の部屋番号を掲示せず個別に警告

「不適切なゴミ出しが増えています。適切な分別をお願いします」という内容を、個人を特定せずに各部屋にポスティングします。ダイレクトに伝わるため、身に覚えのある住民に効果的です。
 

監視カメラや照明ライトの設置

監視カメラやセンサー付き照明を設置することで、抑止力が期待できます。監視カメラを設置する際は「防犯カメラ作動中」の掲示を行い、監視目的が適切であると周知することが重要です。
 

個人情報に配慮しながら、問題のあるゴミの写真を掲示

違反ゴミの状況を撮影し、個人情報が特定できない形で掲示する方法もあります。「〇月〇日に分別されていないゴミがありました。再発防止にご協力ください」といった形で周知すると、住民の意識が向上しやすくなります。
 

まとめ

筆者は不動産業に従事していたため、ゴミの開封に違和感を覚えました。管理組合は住民の組織であり、法的知識が十分でないこともあるでしょう。
 
適切に管理されているマンションでは、管理会社が専門的に対応し、問題解決をサポートします。住民同士で直接対処するよりも、管理会社を通すほうがスムーズに進みます。トラブル解決には、専門家の意見を取り入れることが重要です。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
e-Gov法令検索 刑法
e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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