「月の権利書」を持っているという父。昔3000円で買ったらしいけど、本当に月の土地を“所有”できるの? 月の所有権について解説

配信日: 2025.04.18

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「月の権利書」を持っているという父。昔3000円で買ったらしいけど、本当に月の土地を“所有”できるの? 月の所有権について解説
「いつか宇宙に住む日が来るかもしれない」そんなロマンあふれる想像をしたことは誰しも一度はあるでしょう。地球に住む私たちにとって最も身近な「宇宙」といえば「月」です。
 
1969年にアポロ11号が月に上陸して以来、いつかは月に降り立ってみたいと夢見た人も少なくはないのでしょうか。そんな「月」ですが、その「土地の権利」を購入できることを知っていましたか。
 
本記事では、月の土地はいくらで購入できるのか、また本当にその「土地の所有権」が手に入るのかについて解説していきます。
新川優香

「月の権利書」ってなに?

月の権利書とは、「月の土地を所有している」と証明するための書類で、主に民間企業が販売しているものです。その中でも有名なのが、1980年にアメリカのデニス・ホープが設立した「Lunar Embassy」という企業で、日本にも代理店があります。
 
「Lunar Embassy」で販売されている月の土地の価格は日本円で2700円(税込・2025年3月時点)で、「Lunar Embassy」の日本代理店を通してアメリカの本社で権利申請や登録を行い、「権利書」が届くという流れになっています。
 
この権利書には、購入した土地の座標や所有者の名前などが記載されており、月の土地権利書のほかに月の地図、月の憲法、土地所有権の宣言書コピーが同封されてきます。
 

月の土地は誰のもの?

「月の土地」はそもそも誰のもので、誰の権利によって売買されているのでしょうか。実は国際法の「宇宙条約」によると、政府が月や惑星を所有することは禁じられていますが、企業や個人については明記されていません。
 
そのため、この条約のグレーゾーンに目を付けた民間企業が次々と月の土地を販売し始めたのです。そこで1984年に「月協定」が制定され、営利目的の開発・利用が禁止となりましたが、アメリカやロシア、中国などの主要な宇宙開発国はこの協定に署名せず、法的拘束力は弱いというのが現状です。
 
これらの国の民間企業は「月の販売は違法ではない」として月の土地を販売しています。ただし、現時点ではどの国の法律でも公式に月の所有権は認められておらず、購入しても法的に保障されるわけではありません。
 

月に移住できるようになったらその土地が使えるの?

「月の土地を持っている」と聞くと、将来そこに移住したり活用したりできるのか気になりますが、結論から言うと「可能性は低い」と言えるでしょう。
 
まず先ほども解説した通り、国際法では月や惑星の個人や企業の所有権については明確に禁止されてはいませんが、だからと言って所有権が認められているわけではありません。
 
もしも将来的に人類が月に移住することになった場合は、新たな国際ルールが制定されることが考えられます。そのときに、明確な法律の下で販売されていない「月の土地の権利証」が有効なものとされる可能性は低いでしょう。
 
仮に認められたとしても、居住や利用には多額の費用と技術が必要となることが予想されるので、個人が自由に土地を活用することは難しいとも言えます。
 

誰が月の土地を購入しているの?

所有権が確かでない月の土地ですが、どんな人がどのような目的で購入しているのでしょうか。アメリカでは、元アメリカ合衆国大統領や有名ハリウッドスター、アメリカの有名企業が購入をしており、なんと全世界175ヶ国、約130万人もの所有者がいるとのことです。
 
また日本でも誕生日や結婚記念日のプレゼントとして購入するケースが見られます。
 

夢とロマンにあふれた「月の権利書」

月の権利書は、将来的に「所有権が保障されている権利書」というよりも「所有している気分を楽しむための記念品」に近いものと言えます。また、今後の宇宙開発や国際的な法整備によって、その価値が変わる可能性もあるでしょう。
 
しかし、夜空に美しく輝く月の一部が自分のものだと思うと、ロマンがありますよね。「いつか月に住めるかも」という淡い夢を抱いて月の土地を買うというのも、また趣のあるものかもしれません。
 

出典

Lunar Embassy Japan
 
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級

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