オンラインゲームの対戦相手から海外の仕事を紹介されて行ったら、海外での特殊詐欺に加担させられる!? 巧妙化する海外を拠点とする特殊詐欺とは?
配信日: 2025.04.17

本記事では、巧妙化する特殊詐欺の手口について一例をご紹介します。

CFP(R)認定者
相続診断士
終活カウンセラー
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
海外で短期間に高収入! しかし、行ってみたら……
2023年8月9日、外務省は「特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために)」を発出しました。
それによると、「簡単な翻訳作業」や「海外で短期間に高収入」などのうたい文句に、東南アジアを中心とする海外に誘い出されて渡航したら、拉致、監禁させられて特殊詐欺の「かけ子」や「受け子」を強制的にやらされた結果、現地警察に逮捕されたり、組織内で暴行を受けたりする事案が多発しているとのことです。
特殊詐欺の「受け子」は警察に拘束されやすいので、「捨て駒」が必要です。世界中で特殊詐欺を働くには、現地の言葉を話す「かけ子」が必要です。詐欺集団は人を集めるために甘い言葉でおびき出してくるので、注意をするよう呼びかけました。
ところが、その後も海外の闇バイトに応募して、現地警察に拘束されることが発生しているため、外務省は、2024年12月16日に特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために(その2))を発出しました。
闇バイトに加担してしまうと、やめたくてもパスポートを取り上げられて軟禁状態になったり、自分や家族の個人情報をもとに脅されて逃げ出せなくなったりします。
仕方がなくやったとしても、犯罪は犯罪です。海外でも犯罪を行えば処罰の対象となり、「知らなかった」ではすまされません。また、闇バイトの応募者は実行犯約(「捨て駒」)なので、警察に拘束されても組織は助けてくれません。
海外でも、短期間で高収入という仕事はありません。外務省や警察をはじめ各所では、安易に応募して、意図せず犯罪に加担することがないよう、十分慎重に行動するよう呼びかけています。
オンラインゲームで知り合った知人から海外のもうけ話
ところが、さらに、「捨て駒」を集める手口が巧妙になります。
主な接触手段は、SNSやオンラインゲームです。交流を深め「知人」となり、闇バイトの誘いをかけてきます。その結果、未成年者までも特殊詐欺に加担させられる事件が発生しました。
2025年2月20日、外務省は「特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために(その3))」を、発出しました。警察庁でも、「『海外でもうかる仕事』は危険です」を発出しました。
そこでは、オンラインゲームやインターネット等で交流はあるが、面識のない「知人」から「海外でもうかる仕事」に誘われて海外渡航した結果、最終的にミャンマーの特殊詐欺拠点に脅迫・監禁されて逃げられなくなり、特殊詐欺等の犯罪に強制加担させられる事案が発生していることについての注意が呼びかけられています。
また、外務省の「ミャンマー・タイ国境付近の詐欺拠点に関する注意喚起(ミャンマー)」によれば、この地域は特殊詐欺の拠点が数多く所在し、少数民族武装組織が実質的に支配しているため、救出や解決が困難である可能性があります。
“もやもや世代”の若者の心につけ込む、ネットの向こうの「知人」
SNSでのやり取りや、オンラインゲームの対戦をしていくうちに、「はじめまして」の相手が「知人」となるのはそれほど時間がかかりません。特に、ひとり立ちに向けて親離れをしていく中高生世代は、親以外の身近な大人の影響を受けやすくなります。
思春期のもやもやを抱えている世代にとって、その身近な相手から「海外へ遊びにおいで」と「海外でもうかる仕事」を紹介されたらどうでしょう。渡航費、滞在費タダの稼げる仕事。旅行気分でちょっと行ってみたい、と思ってしまうのも無理はありません。
では、渡航することを防ぐ手だてはあるのでしょうか。
未成年者の場合は、パスポートを取得する際、申請書に法定代理人(保護者または後見人)の署名が必要なため、ここで保護者が気づき渡航を止められる可能性があります。しかし、18歳になった子や、すでにパスポートを持っている子については、渡航を防ぎようがありません。
だまされないためには、本人の心構えが大切です。インターネットで知り合ってリアルでは知らない「知人」は、悩みごと等を相談するくらい親しく思える場合でも、その人の実体は分かりません。常に、「ネットの向こうは知らない人」という気持ちを持っていましょう。
冒頭の子どもたちは、何度もテレビで報道されるので、ごっこ遊びができるほど事件について知っており、「海外でのもうけ話」は「危険」であることも理解しているようでした。
万が一、「闇バイトにかかわってしまった!」と思ったら、一人で抱え込まず家族や警察に話しましょう。渡航してしまったら、日本大使館・総領事館に相談しましょう。
出典
警察庁 「海外で儲かる仕事」は危険です!
外務省 海外安全ホームページ 特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために)
外務省 海外安全ホームページ 特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために(その2))
外務省 海外安全ホームページ 【広域情報】特殊詐欺事件に関する注意喚起(加害者にならないために(その3))
外務省 海外安全ホームページ ミャンマー・タイ国境付近の詐欺拠点に関する注意喚起(ミャンマー)
外務省 パスポート(旅券) パスポート(旅券)発給申請の関連書類(未成年の旅券申請(届出)同意書)
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者