前年度の世帯年収は「800万円」でしたが、今年度は「900万円」に到達しました。100万円程度であれば「保育料」はさほど変わりませんよね?
配信日: 2025.04.15

この記事では、渋谷区・世田谷区の具体的なケースを参考に、年収の増加が保育料に与える影響について解説します。

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保育料の決まり方
保育料は、世帯の市区町村民税の所得割額に基づいて決定されます。所得が増えれば住民税も増加し、結果として保育料も高くなる仕組みです。渋谷区と世田谷区では、認可保育園の保育料の基準を次のように定めています。
・市区町村民税の所得割額を基準に保育料を決定
・4月(前期)と9月(後期)に基準を更新(4月は前年度の住民税、9月は当該年度の住民税を基準に算定)
・3~5歳児クラスは無料
所得が増えると住民税の所得割額も増えるので、それに応じて保育料が増額される仕組みとなっています。なお、年度の初日(4月1日時点)で3歳以上の子どもは、所得に関係なく保育料は無料です。
市区町村民税の所得割額の確認方法
市区町村民税の所得割額は、以下の方法で確認できます。
会社員等の場合:勤務先から配布される税額通知書
自営業等の場合:役所から送付される納税通知書
ただし、実際に基準となる金額は、各種控除が適用される前の金額となります。そこで、以下の税額控除が適用されている場合は控除額を合算してください。
・住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)
・寄付金税額控除(ふるさと納税など)
・配当控除
・外国税額控除
・配当割額・株式等譲渡所得割額控除
具体的な保育料シミュレーション
年収が800万円から900万円に増えると、住民税の所得割額が増えるため、保育料も上がる可能性があります。給与所得者の場合の、所得額割の算出方法は以下のとおりです。
課税所得=給与収入-各種控除
所得額割=課税所得×所得税率(10%)
年収別の各種控除額の例は、表1のとおりです。
表1
年収800万円(月給66万円) | 年収900万円(月給75万円) | |
---|---|---|
基礎控除 | 48万円 | 48万円 |
給与所得控除 | 190万円 | 195万円(上限) |
健康保険料(年額) | 約38万9000円 | 約44万9000円 |
厚生年金保険料(年額) | 約71万3000円 | 約71万3000円 |
雇用保険料 | 4万8000円 | 5万4000円 |
合計 | 約353万円 | 約364万6000円 |
※筆者作成
※賞与は考慮しない
※健康保険料は介護保険第2号被保険者に該当しない場合として算出
表1より、年収別の所得割額の目安はそれぞれ以下になります。
年収800万円の所得額割:(800万円-約353万円)×10%=約44万7000円
年収900万円の所得額割:(900万円-約364万6000円)×10%=約53万5400円
賞与を含んだ年収の場合には健康保険料・厚生年金保険料を決める報酬月額が変わります。さらに、40歳以上では介護保険料も発生するため、実際の金額は税額通知書で確認してください。
渋谷区の例
渋谷区では、所得割額ごとの保育料を次のように定めています。
所得額割44万7000円:4万8900円
所得額割53万5400円:5万7500円
月額では8600円、年間10万3200円の増額です。
世田谷区の例
世田谷区では、所得割額ごとの保育料を次のように定めています。
所得額割44万7000円:保育標準時間 6万4000円/保育短時間 6万3000円
所得額割53万5400円:保育標準時間 6万7300円/保育短時間 6万6200円
保育標準時間で利用した場合、月額では3300円、年間3万9600円の増額です。このように、年収だけでなく住んでいる自治体によっても保育料は変わります。
保育無償化制度の対象かどうか確認を
保育料は年収によって決まりますが、以下の条件を満たしていれば年収に関係なく無償化の対象です。
・3~5歳児クラス
・3歳未満クラスの第2子以降(東京都の場合)
3~5歳児クラス(4月1日時点で3歳以上)なら、全世帯が無償化の対象です。さらに東京都では、第2子は3歳未満クラスでも保育料が無償です。
また、第3子以降は無償とするなど、多子世帯の経済負担を軽減する支援制度がある他府県もあるようなのでお住まいの自治体はどうなのか確認してみることをおすすめします。
そのため、年収アップによる保育料負担の影響は、第1子が3歳児クラスになるまでの一時的なものといえるでしょう。
住宅ローンやふるさと納税などは保育料の増減に関係しない
所得税と住民税は、住宅ローンやふるさと納税などの税額控除により税金は安くなります。しかし、保育料の算定には関与しません。
保育料の算定と同様の制度は他にもあります。例えば、「高等学校等就学支援金」もその一つで、所得要件に所得割額を用いています。
年収増加と保育料のバランスを考えよう
世帯年収が800万円から900万円に増えると、住民税の増加にともなって保育料も上がる可能性があります。ただし、自治体によっては第2子・3子以降の無償化などの保育料軽減措置があるため、実際の影響は家庭ごとに異なるでしょう。
年収が増えれば家計にとってはプラスになりますが、社会保険料や保育料の負担も同時に増えるため、手取り額を考慮したうえで、保育料の影響を判断してください。
出典
渋谷区 保育料
世田谷区 保育料及び給食費について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー