更新日: 2019.06.19 その他

日本と海外の引越しでは何か違いはあるのだろうか

日本と海外の引越しでは何か違いはあるのだろうか
3月は新年度に向けて、人の移動が多くなるシーズンです。海外からの移動も例外ではありません。
 
社会人や会社員で海外から日本へ帰任されるかた、海外でのロングステイを終えて帰国されるかた、海外の中でも今までの住居を引き払い、別の住居への移動をされるかたも多いかもしれません。
 
日本と勝手の違う海外で、借りていた所を引き払う、つまり退去する時には、日本と何が違うのでしょうか。不動産事情は国によって様々なので、いざ引っ越しとなったときに慌てないようにしたいものです。
 
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

シンガポールでの退去に必要なもの

<エアコンのメンテナンス証明書>

シンガポールは一年中気温が30度前後で、エアコンのない生活は考えられません。そのため、一年中、昼夜問わず稼働させるので、エアコンのメンテナンスは不可欠です。マンション(現地ではコンドミニアムと呼ぶ)を借りる際に、その責任を家主か借主のどちらが負うかが契約で決められますが、多くは借主の責任になるようです。
 
従って、借主は退去の際には、エアコンの定期的な(3か月ごとなど)メンテナンスをした証明書が必要です。マンション滞在期間中のすべての記録が要求されます。
 
このメンテナンス作業は、自分で清掃すればよいのではなく、専門業者へ依頼します。具体的には、外側のカバーを外して洗浄し、内部の埃などを掃除機で吸い取る作業が通常メンテ、これに加えて年に一度は薬剤を用いて内部を洗浄することをも含まれます。
 
3LDKのマンションでは、エアコンはおよそ5台あります。A業者では、通常メンテは5台の場合、一台25S$(シンガポール・ドル)×5台=125S$(約1万円)、薬剤洗浄は一台80S$×5台=400S$(約3万円)ですので、3か月ごとの通常メンテと1年に一度の薬剤洗浄の合計は900S$(約7万円)かかりことになります。
 
3年間暮らせば、トータルで21万円の出費になりますが、これを怠ると、退去時にエアコン部品交換代や不具合の修理代など、いくら請求されるかわからないため、保険の意味でもメンテナンスは必須なのです。
 

<マンションの退去の際の清掃業者の領収書>

引き渡しの前に清掃をしますが、こちらも自分でやるだけでは領収書がなく証明しにくくいため、業者に依頼して領収書を提示します。
 
家主にもよりますが、エージェント(代理人)をたててくる場合は、その代理人と共にマンションの設備は壊れてないか、きちんと清掃は行き届いているか、次の入居者がすぐ入れる状態かを確認します。清掃不十分となれば、再度やり直しを業者へ依頼します。
 
清掃料金は3LDKでおよそ600S$(約5万円)程度です。
 

<カーテンのクリーニング領収書>

シンガポールのマンションは一年中夏にもかかわらず、窓の面積が広くカーテンは必需品です。各部屋にレースと布の二種類のカーテンがあり、部屋数が多い、広いなどであれば、クリーニング代だけでもかなりのコストがかかります。
 
3LDKで各10枚程度あり、およそ600S$(約5万円)かかります。
 

シンガポールも原状復帰が原則

シンガポールでの三種の神器は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機です。この三種は家主がそろえるので、買い替えの必要性があるかどうかは家主判断となります。
 
エアコンは経年劣化も考えられますが、借主がメンテナンスを行う義務を負い、壊れれば責任を問われる立場にあることが多いようです。
 
その他、電気系統や排水管のトラブルも、入居中は入居者(借主)の責任で、修理費用は家主にもよりますが、交渉の末に出してくれない、或いは交渉が面倒なので自腹、ということもあります。
玄関ドアのデジタルロックなど、電池の液漏れが原因で壊れたものも、新しいものを取り付ける費用は退去時に請求されます。
 
退去に際しては、手続きや書類が必要となるものもあるので、前もっていくつかの業者から見積もりを取り、信頼のできる業者を選ぶこと、そして少しでも安く抑えたいなら、引っ越しが決まったら直ちに、なるべく多くの業者から見積もりをとり、業者の評判や対応をさぐることです。
 
清掃業者も質の悪い業者に頼んでしまうと、清掃中にガラスを割られた、など余計な面倒を起こされることもあるので、業者選びも重要です。
 
入居時に1か月分の敷金(デポジット)を置いていますので、通常はそこからの精算になります。退去時に精算金を合意して帰国した後でも、その後不具合が見つかれば、先方から連絡が入り、再度合意するまで更なる交渉をする必要もあります。
 

その他の海外事例

<英国・ロンドン>

シンガポールを植民地化していたため、シンガポールの手本となっている部分もあるかもしれません。シンガポールと大きく異なるのは、賃貸住宅でも家具・食器・ベッドリネンなどをつけて貸す所が多いことです。
 
そのため、退去時はインベントリー・チェックという確認作業があり、食器なども一つ一つ確認され、ないものは弁償金を請求されます。退去時の掃除、カーテンやベッドリネンのクリーニングもシンガポールと同様に業者に依頼します。
 

<アメリカ・ニューヨーク(マンハッタン)>

フロントがついているタイプのマンションは、居住中の不具合はフロントへ連絡をすれば、サービス・マンが点検や修理に来て、費用は家賃と共に請求される方式です。退去時は、サービス・マンが点検に来ますが、何か壊していたり、なくなったりしていなければ特段問題ありません。掃除は退去後に指定の業者を入れるようです。
 
掃除費用は契約にもよりますが、敷金(デポジット)から引かれることが多いでしょう。
 

<サービス・アパート(マンション)>

週に一回掃除やタオル・シーツ交換をしてくれるマンションをサービス・アパートと言います。賃貸料はホテルに宿泊するよりは安いですが、通常の賃貸マンションよりは高いです。
 
居住中の不具合は、連絡をすれば修理してくれ、追加費用はかからない場合が多いでしょう。家具はついている場合が多いですが、退去時に壊れていないかなどを確認し、大きな問題がなければ費用はかかりません。
 
異国で住んでいたところを退去する場合、その国を離れることが多いでしょう。
 
再度確認に行くことが難しいため、先に帰国した人などに話を聞くなどして事前に知識を得ておくと安心です。
 
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
 

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