更新日: 2019.06.28 その他

持家なのに会社から転勤してくれないか・・・・どうしよう

執筆者 : 浦上登

持家なのに会社から転勤してくれないか・・・・どうしよう
数ヶ月もすれば、勤め先が新しい年度を迎えるという方も多いのではないでしょうか。人によっては、今年度の目標達成に必死で取り組まれているかもしれません。会社が新年度へ切り替わるときは、配置換え、転勤のシーズンでもあります。
 
「数年前に、やっと念願のマイホームを買ったばかりなのに、会社から転勤を命じられたらどうしようか」と心配している方はいませんか?
 
あなたのお子さんがまだ小さく、一家そろって転勤ができるなら、転勤は経済的にはまたとないチャンスになるのです。そのしくみについて説明してみましょう。
 
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
 
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
 
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
 
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

一家全員そろって転勤したら?

転勤はサラリーマンにとっては一大事です。新居を買った直後であればなおさらです。ご主人はともかく、奥さん、お子さんが未知の新しい環境になじむには時間が必要です。しかし、転勤は経済的には大きなチャンスになりえます。
 
転勤を命じるのであれば、会社は転勤先に新しい住宅を用意する必要があります。先ほど述べたように、一家そろって転勤することが可能ならば、今住んでいる新居を賃貸に出すことを考えるべきです。
 
賃貸に出せば、家賃収入が入るので、新居のローンの返済の手助けにすることができます。給与以外の収入が増えるということになるので、そこでたまった原資を利用して、将来住宅ローンの早期返済をすることも可能です。
 
すなわち、一番目のメリットは、あなたの家の「キャッシュフローの改善」です。もうひとつのメリットは何でしょうか?家賃収入を持ったことで、あなたは、給与所得以外に不動産所得を持つことになり、不動産賃貸関連の費用を、必要経費として計上することができるようになります。
 
そして、給与所得と不動産所得を「損益通算」できるようになります。損益通算とは端的にいえば、「それぞれの所得の利益や損失を合わせてひとつにして税務的に把握すること」です。
 
給与所得は黒字ですが、不動産所得は赤字になる可能性が高いので、「損益通算をすると給与所得で支払った税金が還付される」ことになります。この2つが、持ち家を賃貸に出すメリットです。
 

持ち家を賃貸に出すとキャッシュフローはどうなる?

持ち家を賃貸に出した場合のモデルケースを想定して、そのキャッシュフローと損益計算を見てみましょう。
 
【モデルケース】
東京近郊/木造2階一戸建て/新築3LDK/80平方メートル
購入価格:5500万円 
※上記購入価格のうち、住宅ローン5000万円/30年/金利(固定)1.3%
賃貸価格:13万円/月
※建物価格2420万円。新築3年目で賃貸に出すと仮定
 
【不動産所得収支内訳】
【収入】
家賃収入          156万円
 
【経費】
建物の減価償却費      -110万円
住宅ローン返済額(利息)     -60万5731円
固定資産税等           - 7万円
火災保険・地震保険料        -6万円
管理業者への支払い          -7万8000円
雑費                 -1万円
経費計               -192万3731円
損益               -36万3731円
 
まず、キャッシュフローを考えると、家賃収入に対して、新たに発生する費用は管理業者への支払いだけです。転勤先での家賃は、比較的安めに抑えられているはずですし、転勤手当と、ある程度相殺することも可能です。
 
すなわち、キャッシュフロー的には、プラスになると考えられるので、そのプラス分を住宅ローンの返済やほかの必要資金に回すことができるようになります。
 
損益はマイナスですが、これは減価償却費と住宅ローンの利息が経費として計上されているからです。減価償却費は、賃貸に出すことによる建物の消耗に相当する費用で、建物の耐用年数によって決まります。実際の出費はありませんが、経費としては認められます。
 
この場合は、2420万円(建物の価格)÷22年(木造家屋の耐用年数)=110万円/年(減価償却費)として、計算しました。
 
損益のマイナス36.3万円が、給与所得の利益=課税所得と相殺されるので、マイナス相当の所得税・住民税が還付されます。給与の課税所得が350万円程度の人なら所得税・住民税合わせて36.3万円の30%、すなわち、10.9万円が還付されます。
 
うまくいけば、このキャッシュフローと税の還付が賃貸期間中続くことになります。ただし、借り手無しの期間や利息額の減少、家賃価格の下落などのリスクも考慮しなければなりません。
 

実際にどうやって家を貸すか?

不動産業者に頼めば賃貸物件として借り主を探してくれます。転勤先の家が狭くて、家具がすべて入らないのであれば、家具付の条件で貸すことも可能です。
 
転勤後に賃貸した自宅のトラブル……例えば、「給湯器が壊れた」などは、管理業者が面倒を見てくれます。実際に給湯器が壊れれば、交換しなければなりませんが、経費のうちの修繕費として計上可能で、その分損益通算により相当分の税額還付を受けることができます。
 

まとめ 

もし、家を賃貸に出す場合、賃貸に出すシステムはでき上がっているので、難しいことはあまりありません。契約期間、立ち退きの通知などについてはトラブルになることもあるので、定期借家契約で、あらかじめ期間を決めておいた方が良いかもしれません。
 
一度、賃貸ビジネスを経験すれば、将来投資用不動産を購入して副収入にしようとする際の助けにもなると思います。
 
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー