更新日: 2019.06.28 その他
奨学金制度を利用する前に知っておきたい5つのポイント
執筆者:加藤桂子(かとう けいこ)
CFP(ファイナンシャル・プランナー)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
㈱ファイナンシャル ファシリテーターズ 代表取締役
東京外国語大学を卒業後、大手企業を対象とした語学講師を務める。退職後にFP資格を取得し、外資系金融機関に勤務。FPとして独立後は、「大切な人がより豊かになるために、選び抜かれた情報と優れたアイデアを」をモットーに会社を設立。個人・法人のご相談にのる傍ら、セミナー講師や執筆活動を行っています。
http://www.fpkato.jp/
目次
(1)入学金は奨学金以外で早めに準備
奨学金は進学前に振り込まれることはありません。進学前に必要なお金(入学金や初年度授業料)は自分で早めに用意する必要があります。日本政策金融公庫の国の教育ローンや民間の教育ローンなどは事前審査に時間がかかりますので早めに申し込んでおきましょう。
(2)奨学金は借りるのも返すのも学生本人の責任である
延滞(返さないでいること)になる理由の一つに、「親が返してくれるものだと思って自分は何もしなかった」ということがあります。たとえ親が返してくれる約束で借りた奨学金であったとしても、延滞になった場合には契約本人に返還義務があることを知っておきましょう。
また、お金を借りるということは大きな責任を負うことでもあります。学びや生活のために今後いくら必要になるのか、自分の人生設計とマネープランについて考えてみましょう。
(3)借りすぎないこと
借りたお金は返す必要があります。多く借りれば借りるほど卒業後の返還が大変になってしまいます。
借りている間はもらったお金と錯覚してしまい、多く借りることで自由になるお金が増えるような気分になってしまいがちですが、例えば大学4年間で第二種の奨学金を毎月7万円借りると総額336万円になります。これを卒業後19年で返していくと毎月15,063円の返還額になります(※1)。
現在の大卒の初任給は男女平均20万6700円(※2)ですので、その中から生活に必要なお金のほかに1万5千円の返還をしていくのは簡単なことではありません。第二種奨学金は借りている途中で必要に応じて月額の変更(増額・減額)ができますので、多く借りすぎている場合は減額の手続きをしましょう。
※1奨学金貸与・返還シミュレーションにて試算
※2厚生労働省平成30年賃金構造基本統計調査結果(初任給)
(4)人的保証か機関保証か選択
人的保証(連帯保証人や保証人を身内に引き受けてもらう)か機関保証(毎月保証料を支払うことで連帯保証を受ける)かを選択します。
人的保証は、保証料が要らないかわりに万一返還できなくなった場合には連帯保証人や保証人が代わりに返済することになります。機関保証は保証料というコストがかかりますが本人が返還できなくなっても身内に返還を求められることはありません。
※2020年に人的保証は廃止されて機関保証に一本化されることが予定されています。
(5)返還が困難な場合の救済策を知っておく
病気や失業、災害などで毎月の返還が困難になったり滞ってしまった場合、そのままにしておくと延滞利息が5%かかるだけでなくブラックリストに載ったり財産を差し押さえられたりする可能性がありますので、早めに日本学生支援機構に連絡して、次の二つのうちから猶予制度を選択します。
【減額返還制度】毎月の返還額を2分の1または3分の1に減額してもらう制度
適用できる期間は最長15年です。これを利用するとその分返還期間が延長されます。
【返還期限猶予制度】返還を一定期間待ってもらう制度
適用できる期間は通算10年です。この適用を受けた期間分返還期間が延長されます。
※本人の死亡や障害により返還ができなくなった場合には【返還免除】制度があります。
奨学金は将来の進学の夢をかなえるための一つの手段です。制度を受ける前に内容をしっかり理解して、これを機会に家族でも進学や生活のためのお金について話し合ってみてはいかがでしょうか。
執筆者:加藤桂子(かとう けいこ)
CFP(ファイナンシャル・プランナー)