更新日: 2019.01.08 その他
「安全・安心を謳った農産物は高くて当たり前・・」とは限りません!!
農林水産省の統計「国内における有機農産物の格付数量の推移」で、平成13年と平成27年の生産量の比較をすると、米は14%増の8831トン、野菜は2倍以上の42386トン、果実は65%増の2298トンになっています。増えているのは確かなようです。
ここでは、安心・安全な農産物について考えてみます。
Text:毛利菁子(もうり せいこ)
農業・食育ライター
宮城県の穀倉地帯で生まれ育った。
北海道から九州までの米作・畑作・野菜・果樹農家を訪問して、営農情報誌などに多数執筆。市場や小売り、研究の現場にも足を運び、農業の今を取材。主婦として生協に関わり、生協ごとの農産物の基準や産地にも詳しい。大人の食育、大学生の食育に関する執筆も多数。
有機JASの農産物よりも求めやすい特別栽培を買うのも手
地球温暖化による気温の上昇や豪雨、長雨などの影響をもろに受ける農業にとって、農薬や化学肥料は大きな味方といえます。減らすのは、なかなかに難しいというのが、農家の偽らざる思いでしょう。
それでも、多くの産地では消費者の安全・安心の要望に配慮して、極力、化学肥料や農薬を減らそうと努力しています。近年、産地は消費者の動向に驚くほど敏感です。産地間競争に打ち勝つためには味や見栄えだけでなく、安全・安心は欠かせない「武器」といえるからでしょう。
しかし、栽培に非常に手間のかかる有機JASの農産物の価格は高くなりがちです。農林水産省の平成28年生鮮野菜価格動向調査報告の「全国の主要都市の並列販売店舗における生鮮野菜の品目別価格及び価格比」を見ると、野菜の品目別の価格では1.5倍から2倍程度しています。ちょっと、庶民のおサイフには厳しい・・・
でも、主婦として長年、店頭価格を見て来て感じるのは、農薬と化学肥料をその地域の通常使用量の半分以下にした特別栽培の農産物なら、(当然ですが)有機JASほどの価格差は見られないということです。いきなり有機JASではなく、特別栽培の野菜を買うのも手です。
安全・安心の賢い買い物方法を紹介
私が長年続けている「安全・安心プラスお手頃価格」の買い物術を紹介しましょう。
<米>
都道府県ごとに農薬使用回数の基準が決められています。同一県内で複数の地域ごとに決められている場合もあります。
実は栽培地域によって、農薬の延べ使用成分回数は大きく異なっています。例えば、冷涼な気候の米産地は、農薬の使用成分回数が少ない傾向にあります。ですから、その地域で通常の農薬と化学肥料を使用した慣行栽培米であっても、他地域の特別栽培米よりも農薬の成分回数が少ない場合もあるのです。
2017年現在、農薬の成分回数が最も少ないのは、長野県と群馬県の12です。「農薬の散布回数が気になる」方は、そんな地域産の米を選んで買うのも手かと思います。
<野菜>
生協を活用します。自分で農薬や化学肥料の成分回数をチェックするのは、はっきり言って無理です。生協は栽培履歴をチェックして、各生協独自の基準をクリアしたものだけを扱っています。ご自身の安全・安心の要求(「除草剤は禁止」、「生態系リスクの高い農薬を削減」、「独自に残留農薬検査を行っている」など)に最も近い生協を選ぶことが大切です。
ついでに言えば、農薬や化学肥料の使用基準の厳しい生協と取引のある産地やJAも狙い目です。多くの生協では職員が定期的に監査に入ったり、組合員が産地に行って圃場を見る/安全性に対する要望を産地に直接伝えたりする機会を持っています。ですから、産地やJAもその要望に応えようと力を入れるものです。
そんな産地やJAを知りたければ、生協のHPにアクセスして情報を集めてみてはいかがでしょうか。
<農産物全般>
農産物は生産者団体によって、安全性の取り組みに自ずと差が出てしまうようです。ですから、店頭で有機JAS栽培に力を入れている団体の名前が入ったものを見かけた時には、迷わず買っています。
そのような団体に属する農家は、たとえ有機JAS農産物を栽培していなくても、「農薬や化学肥料に頼らない農業をめざしたい」という意欲が高いと感じてきたからです。また、このような団体の生産者は、ある田畑では有機JAS農産物を、別の田畑では特別栽培をしているということも少なくありません。このような場合、有機JAS栽培で農薬や肥料を削減する技術を身につけているために、特別栽培であっても農薬と化学肥料を5割どころかそれ以上削減できているということも珍しくないようです。
ファーマーズマーケットや自然食品の店をのぞいたりして、有機JAS農産物を生産している生産者団体名を覚えておくとよいでしょう。