救急車1回の出動に、どれだけのお金がかかっているの? また、どのような場合に呼べばよいのでしょうか?
配信日: 2024.10.01
また現在問題となっている救急車の適正利用に関する情報や救急車を呼ぶべき症状など、緊急時の判断基準を提供します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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救急車の出動コスト
東京都がまとめた「機能するバランスシート」内にある救急事業コストの集計結果によると、救急1回出動あたりのコストは4万5000円と計算されています。救急車の出動は無料で提供されていますが、それを補っているのは税金です。
救急車は「人件費」「資機材使用料」「燃料費」などが必要であり、救急車に乗車する救急隊は原則3名で運行します。出動するたびに3人分の人件費が発生するため、24時間で8時間勤務だと3交代で1台あたり9人の人件費が最低でも必要になります。
また、東京消防庁管内には令和6年4月1日現在274台の救急車がありますが、救急車1台あたりの金額は高規格救急車の場合1台3000万円前後と非常に高額です。単純計算でも82億2000万円が必要となります。
このように、救急車を24時間フル稼働で維持・運用するためには多額のコストがかかることが分かります。
過去最多の出動件数
総務省が発表した「令和5年中の救急出動件数等(速報値)」によると、1年間の救急出動件数は763万7967件、搬送人員は663万9959人でした。救急出動は前年と比べて40万8395件増加、搬送人員は前年比42万2676人増加し、集計開始以来最多です。
令和4年中の救急自動車による現場到着所要時間は、全国平均で約10.3分であり、前年の約9.4分よりも0.9分(54秒)遅れています。同様に医師への引き継ぎまで含めた病院収容所要時間は、全国の平均時間が約47.2分です。前年の約42.8分よりも4.4分遅くなっています。
出動可能な救急車と救急隊員の数には限りがあり、要請されても出払っていれば到着するのに時間がかかってしまうため、数分の遅れが命にかかわる重篤な方への影響が懸念されています。
救急車を呼ぶ場合の基準
総務省がまとめた「令和5年版 救急・救助の現況」によると、傷病程度別の搬送人員は「軽症(外来診療)」と診断された方が294万106人でした。前年と比べて47万9646人(19.5%)増加しており、軽症にもかかわらず救急車を呼ぶ数が増加している傾向があることが分かります。
ただし、意識や呼吸がない、多量の出血、交通事故によるけが、痙攣(けいれん)がとまらないなど、重症な場合はすぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
一方、救急車を呼ぶべきか迷った場合には、全国版救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」や救急安心センター事業「#7119」の利用がおすすめです。
救急安心センター事業は、救急車を呼んだほうがよいかなど、判断に迷ったときに利用できる電話相談窓口であり、令和6(2024)年9月現在、全国33地域、人口カバー率69.9%で対応しています。
全国版救急受診アプリ「Q助(きゅーすけ)」では、症状を画面上で選択すると緊急度の目安や対応を教えてくれます。緊急度が高い判定を受けたら、アプリから119番に電話することも可能です。
軽症なのに救急車を呼ぶとどうなる?
紹介状を持たずに200床以上の大きな病院を受診した場合、「選定療養費」として一定の負担を患者に求めることが義務化されていますが、救急車で搬送された患者は緊急性が高いとして徴収の対象外とされていました。
しかし、近年は軽症患者の増加に伴い、搬送後に入院などが不要の軽症患者だった場合、選定療養費(7700円など)が徴収される動きが広まっており、令和6(2024)年6月から三重県松阪市、12月からは茨城県など、地方自治体主体での徴収も始まっているようです。
救急車自体は無料で利用できますが、適切に利用しないと追加で特別な料金の徴収対象となってしまうため、注意が必要です。
救急車は税金で賄われているため適切に利用しよう
救急車は1回の出動に4万5000円ほどが必要となり、それらはすべて税金で賄われています。軽症で救急車を呼んだ場合、大きな病院で治療を受けたときに選定療養費を徴収される可能性があるため、救急車は適切に使い、本当に必要な人が活用できるよう心がけましょう。
出典
東京都 機能するバランスシート - 救急事業とバランスシートの役割 -
総務省「令和5年版 救急・救助の現況 」の公表
総務省「令和5年中の救急出動件数等(速報値)」の公表
厚生労働省 紹介状なしの大病院受診時に係る選定療養について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー