更新日: 2024.09.22 その他
熱中症で救急車を呼んだら、予想よりも高額の料金を請求されました。「選定療養費」とは一体何ですか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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救急医療の制度
令和6年7月に全国で熱中症により救急搬送された人数は4万3195人と報告がある通り、多くの患者が救急車で救急病院へ搬送されています。
日本の救急医療体制において救急医療病院は「一次救急医療機関」「二次救急医療機関」「三次救急医療機関」の3つに分類されており、救急隊員の判断で適切な医療機関へと受け入れを要請する仕組みがとられています。
一次救急医療機関とは、初期救急とも呼ばれている夜間や休日など休診時に診療が可能な「休日夜間急患センター」や地域の在宅当番医制に参加する診療所です。主に患者自身が独歩で来院する軽度の救急患者の外来診察を行います。
二次救急医療機関とは、地域で発生する救急患者への初期診療と応急処置を行い、必要に応じて入院治療を行う医療機関です。主に入院治療が必要な重症の救急患者が利用します。
三次救急医療機関とは、緊急性・専門性の高い重症・重篤な救急患者が搬送される救命緊急医療機関です。地域の救急医療機関では対応が難しい重篤患者を最終的に受け入れています。
選定療養費とは
2016年4月の健康保険法改正により徴収が始まった医療保険制度で「選定療養費」という名称がつけられた「特別の料金」です。大病院への患者集中による患者の待ち時間や勤務医の外来負担の課題解決の一案として始まりました。
対象となる病院は「特定機能病院」「一般病床200床以上の地域医療支援病院」「一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関」です。特定機能病院とは、大学病院などが当てはまります。
対象となるのは他の医療機関から紹介状なしで受診する初診の患者、または病院から他の医療機関への紹介状を交付されたにもかかわらず、再診する患者です。料金は初診の医科の場合、7000円以上と決められており、7700円や1万1000円など病院で異なります。
選定療養費のポイントと注意点
厚生労働省の通達によると、緊急に受診する場合には「特別な料金」を求めてはならないとしています。厚生労働省で公表されている選定療養費の支払い対象外とされる方は次の通りです。
・救急の患者
・国の公費負担医療制度の受給対象者
・地方単独の公費負担医療の受給者(事業の趣旨が特定の障害、特定の疾病等に着目しているものに限る)
・無料低額診療事業実施医療機関における当該制度の対象者
・エイズ拠点病院におけるHIV感染者
ただし医療機関によっては「緊急性の高い患者」と認定しない場合があり、その際は選定療養費を求められます。「緊急」に該当するかどうかの判断は定まっておらず、医療機関に委ねられています。
例えば「日本赤十字社医療センター」では、入院が必要な重篤な患者のために24時間体制で救急医療体制を維持していることから、緊急性の低い軽症の方から選定療養費を徴収することが認められています。
また、夜間や休日に治療を受けた場合には「時間外選定療養費」として「選定療養費」よりも多くの金額が徴収されるため注意が必要です。
選定療養費を取られないようにする方法
救急車での搬送は選定療養費の対象とならないのが一般的ですが、緊急ではない症状や救急車利用自体が適正ではなかったと判断された場合は請求されてしまいます。
熱中症の場合、症状によって救急車を呼ぶかどうか判断することも大切です。熱中症を疑う症状がある場合は、呼びかけに答えなければすぐに救急車を呼びましょう。
熱中症で救急車を呼ぶか迷った場合には救急安心センター事業「#7119」の活用がおすすめです。相談員が電話口で状況を聞き取り、緊急性が高いと判断された場合は、迅速な救急出動につないでくれます。
重篤な場合にはためらわずに救急車を呼ぼう
選定療養費は入院が不要な軽症の場合に徴収されてしまう料金ですが、個人で重篤かどうかを判断するのは難しいため、意識がなく命の危険を感じた場合には後に選定療養費が請求されたとしても、ためらわずに救急車を要請しましょう。
出典
厚生労働省 救命救急センター及び 二次救急医療機関の現状
総務省 令和6年7月の熱中症による救急搬送状況
厚生労働省 医療機関の機能・役割に応じた適切な受診を行うようお願いします
厚生労働省 紹介状なしの大病院受診時に係る選定療養について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー