更新日: 2019.01.10 その他
【娘の叫び】「そろそろ車の運転を止めたら?」と言っても、聞いてもらえない。
高齢者の交通死亡事故は増加傾向にあります
警察庁によれば、2017年の80歳以上の運転免許所有者は221万人で、10年前の2倍以上になりました。それに伴い、全体の交通事故死亡者数は、この10年で4割ほど減っているものの、高齢者の占める割合は54.7%(過去2番目の高さ)と高い水準で推移しています。
こういうデータがあっても、高齢者の方たちはなかなか車を手放すことができません。もう何十年も続けてきた日常生活と決別することは難しいことですし、能力の低下を認めたくないという人もいるでしょう。
私のように山間部に暮らしていたら、買い物や通院するにも、車がなければ不便です。私の父親も80歳を過ぎ、「いつまで運転続けるのかな?」と兄弟で話すことが多くなりました。
友人から教えてもらった最良の方法とは?
先日、友人からとても面白いアイデアをいただきました。
「父親が80歳になる時、サプライズバーティをやって車を手放してもらおうと思っている」と言うのです。
友人のシナリオはこうです。
父親が家に帰ってきた時を狙って、家族全員で出迎え、「これまで運転して私たちを色々な所に連れて行ってくれてありがとう。どうかこれからは私たちに恩返しをさせてください」と感謝の気持ちを述べた後、あるプレゼントを贈呈します。父親が中を開けてみると、そこには26万円分のタクシーチケットが入っていました。
そして、友人は父親に、車の年間維持費を試算したものを表にして見せます。自動車税3万4000円、重量税1万6000円、自賠責保険1万2000円、自動車任意保険8万円、点検費用1万円、車検費用4万円、燃料代6万円、洗車やタイヤなどのその他整備費1万円、計26万2000円。「車を所有するだけでこれだけのお金がかかるのだから、その分、タクシーを使ってほしい。
おやじに何かあったら困るから」と伝えるそうです。
都市部に住めば、さらに駐車場代がかかりますし、豪雪地帯ならスノータイヤの料金も維持費に加算されます。年齢が高くなれば高くなるほど、任意保険の額も上がります。友人の父親は、車でスーパーや病院、友人宅に行くくらいでしたので、月に2万円もタクシーに乗れれば十分だということです。
確かに、これなら手放してくれるかもしれません。私も父親の次の誕生日に試してみようかと思います。
高齢者が車を手放すことは、予想外の効果が期待されます。タクシー代を節約するため、市民バスなどの公共交通機関を使うことが増え、バスの中で顔見知りの人と世間話をすることが増えるかもしれません。もしかしたら、隣人と乗り合いタクシーをするようにもなり、より社交的になるかもしれません。
そして、こういった方が増えていけば、公共交通機関が発達していくでしょうし、そうすれば、さらに車を手放そうという高齢者も増えていくことでしょう。
まとめ
車はとても便利なものですが、年間3000人以上が命を落とす最大の原因にもなっており、立派な凶器でもあります。
高齢化が進む中、車と人間がどうしたらうまく共存できるのか、社会全体で考えていく必要があると思います。
出典:
警察庁交通局「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」
Text:黒岩 揺光(くろいわようこう)
フリーライター