更新日: 2019.01.10 その他
大学生も、親も知って得する奨学金の20のポイント(4)
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
12.延滞9か月超で未返還残額等全額一括返還
返還が3ヶ月滞ると、「個人信用情報機関」に登録され(いわゆるブラックリストに載る)、クレジットカードの利用や、住宅ローンなど各種ローンが組めなくなる可能性があることを、多くの方はご存知だと思います。
では、さらに延滞を続けるとどうなるのかご存知でしょうか。延滞4か月から9ヵ月は債権回収業者が回収することになります。9ヵ月超延滞が続くと、未返還残額等全額を一括返還請求されることになります。
こうなると、自己破産のリスクが現実味を帯びてきます。返還が困難になったら、放置せず、日本学生支援機構に早めに相談しましょう。
13.保証制度は「機関保証」を選択する
保証制度には、保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会)の連帯保証を受ける「機関保証」と、条件に合う連帯保証人(父母)及び保証人(おじ。おば等)の保証を受ける「人的保証」の2つがあります。
「機関保証」の場合は、保証料の支払いが必要になります。保証料の支払いは、毎月の奨学金の振込から天引きされます。
「人的保証」を選択すれば、この保証料は節約できますが、奨学金を借りた本人が返還不能になると、奨学金の返還を連帯保証人等が肩代わりしなければなりません。
連帯保証人等に肩代わりする経済的余力がない場合は、「機関保証」を選択することをお勧めします。そうしないと、連帯保証人等も共倒れのリスクがあります。
14.保証人の責任は「半分」
先に説明したように保証制度は「機関保証」をお勧めします。平成29年4月採用者の46.7%が「機関保証」を選択しています。
保証料が高く、ばかにできないので「人的保証」を選択する方もいるでしょう。この場合、おじさんやおばさんに保証人を頼む時に保証人の責任は「半分」であることを伝えておくことが重要です。
不幸にも奨学金が返還できなくなり放置した結果、日本学生支援機構から保証人に対し、未返還残額等として全額600万円を一括返還請求されたとしましょう。この場合、保証人としては「半額」の300万円しか責任を負わなくてよいのをご存知でしょうか。
保証人には「分別の利益」があります。
つまり、連帯保証人は本人と同じく全額を返す義務を負いますが、保証人の義務は「半分」でよいのです。民法で、連帯保証人も含めて複数の保証人がいる場合、各保証人は等しい割合で義務を負うとされているからです。
15.奨学金は返還できない人が多いので、借りないほうが良いって本当?
奨学金について、怖いイメージを持っている方もいると思います。先に説明したように、返還できなくなると、いわゆるブラックリストに載って、クレジットカードの利用やローンなどが組めなくなる可能性があります。
実際、何人の方が、いわゆるブラックリストに載っているのかご存知でしょうか。日本学生支援機構の資料によると、平成28年度の返還者数は約410万人となっています。そのうち、3ヶ月以上の延滞者数は約16万人です。返還者数の約4%です。
大半の方はきちんと返還しています。奨学金を借りることに関し、あまり慎重になりすぎて、大学等進学を諦めてしまうというのは、もったいない感じがします。
大学等で学びたいことがあれば、奨学金は、未来への投資として考えて良いのではないでしょうか。奨学金が単なる消費になってしまうのか、あるいは、自分を成長させるための投資になるのか、あなた次第です。
※2018/12/21 タイトルを一部変更させていただきました
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー