更新日: 2024.07.23 その他
近所に「ドラッグストア」がどんどん増えて、自宅周辺に“5軒”もあります。牛乳が「180円」などかなり安いのですが、そんなに儲かるのでしょうか?
牛乳や野菜などの食品もスーパー並みか、それ以下の価格で販売されていることも多く、採算が取れているのか気になる人もいるでしょう。本記事では、ドラッグストアの現状と、各地で徒歩圏内に次々出店する秘密について解説します。
ドラッグストアの店舗数・売り上げは右肩上がり
日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、2000年度から毎年「日本のドラッグストア実態調査」を行っており、2024年4月に23年度調査の速報値を公表しました。
それによると全国のドラッグストア店舗数は381社、2万3041店舗でした。前年度と比べて957店舗の増加となっています。この増加店舗数を単純に47都道府県で割ると、1年間で1都道府県あたり20店舗増えている計算です。
また、全国総売上高(推定値)は9兆2022円で、前年度から5.6%増加しています。ドラッグストアでの調剤額は1兆4025億円で、前年度からの伸び率は9.5%です。調査開始以来、毎年約10%のペースで伸びており、病院最寄りの調剤薬局ではなくドラッグストアを利用する人が年々増えているようです。
ドラッグストアが近所で増えるのは「ドミナント戦略」
ドミナント戦略とは、特定の市区町村などの地域で、集中的に出店することをいいます。ドミナント戦略は、ドラッグストアに限らずコンビニエンスストアなどのチェーンストアでよく用いられる手法で、セブン‐イレブンがとっている戦略として有名です。
特定の地域に集中して出店することにより、次のような3つの効果が得られます。
●競合の出店意欲をそぐ
●地域のシェアを獲得
●経営効率のアップ
1つ目の、「競合の出店意欲をそぐ」については、最も想像しやすいでしょう。近隣に特定のドラッグストアが続々と出店してシェアを取っている場合、新たに参入しても成功する可能性が低くなるため出店を控えることが考えられます。また、2つ目の「地域のシェアを獲得」ももっともな効果です。特定の地域に急速に出店することで、勢いのあるドラッグストアだと印象付けることもできます。
一方で、近隣に複数出店すると、客が分散してかえって効率が悪いように感じる人もいるでしょう。しかし、特定の地域に出店することで、その地域の特性をつかみ、消費者のニーズに合った店舗展開ができます。また、一気に知名度を高められるうえ、各店舗に商品をまとめて配送できたり、広告費を削減できたりと、経営効率アップにつながるのです。
コスト削減により食品を安く売り出すことが可能になり、客の来店頻度が高まります。その結果、ドラッグストアの主力商品である医薬品や化粧品、調剤薬局の利用につながるのです。
まとめ
ドラッグストア業界は、出店数や調剤額が年々増加しており、業界全体では約9兆円以上の売上高となっています。駅前や住宅地での集中的な出店が目立ち、最近では医薬品や化粧品のみでなく、食料品の品ぞろえも豊富です。さらに調剤薬局を併設した店舗も増えているため、1ヶ所で買い物が済む便利な小売店となっています。
ドラッグストアが近隣に相次いで出店するのは、「ドミナント戦略」によるものです。地域を限定することで、地域のシェアを獲得し、競合の出店意欲をそぐ狙いがあります。さらに近隣に店舗があることで、店舗への配送や広告費のコスト削減ができ、効率的な経営ができるのです。
出典
日本チェーンドラッグストア 協会活動開始25周年記念セレモニー特別記者会見
執筆者:古澤綾
FP2級