更新日: 2024.07.06 その他
生活保護は「住宅ローン」返済中でも受けられますか? 求職中なのですが、貯金が尽きそうなのでしばらく受給できればと考えています…
執筆者:二角貴博()
生活保護の概要
生活保護とは、生活の困窮の程度に応じ、保護費の支給を受ける制度です。申請は国民の権利であり、ためらわずに自治体に相談すべきですが、誰でも支給を受けられるわけではありません。
条件は?
生活保護は世帯単位で行われます。世帯の全員が「資産、能力、その他あらゆるものを活用する」、つまり「売れるものは売る、働ける人は働く、他の制度の給付を受ける、親族の援助を受ける」ことが前提で、保護費を支給するかどうかを自治体が審査します。
例えば、次のような世帯が生活保護の対象になります。
●不動産、自動車、預貯金などのうち、直ちに活用できる資産がない(不動産、自動車は例外的に保有が認められる場合があります)。
●就労できない、または就労していても必要な生活費を得られない。
●年金、手当などの社会保障給付を受けていても、必要な生活費を得られない。
金額は?
保護費=最低生活費-収入
最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。最低生活費は、地域、年齢、人数、健康状態などにより厚生労働大臣が定めた基準で計算されます。収入は、子どものアルバイト、親族からの仕送りなどを含め、世帯全員のすべての収入です。
保護費の内訳には、日常生活費に充てるための生活扶助をはじめ、住宅扶助、教育扶助などさまざまな種類の扶助があります。これらは世帯の状況によって異なり、状況の変化もあるため、保護費は一律、固定ではありません。
厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」には、生活扶助として16万4860円などの例が示されています(東京都区部等、33歳・29歳・4歳の3人世帯の場合。2023年10月1日現在)。
住宅ローンの返済中でも生活保護を受けられる?
住宅ローンの返済中は生活保護の審査に通りにくいといわれていますが、前記の生活保護制度に関するQ&Aに、「住宅ローンがあるために保護を受給できないことはありません。
ただし、保護費から住宅ローンを返済することは、最低限度の生活を保障する生活保護制度の趣旨からは、原則として認められません」とあり、生活保護を受けることはできます。特に「ローンの返済を繰り延べている」「ローンの残り期間が短く、かつ返済額が少ない」などの場合、生活保護を受けられる可能性が高まるようです。
ローンの残債額や残りの返済期間に関して全国共通の数値基準といったものはなく、住んでいる自治体に相談することになります。
生活保護受給の有無にかかわらず、住宅ローンの繰り延べは、目先の出費を減らす方法の1つです。貸し手が応じれば、返済期間を延ばす代わりに毎月の返済額を減らしたり、元金支払いを一定期間停止して金利支払いのみにしたりすることができます。
ローンなしの持ち家、自動車は?
居住用不動産は、原則、保有したまま生活保護を受けられます。ただし、処分価値が大きいと判断された場合、保有が認められないこともあります。保有する自動車は原則として売却することになります。ただし、「障害があり、通勤や通院に自動車が必要」などの場合、保有が認められることもあります。
生活保護の前に検討すべき制度は?
生活保護を申請する前に、次のような制度の給付や貸し付けを受けられるかどうか確認しましょう。カッコ内の最寄りの窓口に相談してみましょう。
●雇用保険:離職後、基本手当を受け取っていますか?(ハローワーク)
●生活福祉資金貸付制度:総合支援資金などを貸してもらえるかもしれません(社会福祉協議会)
●生活困窮者自立支援制度:生活全般の困りごと相談窓口(自立相談支援機関)
生活保護を受けるか受けないかにかかわらず、固定費を減らすことが肝要です。
●住宅ローン:繰り延べについて貸し手に問い合わせましょう。
●生命保険:「払い済み」または解約について売り手に問い合わせましょう。
●各種の定期購入、サブスクリプション:ひとまず解約しましょう。
まとめ
生活保護の申請は、個別事情を勘案して審査されます。まずは自治体(市役所、区役所、町役場など)に電話し、持参が必要なものを確認した上で、時間に余裕をもって相談窓口を訪ねましょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 生活保護制度の概要
厚生労働省 生活保護制度に関するQ&A
執筆者:福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)