更新日: 2019.01.08 その他

<身近な電気の話> 日本は発電所のデパート!

<身近な電気の話> 日本は発電所のデパート!
最近は原子力発電、太陽光発電、風力発電発などが話題ですが、実は日本は「発電所のデパート」で、実に多種多様な発電所が稼働しています。種類の多さでは日本は世界一だろうと思います。なぜでしょうか。
水資源が豊富な日本は水力開発を中心に電気事業は発展してきました。戦後復興が進み、生活が豊かになり経済の高度成長、産業の重工業化に対応し1970年代には大型の石油火力発電の開発が進みました。二度にわたる石油ショックを経験して80年代に入ると電力の安定供給を維持するため輸入石炭火力、天然ガス火力、原子力発電など石油に代替する電源の開発に取り組み多様化路線を歩んできました。21世紀に入ると再生可能エネルギー開発の時代を迎えています。地球温暖化に地球規模で対応しようと太陽光、風力、地熱などのプロジェクトがいまや花盛りです。


日本が海に囲まれた海運国であること、四季があり電力消費が季節により大きく変化すること、国産資源に乏しいことなどもあり、あらゆる発電の可能性を追求してきた結果です。また技術力もありました。
一貫して「需要優先」の電力エネルギー政策を貫いてきたことも大きいですね。そのために電力会社に供給義務を課し安全保障と安定供給を求めてきました。電気事業が市場競争の時代に入り、安全保障と安定供給が揺らぎ始めています。発電所のサバイバル競争が始まりました。
(参照:電気事業連合会ホームページ)
藤森禮一郎

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

水力発電

川の水の流れを利用する発電方式です。水を高いところから低いところへ落とす際に得られる高さのエネルギーによりタービン(水車発電機)を回して発電します。多様な方式があり、特性に応じた役割を担いつつ電力供給の約1割を賄っています。クリーンな電気で再生可能な発電方式ですが、天候の影響を受けやすい難点があります。

<自流式発電>
流れ込み式発電とも呼びます。川の水をそのまま発電所に引き込み発電します。
豊水期、渇水期など天候により出力が変動しますが、コストが比較的安いので途上国では現在も主流の発電方式です。

<調整池式発電>
調整池に貯水して水量を調整し発電する方式です。調整池に1週間分ほど貯めて発電量を調整します。短期間の天候の変化や電力需要の変化に対応できるので効率的に発電できます。

<貯水池式発電>
山奥の峡谷にダムを作り河川を完全にせき止め貯水して発電する方式です。発電した後の水は再び河川に戻します。雪解けや梅雨、台風など豊水期の水をダムに貯め、渇水期に放水して発電します。四季があり水量に変化のある日本で年間を通じて安定して発電が可能になりました。

<揚水式発電>
発電所の上部と下部に調整池(ダム)をつくり、昼間、電力需要が大きくなる時間帯に、上部ダムから下部ダムに水を落として発電する方式です。発電した後の水は下部ダムに貯めておき、需要の少ない夜間に上部ダムにポンプアップして上部ダムに貯水しておきます。これを繰り返しピーク用電源として活用しています。日本では昼の電力需要が夜間の2倍に達することもあるので昼間の需要を賄うためこのような発電方式が採用されています。電気は貯められない商品です。

火力発電

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火力発電の基本的な仕組みは、ボイラーで燃料を燃やして蒸気を作り蒸気タービン発電機を回して発電します。仕事を終えた蒸気は復水器で冷却され水に戻され再びボイラーに注入されますが、その際大量の冷却水が必要になります。
燃料の量により発電量が容易に調節可能なため、季節や時間帯により変化する電力需要量に即応した発電が可能です。火力発電には燃料の種類により様々なタイプがあります。原子力発電が運転を停止している現在、日本は消費電力量の9割以上を火力発電に頼っています。火力発電はCO2排出量の削減が大きな課題です――

<汽力発電>
ボイラーで発生した蒸気により蒸気タービン発電機を回し発電する方式です。現在は主流の発電方式です。

<内燃発電>
ディーゼル機関など内燃機関で発電する方式です。多くは離島などの発電所で利用されています。

<ガスタービン発電>
石油や天然ガスで高温・高圧の燃焼ガスを作り、燃焼ガスによりガスタービンを回し発電する方式です。ジェットエンジンと同じ仕組みを使った発電方式です。

<コンバインドサイクル発電>
蒸気タービンとガスタービンを組み合わせて運転し、熱エネルギーを効率よく電気エネルギーに転換する効率的な発電方式です。運転・停止の操作が短時間で容易にでき急激な需要の変化に対応した運転が可能です。発電効率が良いので環境面からも注目されています。汽力発電にとって代わりつつあります。

<エネルギー資源による分類>
火力発電は燃料として石油、石炭、天然ガス(LNG)、バイオマスなどが使われています。燃料資源には限りがあり地域的に偏りがあるため、エネルギー資源に乏しい日本では様々な燃料を組み合わせることで、エネルギーの安定確保に努めています。石油は価格が高く国際情勢に影響を強く受けます。石炭は石油に比べて埋蔵量が豊富で価格は安いですが環境面に課題があります。

原子力発電

およそ50年前から世界中で採用されている発電方式です。発電段階でCO2を排出しせずに、安定した電力を大量に供給できること、使い終わった燃料を化学的に処理すると燃料を再利用できることからエネルギー資源の少ない日本では重要な電源とされています。半面、放射線の危険があるので厳重な安全管理が必要です。

<発電の基本原理>
原子力発電は、火力発電のボイラーを原子炉に置き換えたものです。原子力発電は原子炉でウランを核分裂させて熱エネルギーを得て蒸気を作り、蒸気タービンを回転させて電気を作ります。

<原子力発電の種類>
世界にはいろいろな種類の原子炉があります。日本で主に使用されているのは{軽水炉}と呼ばれているタイプです。その他にも「重水炉」「黒鉛炉」「炭酸ガス炉」「高速増殖炉」「高温ガス炉」などがあります。軽水炉にも「沸騰水型軽水炉(BWR)」と「加圧水型軽水炉(PWR)」の2種類があり、日本には両方ともあります。

再生可能エネルギー発電

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低炭素化社会に向かうエネルギーとして注目されています。風力、太陽光、地熱、バイオマスなど自然環境から得られる再生可能なエネルギーを利用して発電するもので、太陽光発電・風力発電・地熱発電・バイオマス発電、小水力等の種類があります。CO2の排出量が少なく地球環境問題への対応に優れているなどの利点がありますが、太陽光発電、風力発電などは投資額も大きく天候条件に左右され出力が不安定という難点があります。設置できる場所も限られていて、全てを再生可能エネルギーに依存するわけにはいきません。

<太陽光発電>
太陽光などの光を特別に加工された半導体に当てて発電を行うのが「太陽電池」で太陽電池を用いた発電方式を太陽光発電といいます。タービンや発電機を使わずに発電する点が水力、火力、原子力などと異なる直接発電方式です。需要地近くに容易に設置できるのが利点ですが、天候により出力が変動しますし夜間は発電できない不便があります。運転時にCO2を排出しないのが利点です。

<風力発電>
風車に風を送ると風車が回転し、風車に連結された発電機で発電するのが風力発電です。太陽光同様、風力発電も運転時にCO2を排出しません。発電は気象条件に大きく左右されます。一年を通じて一定の風を生む地域が立地条件としては恵まれていますが、日本には四季があり台風も多発するので適地が少ないのです。一年を通じて柔らかな風が吹いている欧州で盛んな発電方式です。

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