世帯として独立して考えるのではなく、親世帯・子世帯が一緒に「お金のこと」を考えることで、意外と簡単に問題が解決することもあります。
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。
近居なら、住宅資金の援助のお願いをしやすい
「理想の家族の住まい方」について内閣府が行った意識調査(2014年)によると回答は、祖父母と近居31.8% 祖父母と同居20.6% だそうです。
親の近くに住むことを希望している人が約半数で、近居(普段から行き来できる、お互いの生活圏内に住むこと)を望む人が増えていることが分かります。
昔から「スープの冷めない距離が良い」と言われていました。同居はお互いに気を使うので、程よい距離感が心地よいということのようです。
実際に近居をしている人に、そのメリットを尋ねたところ、親世帯は、「子や孫と会う機会が増えること」に加えて、「将来、老後のサポートをしてもらいやすいことへの安心感」という精神面を挙げる人が多いです。
一方、子世帯側としては、経済的メリットの意見もあります。「共働きをしているので、子供の面倒を見て貰えて助かる」の他、「住宅購入時に援助してもらいやすい」といったものもあります。“近居のための資金なら、親にお願いしやすい”ということのようです。
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路線価を確認し税額を算出
シニア層の持つ資産を若年層に贈与しやすいように、「住宅資金贈与」や「教育資金贈与」の制度が生まれました。残念ながら、一般的にはそれほど使われていないように思います。お金のことは、親子でも言い出せないのが実際ではないでしょうか。
親頼みを勧めている訳ではありませんが、先述のように近居がきっかけで、住宅資金の援助をしてもらえたことは良い流れだと思います。親子間で資産の移動がされるのは、多くは相続の時です。
寿命が長くなった今、相続により資産を手にした時、既に子は70歳代になっていることも多々あります。親子間で早い段階に資産を贈与し、有効活用することを考える方が良いのではないでしょうか。
Nさん(48歳)は3年前に会社を辞め、起業しました。子どもが2人いますが、まだ小学校の低学年です。子どもの教育費など将来に不安がありましたが、教育資金の一括贈与を受けることになりました。これにより、子育てに関する心配はかなり解消されたそうです。
「この安心感を考えると、教育資金の一括贈与の制度を利用する人がもっと増えても良いのに」と実感したそうです。Nさんは一人っ子なので、話がスムーズに進んだ点はあります。
こうした制度を利用することも視野に入れると、お金の不安から解放されることもあると思います。参考までに、「教育資金の一括贈与」の概要は下記の通りです(図表)。
親に援助してもらうだけでなく、逆の場合もあります。先日会ったAさんは、母親のスマホ料金と生命保険料を払っているとのことでした。このように親子間で相互扶助の関係を持っていると、日頃から「お金の話」もしやすくなります。
内閣府のHPによると、2025年の認知症の患者数は約700万人と推測されます。これは高齢者の5人に1人という計算になります。認知症になって起こるトラブルの中には「お金のこと」も多くあります。
近居が出来る人は限られていますが、家族の関係を近くしておくことで、避けられることも多いはずです。なかなか難しいことですが、理想の形は「お金のこと」を一緒に考えられる関係ではないでしょうか。
Text:宮﨑 真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士