更新日: 2019.01.07 その他
これからの住宅のスタンダードになる 【ZEH】とは何か そのメリットとは
特に9月、台風21号による関西地方の大規模停電、北海道胆振東部地震による道内全域での大規模停電、台風24号による中部地方を中心とした大規模停電が立て続けに発生したことは、記憶に新しいのではないでしょうか。
停電が発生した地域では、数時間から数日間、電気が使えない状態が続き、多くの住民の生活に支障を及ぼしました。
Text:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上顧客の相続対策や不動産活用を担当。
現在はFP、不動産コンサルタントとして相談、実行支援、講師、執筆等を行っている。平成30年度日本FP協会広報センタースタッフ、メダリストクラブFP技能士受験講座講師、NPO法人ら・し・さ理事、埼玉県定期借地借家権推進機構理事
国が普及を推進する「ZEH」とは
災害が相次ぐ中で、太陽光発電と蓄電池を設置していた住宅は、台風による停電中も電気が使えたそうです。日中は太陽光発電により非常用コンセントを使用し、夜間は蓄電池により最低限の生活を維持できたということが話題になりました。
このように、太陽光発電が停電のときに力を発揮するということは以前から言われています。そして今、わが国では、この太陽光発電設備を備えた「ZEH」の普及が図られています。
ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略語で、具体的には、断熱性の大幅な向上、高効率設備の導入による大幅な省エネルギーの実現、再生可能エネルギー(太陽光発電等)の導入により、年間の一次エネルギー消費量の収支が正味ゼロまたはマイナスになる住宅を言います。
国がZEHの普及を推進する背景には、深刻な地球温暖化の進行があります。さらに、東日本大震災のときに電力需給がひっ迫したことや、国際情勢の緊張によるエネルギー価格の不安定化もあり、家庭部門における省エネルギーの重要性や住宅のエネルギー自給の必要性が強く認識されています。
そこで、ZEHを推進することにより、これらの問題の解決を図ろうとしているのです。国は、2020年までに新築注文戸建住宅の過半数をZEH化するという目標も立てています。※1
ZEHに住むことのメリット
一方、住宅を所有する人にとってZEHのメリットは、なんといっても光熱費が大幅に節約できることです。
条件にもよりますが、毎月の光熱費がほぼゼロになり、余剰電力の売電量が大きければ収支がプラスになる場合もあります。当然環境にも優しい住宅であり、さらに前掲のように災害時の効果も期待できます。
もう1つ、ZEHの魅力として「我慢しない省エネ」があります。
よく省エネというと、マメに電気を消したり電気をなるべく使わなかったりすることで、少しでも電気代を安くすることが思い浮かびますよね。ZEHは、高い断熱性能や高性能の省エネ機器などにより、普通に生活しながら省エネが達成できるため、ストレスの少ないライフスタイルを実現できるのです。
ZEHにするために使える補助金
反面、コスト面ではまだ高く、ZEH仕様にするためには一般的に200万円以上かかるとされています。これに対して、国もZEH支援事業として補助金の支給を行っています。
2018年度は、1棟あたり70万円の補助金、新たにZEH+(プラス)支援事業も開始され、より高性能なZEHに対しては115万円の補助金が受けられるようになりました。また、中小工務店が建築する住宅については補助金額が140万円になります。※2
差額から補助金を差し引いた実質負担額は100数十万円になり、これなら検討する余地は十分にあると思われます。
なお、この補助金を受け取るためには、環境創生イニシアチブ(以下SII)のZEHビルダー/プランナー登録制度により、「ZEHビルダー/プランナー」として登録した会社で設計、建築をする必要があります。2018年10月19日時点で、大手ハウスメーカーを始め全国で6956社が登録しており、SIIのホームページから検索することができます。※3
同ホームページでは、併せて各社のZEH化達成率も閲覧することができます。それによると、ハウスメーカー大手8社の中でも採用率は最高76%から最低10%までかなりの差が生じています。住宅選びの際には、価格だけでなく、建築会社のZEHへの取組姿勢も評価の対象にして良いのではないでしょうか。
災害に備えるなら蓄電池も検討したほうがよい
最後に、災害のときの対策について補足しておきます。実は、停電時の安心という意味では、太陽光発電設備だけでは不十分です。確かに太陽光発電設備では日中の晴天時には発電しますが、夜間や悪天候時には発電しません。
そこで重要なのが、蓄電池の設置です。これにより、発電した電気を蓄え、夜間などでも継続して電気を使用することができます。もちろん現在の技術では、長時間全ての電源を賄うことができるわけではありません。それでも最低限、冷蔵庫の使用や携帯電話の充電に利用できるだけでもかなり助かります。
蓄電池は必ずしもZEHの条件ではありませんが、ZEH支援制度では、蓄電池も補助の対象になっています。省エネ対策としてZEHを採用する際には、同時に災害対策として補助金を利用した蓄電池の設置も検討することをおすすめします。(※)
近い将来、ZEHは住宅のスタンダードになることが予測されます。今から新しい情報を入手し、良い住まいづくりを進めましょう。
(※)補助金の詳細についてはSIIのホームページまたは経済産業省、環境省のZEH支援制度をご覧ください。
出典:※1経済産業省「ZEHロードマップとりまとめ」2015年12月
※2経済産業省「戸建住宅における ZEH 支援事業の主なポイント」2018年3月
環境省HP「平成30年度のZEH(ゼッチ)関連事業(補助金)について」
※3環境創生イニシアチブHP「平成30年度ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」
Text:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント