更新日: 2019.01.10 その他
新社会人の奨学金返還は今月からスタート。返還が遅延したときのペナルティと、返還が厳しくなった場合の救済措置とは
奨学金の返還は口座振替(引落し)により行います。第1回目は10月27日です。返還の準備はできていますか。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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返還額を確認しましょう
奨学金の貸与終了時などに「貸与奨学金返還確認票」が交付されています。すぐ、内容を確認しましょう。
この確認票には、貸与を受けた奨学金の種類、借用金額(元金)の合計、あなたが選択した割賦方式(月賦返還又は月賦・半年併用返還)による返還期日、返還回数、割賦金(返還額)、総支払額などの返還の条件(目安)、記載の学校で貸与を受けた奨学金の明細、奨学生本人・連帯保証人・保証人(人的保証の場合)の氏名・住所などが記載されています。
間違いや変更がないか確認しましょう。転勤などで住所や電話番号等に変更があった場合は、速やかに日本学生支援機構に届出をしましょう。届出をしないと、機構からの重要な通知が届かなくなり、延滞金が賦課される原因になる等、大変不利益になる場合があります。
返還額が確認できたら、機構に届け出た返還用の口座(リレー口座)に返還用の資金が準備できているか確認しましょう。
返還を放置すると重いペナルティが課される
社会人1年目は給料も多くなく、税金や社会保険料などが控除されると、手取り額はさらに少なくなります。交際費やスーツ、鞄代等、社会人1年目はなにかと出費が多く、貯金もできていない方もいるかもしれません。
機構によると、残高不足等によりうっかり延滞した方など「1日以上の延滞者」は、平成28年度末33万5千人います(返還者数の8.2%)。
延滞すると年5%の延滞金が課されます。さらに、新規返還者の場合、返還開始から6ヵ月経過後に延滞3か月以上になった場合には個人信用情報登録機関(いわゆるブラックリスト)に登録され、クレジットカードやローンの利用ができなくなる場合があります。
4ヵ月目から9ヵ月は債権回収業者に債権の回数が委託されます。9ヵ月超延滞すると、未返還残額等一括請求されることになります。これに応じないでいると、裁判所から「支払督促申立書」が送られてきます。放置しておくと最終的に給料等が差し押さえられる場合があります。そうならないように「異議申立書」を裁判所に提出しましょう。
機構によると、平成28年度末、3ヶ月以上の延滞者は16万1千人(返還者数の3.9%)います。機構が裁判所に対して支払督促申立をした件数は9,106件(同0.22%)、裁判所からの支払督促に対し、返還者が異議申立を行い通常の訴訟へ移行した件数は5,845件(同0.14%)になっています。訴訟に移行した場合、ほとんどのケースでは分割返還による和解で解決されています。
返還が厳しくなったら
延滞する前に機構に相談することが大切です。災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合、「減額返還」や「返還期限猶予」などの救済措置が設けられています。
「減額返還」は、一定期間(最長15年)、当初割賦金を2分の1または3分の1に減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長する制度です。返還予定総額が減額されるものではありませんので留意してください。延滞している場合は利用できません。
「返還期限猶予」は、一定期間(最長10年)、返還を停止し先送りにする制度です。返還すべき元金や利息が免除されるものではありませんので留意しましょう。「減額返還」と異なり、延滞している場合でも利用できる場合があります。
機構によると、平成28年度、「減額返還」の承認件数は2万1,013件、「返還期限猶予」の承認件数は15万4,249件となっています。なお、猶予期間中や減額返還期間中は利息も延滞金も発生しません。両方利用できる場合は、借入残額が減る減額返還を優先しましょう。
返還を確実に行うために
「減額返還」も「返還期限猶予」も利用できるかどうかは機構の判断によります。承認されない場合もあります。
これらの制度を当てにせずに、返還を確実に行うことを考えましょう。そのためには、返還計画をしっかり立てる必要があります。家計管理を身に付けることが大切です。収入の範囲内で支出をやり繰りするのが基本です。奨学金の返還額を除いた範囲内で生活費等をやり繰りしましょう。ボーナスの一部は奨学金の返還に充てましょう(繰上返還)。
特に、女性の場合は、結婚や出産を機に退職することが多いと思いますので、「繰上げ返還」をして返還総額を早く減らすと良いでしょう。ただし、奨学金の金利はとても低いので、他にリボ払いなど高金利の借金をしている場合は、こちらを優先して返済しましょう。なお、社会人1年目は一般的に給料もボーナスも多くないでしょうからクレジットカードの利用(特にリボ払い)は慎重に考えましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。