更新日: 2019.09.18 その他
【疑問】頭金と年収、どれだけあれば東京で一戸建てが買える?
良い土地に巡り合えれば注文住宅も夢ではない!
執筆者:福本眞也(ふくもと しんや)
FPコンシェル代表取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP® 認定者、証券外務員
できる限り解り易い言葉で、お一人お一人のご理解にあわせてご説明することをモットーにしています。
日系証券会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)で約8年間金融の基礎を学び、外資系投資銀行(TDグループ、NAB、クレディ・スイス、JPモルガン証券)では約15年間に渡り高度な金融技術を学び、独立して約9年、金融一筋に32年が経ちました。
「お金・経済・金融マーケットに関わること」について、特に個人顧客向けには住宅・保険・教育・老後の資金(運用)を目的としたご相談を得意としています。
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目次
まずは延床面積の平均を見てみよう!
総務省統計局では5年に1度の国勢調査で集めたデータから、各都道府県における延床面積の平均値を算出しています。平成25年住宅・土地統計調査の集計結果によると、東京都における持家住宅総数296万2100戸の平均延床面積は90.68平方メートルとなっています。
参考:
政府統計の総合窓口(e-Stat)は、政府統計のポータルサイトで、上記データを確認することができます。
住宅・土地統計調査 / 平成25年住宅・土地統計調査 / 確報集計 都道府県編(都道府県・市区町村) 13東京都
統計表名 「 住宅の種類(2区分),住宅の所有の関係(6区分),建て方(4区分)・建築の時期(14区分)別住宅数,世帯数,世帯人員,1住宅当たり居住室数,1住宅当たり居住室の畳数,1住宅当たり延べ面積,1人当たり居住室の畳数及び1室当たり人員―都道府県,21大都市」
土地の種類(用途地域)により建てられる延床面積がかわる!
土地には都市計画法による区分が13種類あります。
大まかにいうと、建物の高さ、土地に対して建てられる範囲(面積:建ぺい率)と、建てられる建物の大きさ(容積:容積率)に基準を設けて規制されています。
一般的に高額な土地は、建ぺい率が低く、同様に容積率も低くなります。それだけ、お隣との境目が大きくなり、プライバシーが保たれます。その分、広い家を建てたい場合には、広い土地が必要となります。
反対に、建ぺい率が高く、容積率も高ければ、狭い土地でも広い家が建てられますが、その分、お隣との境目が余りなく、窓を開けるとお隣の壁や窓が間近に! ということになる可能性が高くなります。
参考:用途地域に関する詳細 東京都都市整備局HP
住宅地として一般的な第一種住居地域(住居の環境を守るための地域で、3000平方メートルまでの店舗・事務所・ホテルなどは建てられる)で、建ぺい率60%、容積率200%という土地を例にとってみましょう。
そこでまず、平均延床面積を確保するために必要な土地の広さを逆算してみます。平均延床面積90.68 ÷ 容積率200% ÷ 建ぺい率60% ≒ 75.566平方メートル。
つまり、土地が75.566平方メートルで建ぺい率が60%以上、容積率が200%以上であれば、平均的な広さの家が建てられるということになります。
計算を簡単にするため、この土地の広さを75.6平方メートルに切り上げて次に進みます。
東京都の土地単価を調べてみよう!
東京都下で土地単価が最も安い場所を例にしてもいいのですが、ここではあえて23区で探してみます。東京都理財局のホームページから、区市町村別用途別平均価格表をみると、足立区の平成29年住宅地公示地価平均が1平方メートル=27万1600円とあります。
先ほど算出した土地の面積75.6平方メートルで計算すると、土地価格が2053万2960円となります。計算を簡単にするため、土地価格を2055万円とします。
参考:東京都理財局HP:4区市町村別用途別平均価格表
次に建築費用!
最近注目されているローコスト住宅。間取りにある程度の制限がありますが、坪単価30万円程度(家本体のみ)という価格もよく目にします。
しかし、実際にかかる費用としては家本体だけではなく土地を平らにならしたり、壁やガス、水道、電気などの付帯工事も必要です。
また、坪単価はあくまで実際にかかった建築総費用を延床面積で割った結果であり、現実的な数字として有効性が低いため、ここでは、住宅金融支援機構集計の2016年度統計から、平均的な建設費を採用したいと思います。
土地付注文住宅より東京都の平均的な建設費2389万円(平均延床面積100平方メートル)を例にとり、東京都の持家住宅総数の平均延床面積90.68平方メートルで算出すると、建築費用は約2166万円となります。
上述の土地代2055万円に建築費2166万円を加えると、住宅価格は4221万円となります。
参考:住宅金融支援機構 2016年度集計表
住宅購入時の諸費用!
土地の仲介手数料3% + 6万円および、登記や住宅ローンの諸費用が住宅価格合計の約3%必要ですので、おおまかですが、土地費用分2055万円 × 3% + 6万円 = 67.65万円、住宅費用分4221万円 × 3% = 126.63万円で合計194.28万円、約200万円が別途必要です。
フラット35では頭金が10%以上あると、有利な条件が引き出せる!
ここでは、将来の支払総額を確定できる固定金利の代表的な住宅ローンとして【フラット35】S 金利Aプランをベースにして計算します。
参考:住宅金融支援機構フラット35【フラット35】Sの対象となる住宅
購入時の年齢や住宅ローンの完済時期などは一切考慮せず試算することを、あらかじめご了承下さい。
頭金が10%以上あれば35年返済(団信込み)で金利は2018年8月分では当初10年間は1.09%で11年目以降1.34%です。住宅購入時の諸費用約200万円は住宅ローン借入額に含まず、別途支払えることを前提にします。
住宅価格合計4221万円のうち頭金を431万円入れたとすると、住宅ローン借入額は3790万円。この場合の月返済額は当初10年間が10.9万円でその後11年目以降は11.2万円となります。年間返済負担額を返済額が高い方の11年目以降の月返済額11.2万円で換算すると、年返済額は134.4万円となります。
住宅ローン返済額を一般的に理想的とされる年収比率の25%にした場合は
134.4万円 ÷ 25% = 537.6万円
平均的な年収比率30%では
134.4万円 ÷ 30% = 448万円となります。
つまり、この試算では住宅ローンを払い続けるために、年収が448万円から537.6万円ほどあるのが理想といえます。
まとめ!
ここまでの計算から、頭金が約430万円、諸費用として約200万円を支払え、35年間の住宅ローン返済が可能なのであれば、年収は450万円前後、理想的には540万円前後あれば東京都23区で一戸建て注文住宅(約4220万円)を持つことも夢ではないことがわかりました。
ただし、住宅ローン返済の年収比率が適正かは、個人の生活感により違うはずですし、年収比率割合で検証することが常に正しい方法とは限りません。これらの支払額が自分にとって不安なく将来も払い続けられるか、じっくりと考えることが大変重要です。あくまで考え方の一例として捉えて下さい。
出典:
政府統計の総合窓口(e-Stat)
住宅・土地統計調査 / 平成25年住宅・土地統計調査 / 確報集計 都道府県編(都道府県・市区町村) 13東京都
統計表名 / 住宅の種類(2区分),住宅の所有の関係(6区分),建て方(4区分)・建築の時期(14区分)別住宅数,世帯数,世帯人員,1住宅当たり居住室数,1住宅当たり居住室の畳数,1住宅当たり延べ面積,1人当たり居住室の畳数及び1室当たり人員―都道府県,21大都市
東京都都市整備局
用途地域による建築物の用途制限の概要
東京都理財局 平成29年地価公示価格(東京都分)
区市町村別用途別平均価格表
住宅金融支援機構 2016年度集計表
住宅金融支援機構フラット35【フラット35】Sの対象となる住宅
Text:福本 眞也(ふくもと しんや)
FPコンシェル代表取締役