銚子電鉄の経営には「副業」が欠かせない!?「ぬれ煎餅」「まずい棒」どんなことで費用をまかなっているの?
配信日: 2023.09.12

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銚子電鉄とは?
1923年に開業した銚子電鉄は、昭和30年代には年間250万人以上の乗客を運んでいましたが、平成になると乗客は100万人を切り、廃線の危機に直面します。さらに、2006年に当時の社長による横領や行政による補助金の打ち切り、さらに国土交通省からの施設・設備の修理改善命令が出たことで、経営はいよいよ危なくなります。
そこで、銚子電鉄が力を入れたのがもともと製造・販売を行っていた「ぬれ煎餅」の販売でしたが、すぐには売れるものではありませんでした。しかし、資金がショートする数日前にインターネットで「ぬれ煎餅」の購入を呼びかけると、多くの人が注目をしてなんとか当面の費用をまかなうことができたのです。
銚子電鉄の損益計算書は?
銚子電鉄の現在の経営状況は本当にまずいのでしょうか。2021年4月~2022年3月までの損益計算書をみると、21万3086円の当期純利益が出ています。決して大きな額とはいえませんが、黒字に転じています。
しかし、売上高の項目をみると定期外運賃、定期収入、運輸雑収の合計が7763万6488円なのに対し、副業営業収益が4億5066万341円でした。また、鉄道部門の損失が1億6027万5995円だったのに対し、副業部門の収益は9605万9399円となっています。
辛うじて銚子電鉄が黒字になったのは、利息や配当金などの営業外収益や補助金収入があったからですが、鉄道存続のために副業が欠かせないこともうかがえます。
銚子電鉄の副業
銚子電鉄を支える副業ですが、どのようなものを販売しているのでしょうか。いくつか紹介します。
ぬれ煎餅
銚子電鉄の売上の7割を占めるというぬれ煎餅は、もともと銚子市で販売されている特産品で、1960年代から地域で販売されてきました。銚子電鉄でぬれ煎餅の販売を始めたのは1995年のことで、経営難を打開するための増収策と位置づけられていました。2006年に上述の奇跡が起こり、現在も駅やオンラインで販売されている人気商品です。
まずい棒
2018年から販売されている「まずい棒」は、棒状のスナック菓子「うまい棒」とよく似た商品です。ただし、「うまい棒」が12円で販売されているのに対し、「まずい棒」は10本入りで378円となっています。
銚子電鉄ではぬれ煎餅に次ぐ人気商品ですが、原材料価格の高騰の影響で2022年に価格が上がり、2022年12月には「きまずい棒」が発売されました。
ちなみに「まずい」というのは経営状況がまずいという意味で、味は「うまい棒」に似た味です。
着銚電音
2019年より発売している「着銚電音」は、銚子電鉄の電車や踏切の音を着信音として商品化したものです。販売されているのは、電車の走行音やドアの開閉音、コンプレッサーの音、警笛、駅の発車ベル、踏切の音などで、着信音のために収録されました。音楽配信サービスの「mysound」や「着メロ取り放題for au」「着メロ取り放題 for App Pass」で購入できます。
銚電柱
千葉県の電柱に銚子電鉄を応援する広告を出すことで、ファンが銚子電鉄を応援できるというサービスで、2021年4月から募集を開始しています。広告を取り付けできるのは千葉県全域で、月額広告料の10%が、銚子電鉄の収入となる仕組みです。
広告のデザインは4種類あり、広告の下部にスポンサー名が表示されます。広告制作費は「救済」にちなんで9310円(税込み10241円)です。
副業の背景には地域のために存続したいという思い
銚子電鉄では副業で経営を維持しているほか、映画制作やミュージックビデオの撮影地となるなど、他にも画期的な取り組みで存続しています。困ったときこそ周囲に助けを求め、工夫を重ねながら営業を続けている様子が分かってきました。背景にあるのは地域の足として存続したいという使命とのことで、このような姿勢も支持につながっているのかもしれません。
出典
銚子電気鉄道株式会社
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー