更新日: 2019.08.07 その他
<身近な電気の話>日本は電力消費大国。これからは「努力型省エネ」から「商品選択省エネ」へ
各種エネルギーの中でも電気エネルギーは便利で、頼りになるエネルギーなので、つい無駄な使い方をしてしまいがちです。今回は、省エネの立場から、電気について考えてみましょう。
フリージャーナリスト
中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。
目次
電力消費は増え続けている
経済成長と産業の高度化、情報化の進展やエアコンの普及など人々の快適な生活を求めるニーズの高まりで、日本の電力消費量は増え続けています。80年代以降、とりわけ家庭用電力の伸びには目覚ましいものがあります。世界で温暖化対策を考える際の基準となっている90年と比較してみるとおよそ30%も増えています。
東日本大震災後、国民の省エネルギー意識は高まったと言われますが、増加傾向は緩やかになっただけで減少はしていません。
生活電化は着実に進んでいる
人々の生活パターンが変化し技術が進歩しAI家電が登場してきたこともあり、いまは家電ブームだそうです。家電量販店が続々と誕生し、最近は”家電芸人”と言われるタレントも出現しています。気が付けばわが家も、家の中のコンセントはいたるところでコードが絡み合いタコ足状態になっています。
ダイニング・キッチンには冷蔵庫、IHクッキングヒーター、炊飯器、トースター、電子レンジ、湯沸かし器、コーヒーメーカーにジューサーなど家電製品がそろっています。リビングやベッドルームも同様です。コードレス掃除機からテレビやビデオ機器、オーディオ機器、パソコンにプリンターなどIT化された製品があふれています。電気温水器や太陽光発電、電気と熱を併給するコージェネ設備を利用している家庭も増えています。私たちの生活電化は着実に進んでいます。
電力消費量は家庭の所得とは関係ない
技術革新により家電製品の省エネ化には目覚ましいものがありますから一つ一つの機器の消費電力は小さくなっていますが、塵も積もれば山となる。
家庭の消費量は知らず知らに増えていますし、それが二酸化炭素(CO2)排出量の増加にもつながっています。最近の電力消費量調査によれば、消費量は家庭の所得とは関係なく、低所得そうでも多消費型の家庭が増えているそうです。電気は便利ですが使いすぎには気を付けましょう。
日本の電力消費を諸外国と比べて見ると
どのくらい電気を使っているのでしょうか、外国と比べながら調べてみましょう。
電気事業連合会のデータによると2013年の世界の消費電力量は21・5兆㌔ワット時で、これを「国別消費量」と「一人当たりの消費量」で比べてみましょう。
<国別消費量>
①中国(24%)
②アメリカ(19%)
③日本(5%)
④インド(5%)
<一人当たりの消費量>
①カナダ(15,520㌔ワット時/年)
②アメリカ(12,987㌔ワット時/年)
③韓国
④日本(7836㌔ワット時/年)
⑤フランス
⑥ドイツ
この数字からわかるように、日本は間違いなく電力消費大国ですね。一人当たり消費量でカナダが突出して世界一なのは意外な感じがしますが、湖や河川が豊富にあり水力発電が盛んですから電気料金が安いのですね。うらやましい限りです。
一方、お隣の中国は13~14億人と人口が多いので国全体の消費量は世界一でも、一人当たりの消費量(375㌔ワット時/年)は世界の平均値にとどまっています。しかし経済の成長が著しいので、慢性的な電力不足状態が続いています。
韓国が3位に入っているのは、戸建て住宅から集合住宅(マンション、アパート)へ移り住む人が増え、国民の半分以上が高層住宅に住んでいて、暖房の電化が進んでいるからだと思います。
電力事情は国の経済や資源の状態によって異なる
原子力発電が運転を停止しているわが国は現在、必要な電気のほとんどを天然ガスや石炭を燃料に火力発電でまかなっています。海外からの輸入燃料に頼っています。一方、一人当たりの消費量で日本の1・7倍のアメリカはどうでしょう。
世界最大の多消費国ですが、石油も石炭も天然ガスもすべて国産で賄い、原子力も100基以上運転していますから、エネルギーの輸入依存度はゼロです。貴重な輸入資源で賄っている日本とは大違いです。違いを知れば節約や省エネの大切さが理解できます。電気を上手に使いたいですね。
家庭における使われ方
家庭における使われ方(エネルギー消費量)を見てみましょう。1970年から90年までの20年間で約2倍に増えました。その後の90年から13年までに約30%増えています。民生部門は産業部門を超える増え方です。国民が豊かさを求め、快適な生活を追求した結果ですね。12年度の家庭用の実績を用途別に見てみると以下の通りです。
①家電・照明36・2%
②台所8・2%
③給湯26・0%
④暖房26・4%
⑤冷房2・2%
家庭で使う電気の4割がエアコン・クーラーと冷蔵庫によるものです。省エネポイントはこの辺にありそうですね。照明用の電気も25%ほどありますから要注意です。
家庭での省エネ法
家庭での省エネ法は平凡なことですが、スイッチをこまめに切る、冷蔵庫の開け閉めは速やかに、使用しないときはプラグを抜くことなどです。でもいざ毎日実行するとなると大変です。そこで、使い方を変えずに省エネできる方法を考えてみました。古い家電製品の「買い替え」がお勧めです。もちろん家計にゆとりがあればですが、一度、家電量販店にでも足を運んでみてはいかがでしょうか。
エアコン・クーラー、冷蔵庫など大型家電機器や照明器具など家電製品の省エネ化の進歩には目を見張るものがあります。
例えば、テレビは08年~12年で約60%、冷蔵庫は05年~10年で43%、エアコンは05年~12年で15~16%それぞれエネルギー消費効率〈性能〉が向上しています。古くなった家電製品を最新のものに買い替えると、性能が向上した分、電気代が安くなりますから思ったより早く元が取れます。加えてCO2排出量の削減にも貢献できますから一石二鳥です。
エネルギー抑制政策の「トップランナー制度」とは
消費増大が続く民生・運輸部門のエネルギー消費を抑制するために設けられた省エネ基準に、「トップランナー制度」があります。地球温暖化防止京都会議(COP3)を受けた改正省エネ法により99年からスタートした制度です。
法律で指定された特定商品の省エネ基準を、「現在商品化されている製品の中で最もすぐれている機器の性能以上に設定する」という考え方で、メーカーに省エネ製品開発を義務付けています。目標を設定し、目標を達成しないメーカーはペナルティが課せられます。消費者の省エネが進むようメーカーに省エネ製品の開発を義務付けたのですね。消費者は省エネ製品を選択するだけです。
当初11品目でスタートし現在は31品目になっています。製品には性能や目標達成状況などがラベル表示されていますから、製品選択の目安にしてはどうでしょうか。
自動車、住宅用建材、産業用電気機器などを除く、家庭用の対象家電機器には次のようなものがあります。
①エアコンディショナー
②照明器具(蛍光灯)
③テレビ受信機
④複写機
⑤電子計算機
⑥磁気ディスク
⑦ビデオレコーダー
⑧電気冷蔵庫
⑨電気冷凍庫
⑩ストーブ
⑪ガス調理機器
⑫ガス温水機器
⑬石油温水機器
⑭電気便座
⑮ジャー―炊飯器
⑯電子レンジ
⑰DVDレコーダー
⑱電気温水器(ヒートポンプ温水器)
⑲プリンター
⑳電球型LEDランプ
以上、ご参考にしてください。例えば、小さな努力ですが、今も使っている白熱電球を電球型LED照明に切り替えれば消費量は約5分の1になり、電球の寿命は白熱電球が1000~2000時間であるのに対しLED電球は4万時間程度です。簡単な作業です。努力型省エネから商品選択省エネへ、というわけです。