更新日: 2019.03.26 その他
2018年8月からこう変わる!高額療養費の改正
健康保険など公的医療保険の制度で、1ヵ月の医療費が一定の自己負担限度額(以下、負担限度額)を超えた場合、超過分が戻ってくるしくみ。入院して医療費が高額になったときなど、負担軽減につながります。
実際の利用者も多く、厚生労働省の調査によると、高額療養費の支給額は、75歳未満が約1兆6,772億円、75歳以上では約5,429億円。国民医療費の約5%を占めています。
ここ10年で約1.56倍(75歳未満)、1.65倍(75歳以上)に増加しており、超高齢社会の進展によって、今後も増加が見込まれます(いずれも平成25年度)。
執筆者:マネラボ(まねらぼ)
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目次
2015年1月には「70歳未満」を対象に改正が!
そのため、ここ数年、高額療養費の改正が続いています。
高額療養費は、年齢や年収によって、負担限度額が決められていますが、2015年1月には、「70歳未満」を対象に改正が行われました。
改正のポイントは、所得区分が3つから5つに細分化。年収約370万円以下の負担が減る一方、年収約770万円以上の負担が増えたのです。
これまでは、年収200万円の人でも年収600万円でも同じ負担限度額が適用されていました。
年収は3倍の開きがあるのに、負担率からすると、それは不公平ですよね。そこで所得区分が細分化され、より実情に即した制度になったのです。
その一方で、年収1,160万円超の人は、1ヵ月の医療費が約25万円を超えなければ、高額療養費の還付を受けられません。
年収1,000万円超といっても、あくまで税込の金額。例えば、首都圏などにお住まいで「ご夫婦+子ども2人」世帯なら、それなりの住宅ローンや子どもの教育費などを抱えているもの。年収1,000万円あっても、それほど家計に余裕があるわけではありません。
「70歳以上」を対象に、2017年8月以降、二段階で改正が実施!
続いて行われたのが「70歳以上」を対象にした改正です。
実は、2006年以降、70歳以上の負担限度額の見直しは行われてきませんでした。
それがまず2017年8月に改正が行われ、ポイントは以下の通り。
・一般(年収約156万~約370万円)の外来(個人ごと)
・一般(年収約156万~約370万円)の一ヵ月の負担限度額(世帯ごと)
・現役並み所得者(年収約370万円~)の外来(個人ごと)
要するに、対象となるのは、一般や現役並み所得者で、住民税非課税世帯はこれまで通り。およそ約1,400万人が負担増となったと言われます。
具体的には、例えば、年収370万円未満で住民税を支払っている場合、病院窓口で支払う負担額が、これまでよりも外来の医療費(個人ごと)としては2,000円(12,000円→14,000円)、一ヵ月の外来+入院の医療費(世帯ごと)としては13,200円(44,400→57,600円)アップする可能性があるということです。
さらに2018年8月は「現役並み所得者」の改正が実施
今年8月には、収入の高い70歳以上の負担限度額がさらにアップ。
いわゆる「現役並み所得者」について、年収により以下の3区分に細分化された上、外来の優遇措置が廃止。負担限度額も70歳未満の現役世代と同じようなしくみに変更されます。
<「現役並み所得」→年収によって①~③に分類>
①年収約370~約770万円(健保(標準報酬月額)28~50万円、国保(課税所得145~380万円))
②年収約770~約1,160万円(健保(標準報酬月額)53~79万円、国保(課税所得380~690万円))
③年収約1,160万円超(健保(標準報酬月額)83万円~、国保(課税所得690万円~))
それよりも収入の低い「一般」に該当する人は、外来の医療費(個人ごと)が4,000円アップするのみ(14,000円→18,000円)。
「高額介護合算療養費」の上限も見直しに
高額療養費制度の改正に伴い、医療費だけでなく介護費も高額になった場合、負担を軽減できる「高額介護合算療養費制度」の上限も見直されます。
その内容は、現役並み所得者については70歳未満と同じ水準になるというもの。
要介護度が高ければ、介護費だけでなく医療費もかかるものです。両方を抱えている人は要注意ですね。
TEXT:マネラボ お金と投資の知っトク研究所
黒田 尚子(くろだ なおこ)
ファイナンシャル・プランナー/消費生活専門相談員資格/乳がん体験者コーディネーター。