更新日: 2019.01.10 その他

少しでも早く日常生活を取り戻すためのお話。被災者支援に終わりはない。

執筆者 : 當舎緑

少しでも早く日常生活を取り戻すためのお話。被災者支援に終わりはない。
大阪北部地震、西日本の豪雨と、日本では災害が続いています。テレビで見ていても「こんなになるとは思わなかった」という被災者の感想が印象的です。
 
私も23年前に、阪神淡路大震災で家が被災した時、一瞬呆然となったものの、毎日お腹はすきますし、片づけをしないと寝る場所も確保できません。
 
黙々と動いていたのを思い出します。止まってはいられないのです。今日は少しでも早く日常生活を取り戻すためのお話をしましょう。
 
當舎緑

Text:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

公的な支援はさまざま

内閣府から「被災者支援に関する各種制度の概要」という冊子が公開されています。温暖化の影響もあり、今後大雨や短時間に降る強い雨の頻度はさらに高まることが予想されています。被災した場合に使える制度はいくつもありますが、この冊子の中から、いくつかピックアップしてみましょう。
 
「当面の生活資金や生活再建の資金が必要な場合」や「子どもの養育、就学を支援してほしいとき」には教科書等の無償供与や小中学生の就学援助措置、高等学校授業料等減免の措置、大学等授業料等減免措置、緊急採用奨学金。
 
そのほか「普段支払っている、税金等がすぐには払えない」ときには、医療保険や介護保険料の保険料や窓口負担の減免措置、公共料金・使用料金等の特別措置や放送受信料(NHK)の免除など、支払いを減免してくれる、もしくは猶予、必要な資金を融資してくれる支援がたくさん整備されています。
 

制度を利用するためのポイントとは

他にも、住まいの建て替えや補修したい時にも融資や貸付の措置はありますが、公的な制度を利用する場合には、利用するための要件が必ずありますので、その要件を満たすことが必要です。
 
被災した時には、住いの自治体で「罹災証明書」を申請することはもちろんですが、修理する場合には、指定した業者であるとか、家が一定の被害、例えば「大規模半壊以上」など、制度に必要な条件を確認してから、それぞれの特例の申請をしましょう。
 
ネットでのデマも話題になっていますが、被災後は、自治体の窓口も混乱しますし、それぞれの災害や地域によっての特例が出てくることがあります。
 
いったん窓口で「できません」と断られても、その後、特例が適用されるケースもあります。一度の確認で納得せず、何度も確認する、違う窓口や担当者にも確認するなど、こまめなフォローをしておくことがポイントです(注)。
(注:7月14日閣議により、西日本豪雨を特定非常災害特別措置法に基づく「特定非常災害」に指定すると決定されました。今後も次々と特例の制度が出てくると思われます)
 

保険、共済加入のススメ

公的な支援はあるものの、公的な支援を受けただけでは、元どおりの生活を送ることは不可能です。さらに自分でも備える「自助努力」が必要だといえますが、実は保険や共済で、水害に対する備えをしていないという人は3割にも上るそうです。
 
内閣府が、保険、共済への加入を勧めているにもかかわらず。自宅に火災保険をつけているものの、地震や水害など、オプションとなるものに対する備えへの考え方は人それぞれですから、少しでも保険料を節約する気持ちもわかりますが、被災した時を考えると、小さい負担で大きな補償がある損害保険というものは非常にありがたいものです。
 
お住いの自治体で公開している「災害ハザードマップ」を確認しておき、水災の危険があるのであれば、家財も含めて「必ず」加入しておきましょう。
 
もし、被災すれば、独身の人でさえ、家財を新しくする場合には必要補償額が300万円程度という数字もあります。
 
過去の浸水実績、河川の近くでなくても下水が溢れる都市型の水害が予想される地域か、周辺より地盤が低い地域か、寒冷地で「融雪洪水」になる地域か、など、住いの地域で予想される災害を把握しましょう。
 
「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信は持たないようにしてください。「ひょっとして」と思うことが、災害に備える行動に結び付くのです。
 
災害の備えは、「公助、自助、共助」といいます。公的な援助ですべてを取り戻すことはできませんが、自分が備え、みんなで備えることで、「減災」につながります。
 
今回も数十年ぶりの大雨による河川の氾濫ということが言われましたが、自治体のハザードマップにはその危険が記されていました。今後も、災害ゲリラ豪雨など、急な気象の変化もあるでしょう。
 
今回の西日本豪雨災害も自分一人では立ち向かえない大災害ですが、このような制度を利用して、1日も早く日常生活が取り戻せますよう、切に願います。
 
Text:當舎 緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)

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