更新日: 2023.03.31 子育て

育休明けに年金で「損」しない方法とは?「養育特例制度」と利用できる人について解説

育休明けに年金で「損」しない方法とは?「養育特例制度」と利用できる人について解説
出産や育児休業明けに、短時間勤務で職場復帰する人は多いでしょう。ただ、フルタイムで働いた場合に比べて給与が下がり、社会保険料も安くなるため、将来受け取る年金額が減少してしまいます。しかし時短勤務でも「養育特例制度」をうまく活用することで、将来の年金に影響を与えずに働くことが可能です。
 
本記事では、育児と仕事を両立させる場合に活用したい「養育特例制度」について詳しく解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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養育特例制度とは?

養育特例制度とは、厚生年金に加入中で、子育てのために時短勤務で働く人を支援する制度です。時短勤務のために社会保険料が安くなっていても、将来受け取る年金額が減らないようになります。
 
制度の適用期間は、3歳未満の子を養育する人で養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育を始めた月の前月と比べて低下した期間になります。同期間については、将来受け取ることになる年金額の計算に際して、子の養育を始めた月の前月の標準報酬月額(従前標準報酬月額)を当該養育期間(子が3歳に達するまで月の期間)の標準報酬月額とみなされます。
 
図表1

厚生労働省 3歳未満の子を養育する期間についての年金額計算の特例
 
時短勤務で働く人が次のような状況だった場合を例に挙げて見てみましょう。

●※標準報酬月額28万円の人が育児休業を取得し、その後時短勤務で復帰
●時短勤務になったため給与が下がった
●月額変更となったため標準報酬月額が24万円に下がった

※標準報酬月額とは社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料)の基になる金額です。協会けんぽの健康保険料率は、都道府県ごとに設定されており、介護保険料率は協会けんぽは共通で、健保組合の場合は、組合ごとに異なります。厚生年金保険料は全国一律です。

標準報酬月額28万円から標準報酬月額24万円になった場合の厚生年金保険料の比較は図表2のとおりです。
 
図表2

厚生年金保険料 会社と折半したあと給与から天引きされる金額
標準報酬月額28万円 5万1240円 2万5620円
標準報酬月額24万円 4万3920円 2万1960円

日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)厚生年金保険料率令和4年度より筆者作成
 
厚生年金保険料が安くなることはいいことだと思う人もいるかもしれません。しかし、図表2で分かるように、厚生年金保険の納付額が少なくなると、将来受け取る年金額が少なくなってしまいます。
 
このように子育てのための時短勤務で年金額が少なくなってしまう人を保護する制度が「養育特例制度」です。養育特例制度を利用すると厚生年金保険料が4万3920円でも5万1240円納付したとみなして年金額を計算します。
 

養育特例制度を利用できる人

養育特例制度を利用できる人は3歳未満の子を養育する社会保険の被保険者、または被保険者であった人となります。制度利用を申し出できる人についての留意点は次のとおりです。

●子が扶養認定を受けている必要はなく、 父母いずれも申し出できる
●産休や育休を取得していない人も申し出できる
●※子が3 歳を超えている場合でも申し出できる

※ 申し出日の属する月の前月からさかのぼって2年間のうちにあるものに限り、養育特例を受けられます。

 
また平成29年1月1日より次の子についても、制度利用の対象となりました。

●養親となる者が養子となる者を監護することとされた期間に監護されている当該養子となる者
●里親である労働者に委託されている児童

 

申し出に必要な書類

養育特例制度の利用申請をする場合に必要な書類は以下のとおりです。書類はいずれもコピー利用は不可となります。

●厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書
●戸籍謄(抄)本(申し出者と子の身分関係および子の生年月日を証明できるもの)

※申し出に係る子について、以前、特例措置の適用を受けたことが分かる場合、戸籍謄(抄)本は必要ありません。
●住民票の写し(申し出る人と子が同居していることを確認できるもの)
※申し出る人と養育する子の個人番号が記載されている場合は戸籍謄(抄)本のみで問題ありません。
 
※必要書類は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出します。
※ 養育特例の要件に該当した日に同居が確認できるものを提出します。例えば、育児休業終了の場合は、育児休業終了年月日の翌日に属する月の 初日以後に発行された住民票が必要になります。

監護期間中の子、および要保護児童の申し出には図表3の書類が必要です。
 
図表3

監護期間中の子 戸籍謄(抄)本に代えて家庭裁判所が発出した事件係属証明書と住民票が必要
要保護児童 戸籍謄(抄)本および住民票の写しに代えて児童相談所が発行した措置通知書が必要

日本年金機構 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書より著者作成
 

退職後に申し出する場合の必要書類

被保険者であった者が、退職後に事業主を経由せずに提出する場合、かつ個人番号(マイナンバー)を記載し提出するには、通常の申し出書類に加えて、以下の書類が必要です。
 
●マイナンバーカード
または以下の2点が必要

●マイナンバーが確認できる書類(個人番号の表示がある住民票の写し、氏名、住所等が住民票の記載と一致する通知カード)
●身元確認書類(運転免許証、パスポート、在留カードなど)

郵送で届出書を提出する場合は、マイナンバーカードの裏面両面のコピーまたはマイナンバーが確認できる書類のコピーおよび身元確認書類のコピーを添付します。また、運転免許証、パスポート、在留カード以外の身元確認書類を提出希望の場合には、居住地の年金事務所へ問い合わせましょう。
 

申請方法

養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合、被保険者が事業主を経由して申請する必要があります。そのため、時短勤務で職場復帰した際には、まず勤務先に確認しましょう。
 
なお、申し出時にすでに退職して被保険者資格を喪失していた場合は、被保険者であった本人が 直接年金事務所に申し出することになります。
 
この場合、提出方法は以下のとおりです。

●電子申請
●郵送
●居住地の年金事務所の窓口

 

まとめ

出産や育児休業明けに、短時間勤務で復帰する人は「養育特例制度」を利用することで将来の年金額に影響を与えずに働くことが可能です。
 
勤務先で申し出する予定の人は、勤務先から養育特例制度を伝えてくれる場合もありますが、自身が問い合わせをしなくてはならない職場もあるかもしれません。将来の年金額が減少してしまわないように、忘れずに申し出ておきましょう。
 

出典

日本年金機構 保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)厚生年金保険料率令和4年度
全国健康保険協会 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
東京都江東区 40~64歳の方(介護保険2号被保険者)の介護保険料
日本年金機構 厚生年金保険養育期間標準月額特例申出書
神戸市職員共済組合 教育特例をご存じですか?
厚生労働省 3歳未満の子を養育する期間についての年金額計算の特例
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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