更新日: 2023.03.30 その他

手取り17万で「奨学金」を返せない…「減額」や「免除」は可能? 知っておきたい救済措置を紹介

手取り17万で「奨学金」を返せない…「減額」や「免除」は可能? 知っておきたい救済措置を紹介
奨学金は大学などの入学金や授業料が支払えない人をサポートするための制度です。大学進学時に多くの学生が奨学金を利用しますが、大学卒業後に初任給が低いなどの理由から、返済できずに困っている人は少なくありません。
 
そこで本記事では、奨学金の返済が苦しい理由とその場合に利用できる救済措置について解説します。

執筆者:茂野博起()

奨学金の返済が苦しい理由

奨学金の返済が苦しいと悩む人は少なくありません。返済に苦しむ理由の1つに、初任給が低く奨学金返済に充てるお金が残っていないことがあります。
 

初任給の手取り額は平均約17万円

厚生労働省が2019年に実施した調査によると、4年制大学を卒業した新入社員の初任給は21万200円でした。手取り額は額面の80%とすると16万8160円です。
 
総務省の2022年調査によると、34歳以下単身世帯の月の平均支出額は15万8198円でした。単純に初任給の手取り額から支出額を引くと、残りは9962円になります。
 
一方、毎月の奨学金の平均返済額は、労働者福祉中央協議会の「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」によると、1万6880円です。先ほどの9962円を超えており、多くの人にとって毎月の返済が厳しいことが想像できます。
 

奨学金返済が厳しい場合には救済措置がある

奨学金には給付型と貸与型の2種類ありますが、返済が必要なのは貸与型です。貸与型奨学金は、卒業・退学後に、所定の期間内に、月賦返還または月賦・半年賦併用返還のいずれかを選択して、口座振替(リレー口座)で返還しなければなりません。
 
奨学金制度の運営主体には、大学や民間企業などさまざまありますが、ここでは利用者が多い「日本学生支援機構」の救済措置を紹介します。
 

救済措置(1)減額返還制度

減額返還制度とは、災害、傷病、その他経済的な理由によって奨学金の返済が困難な人が、返済期間を延ばし毎月の支払額を減らすことができる制度です。当初の毎月の返済額を2分の1または3分の1に減らして返すことができます。
 
毎月の返済額は減りますが、返済期間は延長されており、返済総額が減るわけではない点には注意が必要です。減額返還制度は、最長15年(180ヶ月)まで利用できます。1年ごとに願い出る必要があり、最長で5年分の返済額を15年かけて返済することになります。
 
制度を利用できる人の条件は、以下のとおりです。
 

・給与所得者の場合の年間収入:325万円以下
 給与所得以外の所得を含む場合の年間所得:225万円以下(必要経費等控除後)

※それぞれ被扶養者に対して1人につき38万円を収入・所得金額から控除することが可能
・願い出および審査の時点で延滞していない
・口座振替(リレー口座)加入者である
・月賦返済である

 

救済措置(2)返還期限猶予制度

返還期限猶予制度とは、災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合、返済期限を先に延ばすことができる制度のことです。先に延ばした分、返済完了までにかかる期間は長期化します。1年ごとの願い出で、最長10年延ばすことができます。
 
制度を利用できる人の条件は、以下のとおりです。
 

・給与所得者の場合の年間収入:300万円以下
 給与所得以外の所得を含む場合の年間所得:200万円以下

 
(2)の返還期限猶予制度より(1)の減額返還制度のほうが、少しでも毎月支払い続けることで将来の返済負担を軽減できる点でのぞましいといえます。
 

救済措置(3)返還免除

返還免除とは、奨学金を受け取っていた本人が死亡した場合や精神・身体障害によって返済できなくなった場合に、未返済額の一部または全部が免除される制度です。
 
制度を利用できる人の条件は、以下のとおりです。
 

・本人の死亡によって労働能力を失い、返済できなくなった
・精神・身体障害によって返済できなくなった

 
精神・身体障害の場合、主治医の診断書により、症状の回復の見込みがなく労働能力が喪失していること、または高度の制限を有することを証明する必要があります。
 

奨学金の返済が難しい場合は救済措置の活用を検討しよう

大学進学にあたり奨学金を借りたものの、初任給の金額やその他経済的な事情などから毎月の返済が難しくなる人もいるかもしれません。しかし、本記事で紹介したように、減額返還や返還期限猶予などの救済制度が利用できる可能性がありますので、それぞれの条件を確認しておきましょう。
 

出典

独立行政法人日本学生支援機構 返還が難しくなった場合
 
執筆者:新川優香
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
 

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