更新日: 2019.01.10 その他
アパートやマンションの更新料を払う必要ってあるの?金額の有効性はいくらまで?
仮に家賃の1カ月分だったとしても、更新の月は普段と比べて2倍の額の家賃を支払っていることになります。そのように考えると、更新料は決して安いものではなく、消費者にとっては不利な内容です、
とするならば、消費者契約法が適用されるような事業者と個人との間の賃貸借契約において、更新料が存在するのは不当だと考える余地もあるのではないか。そう思ったことのある方もいることでしょう。
そこで、更新料の額はどこまでが有効と言えるのかについて、消費者契約法の観点から考察してみました。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
消費者に不利な内容は無効
消費者契約法は個人と事業者との間での契約に適用されます。
消費者契約法は第10条において権利を制限したり、義務を課すことにより消費者を一方的に害するようなものは無効であると定めています。
イメージしやすいよう大ざっぱに言ってしまえば、契約内容の中でも消費者を必要以上に不利にするような部分は無効として扱われる。ということです。
更新料は法律に定めがない
意外に思われる方も多いでしょう。
実は、更新料の支払いは民法や借地借家法をはじめとする各種法令において義務とされていないのです。つまり、更新料は事業者と消費者との間で任意に取り決めた契約の内容ということになります。
また、建物などの使用における対価は賃料という形で定期的に支払われています。とするならば、更新料は消費者たる賃借人にとって必要以上に不利となる部分なのではないか。
消費者にとって不利なのであれば、消費者契約法により更新料に関する部分は無効となるのではないか。そう解することも不可能ではありません。
その点、判例ではどのように結論が出されているのでしょうか。
更新料は当然に無効とはならない
結論として、消費者契約法が適用される場面においても、更新料は当然に無効とまでは言えないようです。
なぜなら、最高裁判所は更新料について次のように考えているからです。
(1)更新料は賃料としての一面も持っている
(2)一定の地域においては更新料の受け渡しが実際に行われている
(3)これまでの裁判などにおいても当然に無効であるという扱いはされていなかった
(4)とするならば、更新料の内容が明確で賃借人の合意があり、かつ、その額が契約期間などと比較して不当に高すぎるなどの事情がなければ、消費者の利益を一方的に害するとまでは言えない。
実際のところ更新料はいくらまで許される?
先ほどの最高裁判所の見解には次のような疑問が残ります。
「どの程度定まっていれば、更新料の内容が明確と言えるのか」
「どれくらいの額であれば更新料が不当に高すぎないと言えるのか」
これら2点について判断するには個別の事情などによって異なることが予想されるため、一律に線引きすることは難しいと考えられます。
とはいえ、過去の裁判の事例から考えるに「2年ごとに家賃1カ月から2カ月分相当の更新料が発生する」といった程度のものであれば、まず問題ない範囲だと言えるでしょう。
更新料の存在が一律に無効とまでは言えない
更新料は、貸主と借主の間において明確に合意がされており、かつ、契約期間などの事情を考慮したうえで、不当に高額であると判断されない限り有効だと言えるでしょう。
前述したとおり、よくある「2年間ごとに賃料の1カ月分から2カ月分の更新料を支払う」といった程度であれば無効となる可能性は低いと考えられます。
しかし、個別の事例によっては更新料が不当であると判断され、無効とされることもありえます。
更新料について悩んでいるのであれば、お近くの国民生活センターなどの専門機関へ相談してください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー