更新日: 2020.05.25 その他

上海の人は現金を持ち歩かない? 中国で進む「フィンテック社会」について聞いてみた

上海の人は現金を持ち歩かない? 中国で進む「フィンテック社会」について聞いてみた
世界で一番、モバイル決済が進んでいるといわれる中国。中国のスマホ決済は、2強といわれる「アリペイ」「ウィーチャット」が多くのシェアを占めているといいます。
 
日本ではまだ身近とはいいにくいモバイル決済。なぜ中国ではここまで急速に普及したのでしょうか。
 
中国のフィンテックサービスの現状とこれからの展望について、中国の上海に25年間お住まいの公認会計士、望月一央さんにお伺いしました。
 
望月さんは中国人女性と学生結婚し、日本で公認会計士の資格を取得。その後、中国に移住し、現在は外資系総合会計事務所の中国オフィスでパートナーとして勤務しています。
 
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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スマホ決済が主流の上海。2強は「アリペイ」と「ウィーチャット」

キャッシュレス化が進む中国。上海では「スマホ決済」が主流となっており、現金を使用する人はあまりいません。上海で暮らす望月さんも、ほとんど現金を持ち歩かないそうです。
 
スマホ決済は、店頭でスマホのモバイルアプリを利用し、QRコード読み込んで支払いをします。
 
中国のスマホ決済は「支付宝(アリペイ)」(アリババ集団系)と「ウィーチャットペイ」(テンセント系)の2強。
 
アリペイは中国の大手通販会社「アリババ」が提供するスマホ決済サービス。ウィーチャットペイは中国で広く使われているメッセージアプリ「ウィーチャット」の運営会社「テンセント」が提供するスマホ決済サービスです。
 
スマホ決済が急速に普及した理由のひとつとして、この「アリペイ」、「ウィーチャットペイ」ともに加盟店手数料などが原則不要な点が挙げられます。
 
大抵の店舗ではスマホ決済が可能です。現金払いしようとすると、逆に嫌な顔をされることもあるそうです。
 

利用すればするほど信用度が上がり、お金が借りやすくなる「アリペイ」

スマホ決済サービスにおいて、ユーザーはスコアと呼ばれる評価をつけられます。ユーザーはクレジットカード情報などの個人情報を入力することでスコアが上がり、便利なサービスを受けることができます。
 
個人情報は多く入力するほど、より良いサービスが受けられる傾向です。
 
例えば、アリペイを使うと信用度のスコアが上がるようになっています。使えば使うほど、支払い能力があるとして信用度が上がり、お金が借りやすくなる仕組みです。
 
また、スコアが上がることで海外旅行のビザを取りやすくなったり、インターネットでの納税システム「イータックス」において利用できるサービスが増えたりします。
 
アリペイをはじめとしたスマホ決済サービスの提供会社が、加盟店手数料が無料なのに収益を上げられる理由もこのスコアにあります。
 
ユーザーがスコアを高めるために、個人情報を入力したり、サービスを頻繁に利用することで、提供会社はいわゆる「ビッグデータ」を手に入れることができます。
 
そのビッグデータを活用して会員に対して広告を出すことで収入を得たり、お金を貸したりして、収益を上げていると思われます。
 

中国と日本、お金に対する感覚の違い。中国は子供の学費に1億円かけることもざら

ここで、中国に長らく暮らす望月さんに、日本人と中国人のお金に対する感覚の違いを聞いてみました。
 
望月さんの感覚としては、日本は貧しさに対して「美徳」を感じる傾向にあるといいます。貧しいことは質素、倹約であると考え、それを尊ぶのです。
 
それに対して、中国は貧しさに対してポジティブなイメージがありません。
 
そもそも、質素や倹約という概念があまりなく、お金がないと軽蔑されることも。そのようなムードが、中国では「お金持ちになろう」という動機になりやすいと考えられます。
 
また、中国では子供の教育に、多くのお金をかけます。
 
学校は公立が優秀であり、学区内に住居を構えることを理想とします。行きたい学校の学区内に3年前から住み始める家庭が多く、人気のエリアであれば当然住居の価格は高くなります。
 
子供一人の生涯学費は一人1億円かかることもざらです。
 

中国のフィンテック社会の今後。中国人が海外旅行をすることで世界に流通するのでは

中国はフィンテックサービス会社が個人情報をどんどん集め、スマホ決済による電子マネーが大量に流通しています。
 
今後は人民元以外の中国電子マネー残高が膨張する世界になる可能性があります。
 
そして、中国人が頻繁に海外旅行に出かけることで、それらの電子マネーが中国以外の国でも多く使われるようになり、世界に流通するのではないでしょうか。望月さんは、そう語られていました。
 
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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