更新日: 2019.01.10 その他
奨学金は「もらう」のではなくて「借りる」 借りた奨学金の返還が厳しくなる前に知っておくべきこと
そのようなときの救済制度を知っておくと、いざという時に落ち着いて立て直しを図ることができます。
Text:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
日本学生支援機構の2つの救済制度
1.減額返還
経済的に苦しくて、このまま返還を続けていくのは無理そうだけれど、月々の返還額を減らせば返還できるという人には、減額返還の制度が用意されています。
月々の返還額を2分の1、もしくは3分の1に減らすことができます。もちろん、返還に必要な期間はその分長くかかりますが、着実に返還していくことができます。
利用するには申請して審査を受けなければなりません。利用できる収入の基準は、給与所得の人は年間収入325万円以下、給与以外なら年間所得225万円以下です。最長で5年分の返還金を15年かけて返還することができますが、申請は1年ごとにすることになっています。
気を付けておきたいのは、延滞してからでは審査を受けられなくなってしまうことです。
日本学生支援機構は「奨学金返還相談センター」を設けていますので、返還を続けることが難しくなってきたら、早めに電話で相談しましょう。
また、第一種奨学金の「所得連動返還方式」を選択している場合は利用することができません。
2.返還期間猶予
災害や病気、ケガなどの理由で収入が激減し、一時的に返還が厳しくなることもあるでしょう。その場合は、返還期限猶予を申請するとよいでしょう。
一定の期間、返還を先延ばしにすることができます。最長10年まで猶予を受けることができますが、当然のことながら返還を終える時期も先に延びてしまいます。
心配になるのは、返還期間が延びたら利息が雪だるま式に増えるのではないかということですが、利息を含めて返還予定総額が増えることはありません。
返還期限猶予の収入基準は、給与所得で年間収入金額300万円以下、給与以外の所得がある場合は年間所得200万円以下です。
減額返還と返還期間猶予のどちらを選ぶ?
貸与型の奨学金は、必ず返還しなければなりませんが、有利息の場合も民間のローンと比べて金利が非常に低く抑えられていますし、救済制度も用意されています。
ただ、奨学金には返済能力の審査がないため、借りすぎてしまったケースもあるでしょう。また、病気、ケガ、災害、失業などのトラブルは誰にも起きる可能性があります。
返還が厳しくなってきたら、無理せず「奨学金返還相談センター」へ連絡し、早めに対処して立て直しのプランを考えましょう。
減額返還と返還期間猶予も、収入の基準にはあまり差がありません。どちらを選ぶかは返還できなくなった理由や収入によって異なりますが、可能なら減額返還を選択しましょう。
奨学金はいつか返還しなければなりません。少しずつでも返還していけば、それだけ早く返還を終えることができます。
返還猶予を受けるとしても、少しずつで良いので奨学金返還に回すお金を積み立てておくようにしましょう。大切なのは、救済制度を受けている間にしっかり収入を増やして、経済的体力を身に付けることです。
Text:蟹山 淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表