更新日: 2023.03.17 その他
失業給付の受け取り期間は2ヶ月から「短縮」になる? 短縮でなにがどう変わるの?
当期間を短縮することで、自発的な転職を増やしたいという狙いがあるようです。では、失業給付の制度は具体的にどのように変わるのでしょうか。現時点で明らかになっている範囲で解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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失業給付の概要
「失業給付」は、雇用保険の被保険者が、倒産、定年、契約期間の満了、自己都合による退職などで離職した際に、「基本手当」が受け取れる制度です。
失業給付の目的
失業給付は、失業中の生活費を支給することで、1日でも早い再就職を可能にすることを目的として設けられています。
給付要件
失業給付を受け取れるのは、次の4つの要件を満たしている人です。
(1)就職への積極的な意思がある
(2)いつでも就職可能な能力がある
(3)ハローワークなどで積極的に求職活動をしているのに就職できずにいる
(4)原則として離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある
なお、倒産や疾病などによって離職した「特定受給資格者」と「特定理由離職者」の場合は、離職前の1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば受け取れます。
給付期間
失業給付を受け取れる期間は、原則として被保険者期間が10年未満の場合は90日、10年以上20年未満の場合は120日、20年以上の場合は150日です。
給付金額
失業給付の金額(月額)は、給与の総支給額(保険料などの控除前の額で賞与を除く)が平均月額15万円程度の場合は11万円程度、平均月額20万円程度の場合は13万5000円程度、平均月額30万円程度の場合は16万5000円程度です。
なお、それぞれの正確な金額は、ハローワークに提出する離職票に基づいて計算されます。
受給開始日
失業給付は、「受給資格決定日から7日間の待機期間後」に受け取りが可能になります。ただし、正当な理由がなく自己都合で離職した場合は、受給資格決定日から2ヶ月間の給付制限期間後でないと受け取れません。
給付制限期間の短縮で何がどう変わる?
政府は、転職による労働移動を促進するために、失業給付の給付制限期間の短縮に関する検討を始めています。この政策によって、何がどう変わるのでしょうか。
給付制限期間を短縮する理由
現在の仕組みでは、正当な理由なく自己都合で退職すると、原則として2ヶ月間の給付制限期間後でなければ失業給付を受け取れません。
「新しい資本主義」を掲げる岸田政権では、グリーンやデジタルといった成長産業への労働力の移動によって、構造的な賃上げを目指そうとしています。その目標達成のためには、失業給付の給付制限期間の短縮による転職者の増加が必要と考えているようです。
給付制限期間の短縮で何がどう変わるのか?
厚生労働省「令和4年版労働経済の分析」によると、2年以内に転職した正規雇用の男性は17.6%、女性は24.1%でした。転職希望者はそれぞれ35.1%と41.4%であるため、希望はしていても実行できずにいる人も少なくないようです。
その理由の一因が2ヶ月という給付制限期間にあるのなら、当制限期間が短縮されることによって、転職を決断する人が現在よりも増える可能性は考えられます。
給付制限期間の短縮による効果も含めて今後の議論に注目しよう
「新しい資本主義実現会議(第14回)」で、政府は正当な理由がなく自己都合で離職した人の給付制限期間の短縮を検討しています。
現在は2ヶ月である期間を短縮することで、グリーンやデジタルといった成長産業への転職を促進したいようです。どれほどの効果があるかは未知数ですが、そういった面も含めて今後の議論に注目していきましょう。
出典
内閣官房 新しい資本主義実現会議(第14回)
厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~
ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部