更新日: 2019.01.11 その他
月々数百円で保障される先進医療実績の推移とは?受けるべきか否か。
保険料は数百円ですが、先進医療を受けて保障が役立つことはあるのでしょうか?
先進医療の実績から保障の意義についてまとめてみました。
Text:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
先進医療の全患者数や費用総額は過去最多を更新
先進医療とは、厚生労働省が定める評価療養の1つで、「保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」です。
先進医療技術については全額患者の負担ですが、将来的な保険導入のための評価を行うものとして、先進医療以外の部分については保険診療との併用が認められています。
先進医療の技術数や全患者数、先進医療費用の総額について、過去11年間の実績をまとめて表にしてみました。
先進医療の技術数は平成29年6月30日時点で102種類ですが、過去増減を繰り返しています。これは新規承認された技術が加わり、保険収載・実施取り下げ・削除された技術が引かれるためです。
それでも全患者数は徐々に増えており、平成29年度は3万人を超え、10年前に比べて3倍になっています。先進医療費用の総額も全患者数同様に増えており、平成29年度は約207億円で、10年前に比べて4倍になっています。
100万円を超える高額な先進医療技術も多い
102種類ある先進医療技術のうち、1件あたり100万円を超える技術料を下記表にまとめてみました。表の医療技術のうち、最初の2つ「陽子線治療」「重粒子線治療」が先進医療A、そのほかはすべて先進医療Bです。
先進医療Aは、未承認等の医薬品や医療機器の使用(適応外使用)を伴わない医療技術。先進医療Bは、未承認等の医薬品や医療機器の使用(適応外使用)を伴う医療技術です。
先進医療総額では、先進医療Aの陽子線治療(64億円)と重粒子線治療(49億円)だけで113億円になります。すべての先進医療費用の総額が207億円なので、この2つだけで5割を超えています。
医療技術ごとの費用総額では、表には載っていない「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」が84億円で最も多く、陽子線治療と重粒子線治療を合わると197億円で、全体の95%にもなります。
年間実施件数でも、先進医療Aの陽子線治療(2319件)と重粒子線治療(1558件)が多いくらいで、ほとんどは非常に少ないです。
表以外の医療技術では「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」の1万4433件と、「前眼部三次元画像解析」の1万1595件が目立って多いです。
1件あたりの費用で最も高額なのは「オクトレオチド皮下注射療法(先天性高インスリン血症)」の541万円で、非常に高額ですが実施件数は1件しかありません。
陽子線治療と重粒子線治療は先進医療Bにもあり、いずれも300万円前後となっています。100万円を超える高額な先進医療技術には、がん治療に関するものが多く、内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡術等もあります。
平均入院期間は医療技術によってかなり差があります。先進医療Aの陽子線治療は12.6日、重粒子線治療は7.0日で済み、一般的ながん治療による入院日数より短くなっています。
先進医療の実施件数からわかるように、先進医療を受ける機会はかなり限られています。先進医療技術は全額患者負担であり、高額な費用が妨げになっているのかもしれません。
または、医師や患者に先進医療を受ける選択肢がなかったのかもしれません。数百万円の治療費をすぐに用意できる人はあまりいないです。
いざという時のために頑張って貯めておくと良いですが、医療保険やがん保険の先進医療保障に加入すれば、月々数百円の保険料負担で済むので、すぐに貯められそうにない人は保険で備えることも検討してみると良いでしょう。
※先進医療の保障は、医療保険やがん保険に付加して加入します。先進医療の保障を単独で備えることはできません。先進医療保障の詳細については、保険会社に直接確認してください。
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士