更新日: 2019.09.25 その他

あなたは説明できる?三大国家資格のひとつ「公認会計士」ってどんな仕事?

あなたは説明できる?三大国家資格のひとつ「公認会計士」ってどんな仕事?
公認会計士という資格は、どのような資格かご存知でしょうか? 最近、新聞やニュースなどでも、公認会計士が行う上場会社の監査について取り上げられ、耳にする機会が増えたと感じます。
 
公認会計士は、医師、弁護士とともに「三大国家資格」と称される、会計と監査に関するスペシャリストの国家資格です。
 
特に、公認会計士だけに認められる仕事は“監査”といって、企業の決算書が正しく作成されているかを第三者の立場で、チェックし、お墨付きを与える仕事です。
 
よく、税理士と、公認会計士の違いは?ということを質問されますが、個人や法人の税務申告書を作成および提出、税務代理、税務相談を行うことが独占的にできるのが、税理士です。
 
一方の公認会計士は、監査しかできないのかというと、そのようなことはなく、登録手続きを行うことで、税理士試験を別途受験することなく、税理士登録することもできます。
 
そして監査、税務以外ものさまざまな分野にて、公認会計士が活躍できるフィールドはあります。
 
小泉大輔

執筆者:小泉大輔(こいずみ だいすけ)

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役

公認会計士・税理士
1970年東京都生まれ。上智大学経済学部卒業後、公認会計士となり、朝日監査法人(現在:あずさ監査法人)で監査実務、及び、M&A,株式上場支援に携わる。
2003年に、独立し、(株)オーナーズブレインを立ち上げ、現在は代表取締役であるとともに、2社の上場会社の役員も兼任する。共著著書に『コーポレート・ガバナンス報告書 分析と実務』2007年4月(共著、中央経済社)』DVD『できるビジネスマンDVD+財務諸表チェックのキモ』 200年7月(創己塾出版)がある。
http://ownersbrain.com/

1.公認会計士に向いている人の特徴

公認会計士に向いている人の特徴としては、次の5つがあると思います。
 
(1)数字に苦手意識がないこと

公認会計士は、会社の決算書が正しく表示されているかという監査についての専門的なスキルが求められるため、数字で考える思考力が必要になってきます。
 
もちろん、数字が得意でなくとも、問題はないですが、数字について関心があるということが、公認会計士に向いている人の特徴の一つです。
 
(2)経営や経済に関心があること

会社の数字を通じて会社の経営のアドバイスを行う場面もあることから、経営や経済に関心があることが、重要です。
 
松下幸之助さん、稲盛和夫さんをはじめ、偉大な経営者の方々は、皆、会計の重要性を説いています。会計がわからなければ、経営ができないといわれるほど、経営、経済と会計のつながりは深いです。
 
(3)コミュニケーション能力

資料から情報を読み解くだけでなく、クライアントの話をしっかり聞けることが重要です。時に、クライアントの悩みを聞いたり、また、問題を発見して、改善提案やアドバイスする機会も多いです。
 
そのためには、コミュニケーション能力を高めて、よいリレーションシップを築くことが重要です。
 
(4)思考力

資料を分析したり、クライアントとのインタビューなどから、現状を把握し、どのような問題があるのか、仮説を立て、問題を解決する力も必要です。
 
最近は、わからないことがあると、すぐにインターネットで検索して答えを探してしまいがちですが、必ずしも、そこに答えがあるとは限りません。そのためにも、普段から考え、思考力を高める習慣づけが必要かと思います。
 
(5)行動力

試験に合格するまでは、日々、努力を継続することが必要です。また、仕事現場で、困難にぶち当たった際には、乗り越える力が必要です。そのために、思い立ったら、すぐに行動に起こす習慣を持つことが大事です。
 

2.公認会計士になるには

公認会計士の登録者は、2017年12月時点で3万6302人。ここ10年で、急激に増加傾向となってます。
 


 
(出所:日本公認会計士協会)
https://jicpa.or.jp/about/outline/pdf/kaiinsuu_suii_201712.pdf
 
公認会計士の出願者は2万5648名、合格者4041名をピークに、下落傾向にありましたが、2016年頃から、少し増加傾向にあり、2017年度の出願者数は、1万1032人(+776人)、合格者1231名、合格率11.2%と微増です。
 
ちなみに、最近は、女性の合格率も増え、合格者の男女比率は、男性80.3%、女性19.7%となってます。
 

 
では、どのようになったら公認会計士になれるのでしょうか?
 

 
(出所:日本公認会計士協会)
 
公認会計士になるには、公認会計士試験に合格し、国家資格を取得しなければいけません。公認会計士になるためには、大きくわけると三つの関門をクリアすることが必要とされます。
 
第1関門は、「短答式試験」と呼ばれるマークシート式の試験です。
 
公認会計士として必要とされる専門知識などについて合計4科目(財務会計論・管理会計論・監査論・企業法)の中から幅広く出題されます。この試験に合格すると、次の論文式試験に進むことができます。
 
第2関門は、「論文式試験」です。「短答式試験」に合格できた人だけが、受験できます。この筆記試験で問われるのは、会計に関するさまざまな分野の知識です。
 
必ず受験しなければいけないのは「会計学」「監査論」「企業法」「租税法」、そして選択科目1科目を含むの合計5科目です。選択科目は、「経営学」「経済学」「民法」「統計学」のなかから1科目を選択して受験します。
 
なお、短答式試験は合格後2年間の免除があるため、論文式試験で不合格になっても、2年間はここから試験を受けることができます。
 
第3の関門は、公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)に合格の後に、業務補助と実務補修を経て、行われる修了考査です。
 
修了考査までの間には、監査法人や一般事業会社の経理等で2年間、業務を補助する経験、そして、この期間に並行して、一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習、講義を受け、実務をするうえで必要な会計や監査を学んでいきます。
 
そして、最後に、日本公認会計士協会による修了考査に合格した後、内閣総理大臣の確認を受け、公認会計士となる資格が与えられます。
 

3.合格までにかかる時間とコスト(平均の受験回数とコスト)

 
公認会計士の試験に合格するまでの年数について、金融庁が取ったアンケートによると,平均して2年~4年程度かかっているようです。
(出所:金融庁ウェブサイト)
https://www.fsa.go.jp/singi/kaikeisi/siryou/20100219/01.pdf
 
短期合格をしている人をみると、やはり、受験のための学校を利用する方が多いです。もちろん、学校を選ぶか、どのコースを選ぶかで、値段設定は大きく変わってきますが、初学者で2年通学コースを選択した場合の受講料でも、おおよそ60万円~70万円ぐらいはかかります。
 
また、会計大学院で2年間学ぶケースでは、私立だと300万円ほど、国立だと150万円ほどかかるようです。
 
もちろん、独学という方法もありますが、短期合格を考えた場合には、かえって、非効率になると思います。
 
なお、公認会計士になるための試験を受けるための受験手数料として1万9500円が必要になります。さらに、筆記試験に合格した人が実践での経験を2年以上積み、最後の修了考査を受けるときに、受験手数料の2万8000円が必要になります。
 

4.公認会計士のキャリアプラン

最後に、公認会計士のキャリアプランついてふれたいと思います。
 
公認会計士試験合格後の最もオーソドックスなキャリアパスとしては、監査法人で働くというプランです。監査法人とは、5人以上の公認会計士が集まって設立し、大企業の会計監査を主として行う特殊な法人です。
 
この、監査法人での会計監査業務では、いろいろな業種のクライアントにて、また、クライアントごとに、異なるチーム編成で、さまざまな現場経験を重ねることができます。
 
また、仕事内容も会計監査をはじめ、株式上場の支援、M&Aにおける買収調査などさまざまです。
 
その後のキャリアとしては、監査法人に勤め続ける方もいますが、最近では、ある程度監査法人で勤めた後で、セカンドキャリアを積むために、転職・独立開業する方は増えていると感じています。
 
その選択肢として考えられるのは、
 
・コンサルティング会社

―ファイナンシャルアドバイザリーサービス:M&Aにあたってのアドバイザリーを行ったり、M&Aにあたっての財務調査、株価算定などを行う
 
―会計系コンサルティング会社:国際会計基準への移行の支援や、業務改善などを行う
 
・事業会社

―上場会社、外資系企業、ベンチャーなど
 
・金融機関

-会計の知識を活かして、証券会社、ベンチャーキャピタルなど
 
・独立開業

-会計のコンサルティング、税務代行、上場会社の役員を兼任
 
などなどいろいろな選択肢を持つことができます。
 
特に、ここ最近は、上場会社にて、組織内会計士として活動される、あるいは、スタートアップベンチャーでの引き合いも多くなっていると感じます。
 

5.おわりに

日本では、公認会計士というと、会計業務に対する専門能力にばかりフォーカスされますが、米国などでは、ナイキをはじめ、米国の公認会計士の資格をもっている経営者は少なくないようです。
 
ファイナンシャル・リテラシーは、それだけ、実際の経営にも役立つことを示しているかと思います。
 
このように、経営には必要不可欠な、知識、能力を身に着けることができる公認会計士の資格の魅力は、これからも、大きくなってくると予測されます。
 
純粋に会計監査や、コンサルティング業務を行うだけでなく、実務経験を活かして、また、別の分野で活かしてみたい、このようなことにご関心がある方は、一度、公認会計士の資格にも、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 
Text:小泉 大輔(こいずみ だいすけ)
株式会社オーナーズブレイン 代表取締役 / 公認会計士・税理士 


 

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