更新日: 2019.01.10 その他

物件を借りるときにトラブルを未然に防ぐ「東京ルール」「大阪ルール」が存在する!それって何?

執筆者 : 高橋庸夫

物件を借りるときにトラブルを未然に防ぐ「東京ルール」「大阪ルール」が存在する!それって何?
日本の二大都市である東京と大阪には、それぞれのカルチャーや商慣習などによって、さまざまなルールの違いがあります。
 
例えば、マンションなどの賃貸借契約には、東京では「敷金」「礼金」という項目がありますが、大阪では、それだけでなく「保証金」「敷引き」という項目が設けられていることがあります。
 
日頃当たり前のように使われているルールの違いについて確認してみましょう。
高橋庸夫

Text:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

賃貸借契約での東京と大阪の違い?

東京の賃貸借契約の場合、いわゆる「東京ルール」では、「敷金」と「礼金」が使用されます。そして、基本的にはこれが全国的なスタンダードとなっています。
 
「敷金」とは、借主が貸主に支払う保障として入居時に預けておくお金のことを言います。そして、万が一家賃の滞納があった場合の補てんや退去する際の修繕、ハウスクリーニングなどに充てられます。そのため、借主が家賃を滞納することなく、大きな過失もなく退去する際には返金されることになります。
 
また、「礼金」とは、まさに貸主に支払うお礼金です。いわゆるお礼金ですので返金されないお金です。
 
一方、大阪の場合、いわゆる「大阪ルール」では、「保証金」や「敷引き」が使用される場合があります。
 
「保証金」とは、東京ルールでの「敷金」とほぼ同じ意味合いとなります。また、大阪ルールでは保証金が家賃3~6カ月分など複数カ月分に設定されるケースが多く、東京ルールと比べて高めに設定されているのが通常です。
 
そのため、多くの場合大阪のほうが初期費用を多く準備する必要があります。さらに、原則支払った保証金は全額は返金されないルールとなっており、家賃の滞納や原状回復費用として一定金額を差し引かれた残額が返金されることになります。
 
この差し引かれる金額が「敷引き」と呼ばれるものです。他にも、「敷引き」とは別に、実際に修繕やハウスクリーニングの費用が別途徴収されるケースもありますので、契約時などで十分に注意する必要があります。
 

退去時のトラブルを回避するために!

退去時等に多発するトラブルに対処するために、東京都は平成16年10月に「賃貸住宅紛争防止条例(いわゆる東京ルール)」を施行しました。
 
さらに、条例で説明を義務付けている原状回復や入居中の修繕について、わかりやすく解説した「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を小冊子としてまとめています。
 
これにより、賃借人が退去した際の原状回復費用は原則として貸主が全額負担することになり、家主が預かっている敷金は速やかに入居者へ返還する旨を説明することが条例で義務付けられました。
 
このように、通常は敷金を全てお返しするのですが、東京ルールの中には家主が負担しなくてもいいケースが明記されています。
 
賃借人が故意・過失で部屋を汚したり、備品を壊したりした場合やルームクリーニング代などは請求できるとしています。
 
しかし、故意・過失箇所をお互いに特定したり、その解釈でもめることが多いことも事実です。
 
例えば、たばこのヤニで黄ばんだクロスや絵を飾るために壁に空けた穴は、生活をするうえで通常の使用にあたるのか、故意・過失にあたるのか、賃借人と家主の間でその解釈が分かれるわけです。
 

まとめ

退去時に無用なトラブルを回避するためには、賃貸借契約の締結前に、原状回復費用の負担区分、違約金の事項、敷金礼金以外にかかる費用、特約の有無などについて、十分に確認しておくことが大前提となるでしょう。
 
また、入居時からあった汚れや傷を証拠として残しておくために、入居時に室内の写真を撮っておくことも重要です。
 
さらに、最近ではワンルームマンションなどで「敷金礼金ゼロ」の物件も増えています。空室を早く埋めるための対策として敷金礼金ゼロにする物件があることも事実ですが、これ自体は悪いことではありません。
 
入居者からすれば敷金礼金がない分、初期費用を抑えられるので大いに助かります。
 
しかし、中には住環境が悪い場合やそれ以外の費用が多くかかるなど、総合的にはお得とは言えないケースもありますので、この点にも注意が必要です。
 
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士

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