更新日: 2019.01.10 その他
「シェアオフィス」を利用する価値が高いと思われる4つのメリット。
その名のとおり「みんな(複数の利用者)でシェア(共有)するオフィススペース」なのですが、具体的なイメージがあまり湧いてこないかもしれません。一体、どんなものなのでしょうか。
Text:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
基本的なイメージは
シェアオフィスは2000年代以降に登場したといわれ、東京・大阪・名古屋・福岡ほかの大都市圏を中心に普及が進み、近年は設置ペースが加速しているようです。
スペース内の設備はケース・バイ・ケースですが、基本的なイメージは次のようなところでしょうか。
<個別設備>
机、椅子、電源コンセント
※Wi-Fi機能を備える施設も多いでしょう。
<共用設備の例>
受付と受付スタッフ、コピー等OA機器、会議室スペース、ラウンジスペ
ース、電話ブース、ロッカー、雑誌・書籍などを備えた書架、自動販売機(飲み物、菓子類など)
※上記のような各設備の実際の有無は、施設ごとにさまざまです。
<その他>
一人用や多人数用の個室スペースを備えて、場合によっては電話回線引き込み・法人登記・郵便物受け取り・秘書(電話取り次ぎ)代行などの事務所機能サービスまで付いた形態のオフィススペースもありますが、こちらは「レンタルオフィス」としてシェアオフィスとは区別し、今回は個室や固定席などではなく空いている席を適宜利用するフリーアドレス制のオフィススペースを前提にしています。
使う立場から見ると
シェアオフィスを使う立場から見るとどんな評価なのでしょうか。ざっと、つぎのような4点が挙げられます。
(1)起業家やフリーランスの人が、繁華なオフィスエリア内のスペースを比較的安価に(しかも敷金・保証金などの初期投資もなしに)仕事場として利用できる。
(2)資格試験受験などに向けた自習スペースや、リタイア後に定例的に通える居場所スペースとしても利用できる。
(3)企業がサテライトオフィス的なスペースとして確保した場合、社員は外出先での営業や打ち合わせの合間に会社の自席に都度戻るよりも効率的に事務処理や連絡作業を行える。
(4)シェアオフィスのラウンジスペースやサークル組織などをきっかけにして起業家や異業種会社員などの交流が進んで、新たなビジネスや協業の創出につながることも期待できる。
実際に見てみると・・・
実際に、あるシェアオフィスを訪ねてみました。港区内の大規模ビルの高層階の一角、床面積600平方メートルあまりで170席ほどのスペースです。エレベーターを出て受付(女性スタッフ常駐)前の入口からオートロックで、この先からカードキーが必要です。
入口を入ってすぐ横にはビジネス書を中心に配した書架があり、新刊も適宜入荷します。ここはコピー機や飲料自動販売機も配置されたラウンジ的なスペースとなっていて、会員が同伴するゲストも料金1000円(税別)で入場できます。
席数30ほどで、気軽に歓談や飲食、電話連絡をする人も多くてにぎやかです。
ここからオートロックドアでさらに2つのスペースに分かれます。個別の机と椅子を中心に一部には大机や長いカウンター机が配され、さらに10席足らずのソファ席もあるスペースがひとつ目。
こちらにも壁際に書架が多く(オフィス内全体で蔵書約2000冊)、席数70あまりで飲食も可。会話や電話は禁止ではありませんが、デスクワーク中の人が多くて暗黙の〝自主規制モード〟となっているのか、結構静かな空間です。
もうひとつのオートロックドアの先には、机ごとに簡易パーティションで仕切られたスペースが。こちらは〝自習室〟のような雰囲気で、作業や勉強に集中する人が大半のためとても静かです。飲み物はともかく食事・会話・電話などはNGで、席数は60席あまり。
営業時間は7時~24時で年中無休に近いなど、利用可能時間はとても幅広いです。気になる料金体系は、月額会費9000円(入会時のみ別に事務手数料5000円。いずれも税別)。月20回通うと仮定すれば、1回当たりの負担はワンコイン以下に収まります。
長時間は粘りにくい喫茶店などで狭い思いをしながら事務作業や勉強などをすることに比べると、意外と安くて快適なスペースだと評価できるかもしれません。
上記はあくまでも一例です。施設によって設備もサービス内容もさまざまで、料金体系も月額会費制(1万円前後からあり、設備やサービス内容が豊富になると3万円くらいのものも見受けられます)と都度課金制(一日当たり1000円くらいからあり、利用時間で課金するところもあります)のいずれかあるいは併用といろいろです。
とはいえこの業界でも競争原理がはたらきますので、同じ水準の設備やサービス内容であれば料金は極端に大きな差異はないと考えてもよさそうです。
まとめ
今年6月から東京メトロの駅構内に一人用のボックス型シェアオフィスを設置して実証実験が始まるそうです。
便利な「駅ナカ」で事務作業やメール・電話連絡などを周囲の目や耳を気にせず気軽にこなせる日も近いようで、シェアオフィスの今後の一層の拡がりや使い勝手のさらなる進化を予感させてくれます。
もちろんメリットだらけではなく、特に企業が社員に利用させる際の情報漏えいリスクなどのデメリットも指摘されますが、全般的な利用価値の高さが世間で声高く叫ばれている「働き方改革」(つまるところは〝生き方改革〟ともいえるでしょう)にも貢献するような、今の時流にとても合致した施設なのです。
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士,不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー