隣人がベランダで喫煙!ひどい場合は慰謝料をもらえるの?
配信日: 2018.05.12 更新日: 2019.08.27
隣人がベランダで喫煙を繰り返すので洗濯物に臭いが付く、部屋にまで臭いが入ってくる…他にも、吸い殻の不始末など悪質なケースがあるようです。
マナーの悪い喫煙者に対して、法的に対処する術はないのでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
習慣的な喫煙者は全体の2割弱。30代が最も多い
厚生労働省の調べによると、現在、習慣的に喫煙している人の割合は全体の18.3%、男性は30.2%、女性は8.2%でした。年代で見ると、30代が最も多く、40代、50代と少なくなっています。喫煙者はこの10年間で見ると、減少傾向です。
受動喫煙の場所は、「飲食店」の42.2%が最も多く、次いで「遊技場」「職場」「路上」と続きました。いずれも3割を超えています。
近年は嫌煙家が増え、その希望に応えるように、タバコを吸える場所も減ってきています。喫煙者には少し肩身の狭い環境ですね。
最近では煙が少ない電子タバコが人気を博していますが、価格が比較的高いだけに、依然として紙タバコを愛用している人も目にします。
参考URL:厚生労働省「平成28年「国民健康・栄養調査」の結果」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf
隣人のタバコの臭いに迷惑していたり、それによる体調不良がひどい場合、慰謝料をもらうことはできるのでしょうか。東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。
受動喫煙に対する意識の高まりもあり、最近、マンションのベランダなどの共用部分で喫煙することが問題視される事例が増えています。
各マンションの管理規約にもよるのでしょうが、区分所有権が設定された一般的な分譲マンションでもベランダは共用部分とされていることが多く、共用部分での喫煙を禁止している規約も多いと思われます。
隣家や下階の住民がベランダで喫煙する臭いに迷惑をした場合、喫煙者は、管理規約に違反していることは明白です。ただ、管理規約に違反して注意を受けたからといって、直ちに、慰謝料の問題に発展することは少ないと思われます。
ただ、何度も注意をしたにもかかわらず、継続的に喫煙が繰り返されるような場合には、慰謝料請求の対象となることもあるでしょう。
実際に、マンションの部屋の真下の居住者が、ベランダで喫煙を継続していたことにより、居室内にタバコの煙が流れ込み、体調を悪化させ、精神的肉体的損害を受けたとして訴えたケースで5万円の慰謝料の支払いを命じた裁判例(名古屋地裁H24年12月13日判決)もあります。
この裁判例は、特に規約等で喫煙を禁止しているマンションではなかったにもかかわらず、管理組合からの回覧や掲示によりベランダでの喫煙をやめるように注意を受けていたことを根拠として、喫煙者に対して「他者への配慮義務」があることを確認し、また、被害を受けた側に対しても「ある程度は受任すべき義務」があることを指摘した上で、上記の結論に至りました。
隣人のタバコを理由にして慰謝料を請求することは簡単ではない
残念ながら、現状では隣人のタバコに迷惑していても、それだけでは慰謝料を請求することは簡単ではないことが分かりました。
当然のことかもしれませんが、まずは、管理組合を通じて、または自分自身で苦情を申し出るなどして喫煙者の対応を迫り、それでも改善されない場合は、弁護士に相談して金銭的な解決を図る必要がありそうですね。
タバコの煙は特に小さな子供の成長に悪影響を与えますし、ぜんそくのような症状が出る人、臭いによって具合が悪くなる人もいます。
ベランダでタバコを吸う人は、自分の家族に気を遣ってベランダに出ていることもあるかもしれません。家族を気遣うように、他人に対しても思いやりを持ってほしいものですね。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応