更新日: 2022.10.09 その他
自分の資産を把握していない人はどれくらいいる? 把握できていない資産があるリスクとは?
しかし、自分の資産を把握できていないことは、大きなリスクをはらんでいます。将来のライフプランを設計できないばかりか、効率的な資産運用もできません。さらに、万一の際の相続リスクまで抱え込んでいるのです。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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実はこんなにあった「もやもや資産」
例えば、内容の把握が不十分な保険契約、固定資産税を払い続けている遊休不動産(企業活動に使用されていないことが多い不動産)、利用せずに会費を払い続けているゴルフ会員権やリゾート会員権は、むしろ負の資産になっている可能性もあります。
株式会社かんぽ生命保険が2022年8月に発表した「資産の把握状況に関する調査」(調査対象:全国の20~70代の男女1329人)によると、資産の把握状況に関して自信の無い人が全体の7割に達し、こうした、内容を正確に把握できていない「もやもや資産」は一世帯あたり1000万円以上、国内総額は600兆円にものぼると推定されます。
比較対象として、日本の2022年度予算の一般会計歳出は107.6兆円であるため、600兆円という額がいかに大きいか分かるのではないでしょうか。
日本にはこれだけの規模の資産が、もやもやのまま眠っているのです。
企業にたとえるとROEが低い状態
日本では多くの企業が設備投資に消極的で、自己資本を社内に貯め込んでいるため、生産性が向上しないと批判されてきました。
これを受けて、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているかを表すROE(Return On Equity)という財務指標が、投資家から重視されるようになりました。これを個人にあてはめるとどうでしょうか?
把握できていない多額の資産を抱えているということは、企業に例えると、ROEが低い状態であるといえます。これでは投資家から高い評価を得られません。
不要な資産を処分し現金化すれば、無駄な住宅ローンを借りる必要はなかった可能性があります。この現金をうまく運用できれば、年間数%の利回りで運用できたかも知れません。
「内容を正確に把握できていない資産」が現金という形で存在すれば、将来のライフプランは大きく変わるはずです。こうした把握できていない資産の存在は、効率的な資産の活用ができていないことの顕(あらわ)れでもあります。
「把握できていない資産」ほどこわい、争族リスク
内容を把握できていない資産のリスクは、相続発生時に顕在化する可能性が高いといえるでしょう。
法人オーナーであれば自社株、地主であれば不動産が、把握できていない資産にあてはまる可能性があります。相続発生時に、相続財産としての評価と遺産分割が問題となります。
法人オーナーの場合は、相続財産の大半が自社株というケースが多く、非上場の自社株は、想像以上に高い評価額となる場合があります。現金化が困難な場合は、相続税の納税に支障をきたす可能性があります。また、地主の場合、土地を売却しなければ相続税を納税できないというケースもあります。
さらに、遺産分割が紛争に発展することもあります。
自社株は経営権の問題に直結し、相続で自社株が分散すれば、会社の経営が不安定になるリスクも懸念されるでしょう。不動産を分割相続すれば、売却や活用が困難になる可能性があります。遺留分の問題をクリアするために、多くの法人オーナーや地主が頭を痛めています。
健康なうちに「もやもや」の解消を
内容を正確に把握できていない資産を、把握しないままにしておくことは、さまざまなリスクがあります。
もしもあなた自身が認知症などで意思能力を失ってしまったら、法定後見制度の対象となり、思うような処分ができなくなってしまうでしょう。
内容を把握できていない資産の存在は、すぐに生活に影響を及ぼすことはありません。だからこそ放置されがちなのですが、これは地雷を放置しているような危険な状態なのです。1日でも早く資産内容を正確に把握し、リスクを取り除くことが大切です。
出典
財務省 1 予算はどのような分野に使われているのか
株式会社かんぽ生命保険 資産の把握状況に関する調査(2022年)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部