更新日: 2019.08.07 その他
地方自治体で広まる奨学金の返済を支援する制度に注目!
この数年は企業側の採用意欲が感じられる場面が増えたものの、これまで景況不安で高い失業率が続く中、高卒生の正規雇用での就職は非常に難しい状況でした。
そのため、子どもの教育費の捻出が厳しい世帯でも、奨学金を利用して、専門学校や大学等の高等教育機関に進学させる傾向が見られました。
さらに、右肩上がりで高騰する教育費が、デフレ経済で給与所得が上がらない家計を追い詰めたことが、奨学金受給者の増加につながりました。
このような背景から、就職活動をする多くの学生にとって、奨学金を返還しつつ安定した生活が見込める年収を保証できる企業かどうかが、就職先を選択する際に外せない条件になっています。
この状況を逆手に取り、奨学金の返還支援制度や奨学生推薦制度を設けて、地方創生へ取り組む地方自治体が増えています。
(※1)日本学生支援機構学生生活調査(平成26年度)より
執筆者:尾上好美(おうえ よしみ)
アルファプランナーズ代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP(R)認定者
2級キャリア・コンサルティング技能士
大学卒業後、IT関連企業で、技術支援、マーケティング職等の業務に約12年間従事した後、子育てを経て、CFP®として独立。現在、ファイナンシャルプランナーとキャリアコンサルタントを兼業し、仕事(キャリア)と資産運用に関する相談業務、講師、執筆を行っている。住宅相談、教育資金に関する相談、リタイアメントプラン、相続など、子育て世代から中高年世代からの個人相談に数多く対応。「後悔のない選択ができた」と感じてもらえるような支援やサービスの提供を志している。
奨学金返還支援制度とは?若者就業者を呼び寄せ、地域活性化
日本学生支援機構や、その他の団体の奨学金(貸与型)の受給者を対象に、各都道府県等において該当する都道府県内への就職・定住等を条件にした返還支援制度が設けられています。
創設する地域としては、地元の雇用を創出し地域経済を活性化したいという狙いがあるものの、奨学金返還という重圧をかかえる大学生等にとっては、奨学金返還分を自治体が肩代わりしてくれるのですから、その地域で働くことへのモチベーションと安心感を得られるわけです。
その条件は自治体によって異なり、対象地域内の就業以外に、特定の専門分野や産業などに限定する条件を設けている場合があります。
<奨学金返済制度一覧>
募集期間なども自治体によって異なりますので、該当する都道府県等へ直接問い合わせてみてください。
奨学生推進制度とは? 奨学金を借りる時から支援
さらに、将来的な返還支援対象者として、日本学生支援機構の第一種奨学金(無利子貸与)に優先的に採用される「地方創生枠」が、平成28年度より創設されています。
この地方創生枠奨学金とこれまでの奨学金との違いは、各地方自治体に置かれる「基金設置団体」(以降、基金)が定める要件により、まず将来の返還支援対象者として選考される点です。
基金によって選考基準は異なりますが、卒業後に地元企業に就職することを条件として、奨学金返還の全額もしくは一部を補填する支援を前提で、基金が地方創生枠推薦者として決定します。
この奨学生推進制度によって、推薦者が日本学生支援機構による貸与基準を該当すると、優先的に奨学金(無利子貸与)が受給されます。
卒業後は、条件を満たすことで基金から支援を受けられるので、奨学金を実質的に返還する必要がなくなり、給付型奨学金を受ける場合と同等の効果を得られるという仕組みです。
もちろん、卒業後に条件を満たすことができなければ、奨学金の返還支援は受けられないので、この制度の利用を検討する際には、制度についてよく理解しておきましょう。
日本学生支援機構では、奨学金の返還支援や奨学生推進制度について紹介しているので、こちらを参考にしてください。