更新日: 2019.01.10 その他
約120年ぶりの大改正!2020年4月に施行される民法改正法では何が変わるの?自分の生活にはどういう影響があるの?
今後、施行までの間にさまざまな形で話題とされてくると思いますが、改正内容の中でも日常生活により身近な内容の一部をご紹介したいと思います。
Text:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
賃貸アパートの保証人にも保証額に上限
現在の民法では、借金などの金銭の債務(貸金債務)に対しては、保証した個人保証人を保護することを目的として保証額の上限(極度額)の定めのない根保証契約は無効としています。
また、保証人が責任を負う期間(元本確定期日)は原則3年(最長5年)に制限しており、破産・死亡などの特別事情による保証の終了(元本確定事由)の規定が定められています。
その一方で、賃貸アパートの借主の落ち度で火災が発生し、焼失した場合の損害額が保証人に請求されるケースや借主の相続人が賃料を支払わないケースなど、保証人が想定しなかった多額の保証債務を請求される事例が多数発生していました。
そのため、今回の民法改正法では、その保護の対象をさらに拡大し、貸金等債務以外の根保証(例えば、賃貸アパートの保証人や継続的な売買取引の保証人など)についても対象としています。
これによって、保証額の上限については全ての根保証契約に義務付けられることとなり、定めのない契約は無効となります。
また、借主の死亡や保証人の破産・死亡などの特別な事情による根保証契約の打ち切りは、全ての債務に適用となります。ただし、借主の破産等があっても、賃貸借の根保証は打ち切りとならないことについては注意が必要です。
保証人が責任を負う期間については、賃貸借等の根保証には適用されませんでした。これは、仮に保証期間を5年とした場合に、それ以降の賃貸借契約で保証人がいないケースとなることを防ぐための措置です。
第三者保証には公証人による事前の意思確認が必要
中小企業向けの事業用融資の保証には、主に「経営者保証」と「第三者保証」の2つがあります。
経営者として法人の個人保証をする「経営者保証」についてはさておき、「第三者保証人」については、個人的なつながりから気軽に引き受けてしまったり、企業の状況等の保証リスクを十分に理解しないまま保証人となるケースも多く、突然、想定もしなかった多額の保証債務の履行を請求されたことで、保証人が生活破綻に追い込まれる事例も多数発生しました。
そのため、民法改正法では、事業用融資の「第三者保証」に関して「公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ、効力を生じない」との規定が新設されました。
さらに、公正証書の作成については代理人による嘱託は認められず、必ず保証人本人が出頭しなければならないこととされました。
保証人への情報提供を義務化
現状、保証人になるに当たって、主債務者の財産状況などの保証リスクを十分に把握していない事例が少なくありません。また、主債務者が自らの財産状況等を保証人に説明する義務も負っていないのが現状です。
民法改正法では、「主債務者による保証人への情報提供義務」の規定を新設し、情報提供義務違反の場合に、保証人は保証契約を取り消すことができると規定しています。
さらに、保証人の負担増が予見される遅延損害金などが発生した場合に、債権者が保証人に対して2カ月以内に通知する義務や債務の履行状況などについて、主債務者の同意がなくても保証人から債権者に情報提供を求めることができる規定などが新たに定められます。
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー,住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士