更新日: 2020.05.25 その他
ロングステイするならマレーシア? 海外移住者に与えられたチャンスとは
第一回目は金利と課税の基礎的な状況のお話および、隠れたリスクについてのお話でした。
第二話の今回は、その逆の『隠れたチャンス』についてのお話をしてみようと思います。
執筆者:田中ゆき恵(たなか ゆきえ)
イギリスCII AFP
アメリカパブリックアイビー、The University of Michigan, Ann Arborを卒業後、マレーシアを本社にもつイギリス系IFA、Infinity Financial SolutionsにてシニアコンサルタントとしてFP歴10年以上のキャリアを持つ。バンコク、ジャカルタ、クアラルンプールを中心に、海外居住者のために、財テクゲームを取り入れたお金セミナーを実施。海外居住中のへそくり術、教育資金のため方、老後資金準備法、相続対策などを得意としており、わかりやすさと包括的なアドバイスをモットーに活動中。各地の日本人向けフリーペーパーなどでも執筆協力している。
https://www.facebook.com/InfinitySolutionsJapaneseService/
海外居住者に与えられたチャンスとは?
海外居住にあたり、『マイナンバーを返却してきてしまった』『マイナンバーを取得していない』などで、日本の貯蓄プランや投資関連のアクティビティが制限されている方も多い昨今。
『海外居住者はデメリットばかり』と諦めていませんか?そんな方は、実は日本居住の方がうらやむようなチャンスを逃しているかもしれません。
その国の居住者が居住地で受けるサービスを『オンショアサービス』といいます。
特にマイナンバー導入後の日本では、マイナンバーの提示がないと新しい保険プランの加入や、証券取引口座の開設、クレジットカードの作成、銀行口座の解説、海外への送金など、ほとんどの金融サービスが受けられない状況となっています。
それに伴い発生する不便を取り除くのが『オフショアサービス』で、海外の住所を証明することで、保険プラン、証券取引プラン、学資積立や年金積立など、日本では入れないプランへの加入が可能になります。
実はマレーシアも『ラブアン島』という、海外居住者に有利な条件をオファーする『国際金融センター』という位置づけになっています。
『オフショアサービス』の拠点になる場所で、アジアでの代表格は『香港』や『シンガポール』など、日本でもご存知の方も多いのではないでしょうか。
共同名義とは?
オフショアサービスを提供している銀行では、一つの銀行口座を夫婦二人で共有する『共同名義』のサービスがあります。銀行によっては6名まで一つの口座をシェアすることができます。
例えば、マレーシアを生活拠点としているご家庭で、お父さんは南米に単身赴任、お姉ちゃんは海外就職で大西洋地域、お兄ちゃんはヨーロッパ留学、末っ子ちゃんはお母さんとマレーシアでお留守番、おばあちゃまは日本というばらばら居住地のご家庭でも、6人フルで名義になっていただけるのです。
共同名義は、特にマレーシア、タイ、インドネシアなどの海外居住者および、そこに居住している家族を持つ家族にとっては、『プロベート』という制度のためとても重要です。
名義人に何かあると銀行にある『個人の資産』は『故人の遺産』となります。故人に海外の口座があった場合、遺族は故人の生前居住地に出向いて、『プロベート(検認手続き)』という、現地出身者とは異なるステップを踏むことになります。
プロベートでは多くの書類提出を求められ、相続人は故人の生前居住地の『裁判所』に何度も足を運んで手続きをすることになります。ただでさえ身内の死に直面している時期の作業は、遺族にとってはストレスになりうることは、安易に想像できます。
それを避けるために、マレーシアでは『夫婦共同名義』が許されています。銀行口座をご夫婦お二人の名義で開設し、『どちらかのサインのみで銀行手続きを完了できる設定』にしておくと、いざという時の面倒がかなり軽減できることになります。
しかし、仮に夫婦間共同名義は万全だったとしても、お子さまがいるご家庭や、日本に家族や親戚が残っているご家族だとどうでしょう?
お父さんだけマレーシアにいるけれども、家族は日本にいるパターンなどがそれにあたります。日本に残された家族や親族が、マレーシアまで渡航して、裁判所に通う手続きを担うことになってしまいます。
この、世代間相続のリスクや立地的リスクを円滑に解決してくれそうなのが、国際金融センターを拠点とする銀行の非居住者口座。
国際金融センターの金融サービスは、海外居住者フレンドリーなことが特徴で、第一話でもお話ししたように、銀行によっては口座名義を6名まで設置することができます。
国際金融センターの金融機関は、代理店を窓口にすることでサービスの充実化を図っていますから、ご利用をご希望の場合は、オフショアサービス代理店へのお問い合わせが必要です。
ストラクチャードノートとは?
共同名義に加えて、国際センターの銀行サービスの中でオファーがある、『ストラクチャードノート』についても少しお話をしましょう。
『ストラクチャードノート』とは、いわゆる『変動型定期プラン』です。為替リスクさえクリアできる時期であれば、第一話でお話しした『インフレリスク』を分散する手段として、リンギット建のプランにとらわれずとも、米ドルやポンド、豪ドルなどの先進国通貨に分散しながら、普通の定期よりも積極的な資金活用法として有効です。
最終リターンは『変動型』だけに変動しますが、元本保証がついているのが特徴です。
2017年5月に満期を迎えた、筆者も利用したストラクチャードノートプランは、5年間の定期で、最終の利息は41%も戻ってきました。
しかも非課税。筆者はタイに年間180日以上居住しているので、タイで確定申告をする義務がありますが、タイで課税対象の資金は、タイに持ち込まれた資金のみなので、『国際金融センター』に置きっ放しの資金に関しては非課税のままです。
同様に、マレーシアも182日以上居住している方は確定申告の義務が発生しますが、マレーシア以外の国を源泉とする資金はマレーシアに持ち込まなければ課税対象外なのです。
仮に3%の利息で5年間のプランを利用していた場合と比較すれば、3%だとざっくり15%のリターンですから、為替リスクがないことを想定すれば、普通の銀行に入れるよりも26%も高い利息で還ってきたことになります。
このように、元本保証の中期投資案件が定期的にオファーされるオフショアサービスは、マイナンバーがなくても利用可能で、1万5000ドルから利用可能です。
お子さまが10歳を超えて学資保険などではリターンを望めないご家庭にも、50歳を超えて養老保険をスタートするにもパッとしないという微妙な年齢層のご家庭にも有効打を打てるチャンスになりえる方法です。
しかし、一括プランは為替のタイミングもあります。そこで、タイミングを選ばないオフショア積立のお話をいたします。
オフショア積立プランとは?
国際金融センターを拠点とする保険会社(多くは、マン島やガンジー島などのイギリス領)が運営する積立プランは、海外居住者が『学資保険』や『年金積立』などを目的として、今ある資金を将来必要になる時のために『よけておく』ことを可能にするプランです。積立は『先取り貯蓄』という言い方もしますね。
日本の積立サービスだと、銀行の振替サービスを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。『普通預金口座』から『積立口座』に『振り替える』サービスです。
通帳も、普通預金通帳と、積立口座の通帳を渡してもらえるアレです。将来のために資金をよけておく手段として、ご利用経験のある方も多いのではないでしょうか?
オフショア保険会社の積立取引口座を利用する場合、この『振替』を『クレジットカード』を使って行います。
『月々500ドルを10年間積み立てます』という契約を保険会社と交わし、後は保険会社が『保険料』として、登録されているクレジットカードから積立額を毎月引き落としていきます。日本のクレジットカードを使えば、日本に冬眠している資金を効率よく海外移動でき、マレーシアのカードを使えば、途上国通貨のリンギットを効率よく毎月米ドルやポンドなどの先進国通貨に変換しながら積立をすることができるのです。
名義人に何かの時は、『受取人登録されている人物』が、口座残高の101%を受け取る設定が可能で、口座資金は世界中で受取可能。
日本のプランは日本国内のみ、マレーシアのプランだとマレーシア国内のみでしか受け取れないことに対して、何かの時もご家族は安心です。
例えば、スタートしてから3年目で『やっぱり長女の入学金が急に必要になった』というような場合でも、『一部引き落とし可能額』以内であれば、プランを継続しながら資金を一部引き落とすこともできて、ペナルティーはなし。
運用は『確定拠出年金(日本型401K)』のように自分で選ぶことも、プロに任せることもできます。
積立期間が終了した後は、積立期間を延ばすことも、寝かし運用を続けることも、資金を全額受け取ることも、一部だけ受け取って運用することもできる柔軟性の高いものが多いことも特徴です。
積立は、為替が高い時も安い時も買い増しを続けるプランなので、外貨の購入コストを平均化できるドルコスト平均法のメリットがあるので、スタート時の為替が勝負の一括プランよりも、タイミングを選ばずスタートできます。
【まとめ】
第一話から、マレーシアで海外居住者となる上での、お金にまつわる注意点やチャンスを、いろいろとつづってきました。
『マイナンバーがない』というだけで、海外での貯蓄や運用チャンスを諦めていた皆さん。ここでご紹介したのはほんの一部の例にすぎません。また、マレーシア居住者だけでなく、タイ、ベトナム、インドネシア、カンボジアなど、国際金融センターは『外国人』の味方です。
海外居住者だからこそできるお金対策は、他にもたくさんあります。
『知らないだけ』で損するよりも、『知ること』を武器に、利用できる限りの日本国内サービスと、『外国人』ならではの色々な海外でのお金の悩みの解決策を見出してくれるオフショアサービスのいいとこ取りで、将来のための種まき時期を有効活用してください。
Text:田中 ゆき恵(たなか ゆきえ)
イギリスCII AFP