更新日: 2019.01.10 その他

貧困は絶対的に“自分のせい”なのか

貧困は絶対的に“自分のせい”なのか
ある落語家がツイッターで「世界中が憧れるこの日本で『貧困問題』などを曰(のたま)う方々はよほど強欲か、世の中にウケたいだけ。

この国では、どうしたって生きていける。働けないなら生活保護もある。わが貧困を政府のせいにしている暇があるなら、どうかまともな一歩を踏み出してほしい。

この国での貧困は絶対的に『自分のせい』なのだ」と発言し、物議をかもしました。

日本で問題になっている貧困問題、特に子どもの貧困問題とは何か一緒に考えましょう。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

貧困には2つの貧困がある

何か議論をするときに、言葉の定義を明確にしないと議論が噛み合いません。貧困には、絶対的貧困と相対的貧困があります。
 
・絶対的貧困
人間としての最低限の生存条件を欠くような貧困のことを意味します。例えば、住む場所がない、食べ物がない、服や履き物に事欠く、などです。現在、世界銀行の定義では、1日1.90ドル未満で生活している人を指します。
 
・相対的貧困
相対的貧困は、人がその社会の中で生活するために、通常得られるものが得られない、できることができない状況のことを指します。
 
例えば、スマートフォン(スマホ)。「子どもにスマホはぜいたくだ」「子どもがスマホを持っているなら貧困とはいえない」と感じる人は多いのではないでしょうか。
 
しかし、朝から晩まで働いている親との連絡手段として、スマホはライフラインの役割を果たしていますし、また、何よりクラスの中で1人だけスマホを持っていないというのは、その子に非常な孤立感、疎外感を持たせる原因になります。
 
大学受験などではインターネット出願が当たり前になっているので、スマホなどのインターネット環境がないと、進学にも影響がでてきます。こう考えると、スマホはぜいたく品ではなく必需品といえます。
 
高校進学はどうでしょうか。
 
義務教育ではないので、お金がないなら行く必要がない、高校進学はぜいたくだと考える人もいます。
 
しかし、今の日本では、100%近い生徒が高校に進学していることを考えると、高校進学・卒業は最低限の学歴といえます。就職も、中卒では圧倒的に不利です。こう考えると、高校進学はぜいたくとはいえません。
 
このように、普通に持てるもの、経験できることを奪われた状態にある子どもたちは、現在の日本においては貧困であると考えるのが相対的貧困です。
 
今、日本で問題になっている貧困は、絶対的貧困ではなく相対的貧困である点を理解しましょう。
 

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貧困かどうかの基準

日本では、世帯所得の中央値の50%以下が貧困(相対的貧困)と定義されています。
 
家庭の年収で見ると、単身世帯では122万円以下、2人世帯では173万円以下、3人世帯では211万円以下、4人世帯だと244万円以下となります。月収に換算すると、3人世帯では、約17万6千円を下回ると貧困といえます。
 
現在、子どもの貧困率は13.9%、7人に1人が貧困状態にあります。
 

見えない貧困

貧困状態にあっても、新しい衣服などは買わない、制服などはもらう、エアコンは使わない、日用品は100均で買う、お金がかかる部活動はあきらめるなど、節約しながら自立した生活を送っている家庭は、外見上は貧困には見えません。
 
また、収入が多くて貧困といえなくても、高校生のアルバイトが家計を支えている場合は、貧困が覆い隠されてしまいます。
 
貧困家庭の高校生は、アルバイトをしないと生活できない現実があります。
 
授業に支障が出ても、ブラックバイトであっても、簡単にアルバイトを辞めることはできないのです。
 
友達と遊園地やカラオケに行くなどのお金も、アルバイトで稼いでいます。高校生にとっては、友達との関係を良好に維持できるかは高校生活を送るうえで大切なので、カラオケなどに誘われたときに、お金がないから行けないと言いづらい状態にあります。
 

学校の先生に期待

貧困家庭の子どもたちに、多くの時間接しているのは学校の先生です。しかし、先に説明したように貧困は外見からは見えにくく、アンテナを張っていないと貧困家庭の子どもに気づきません。
 
不登校、学力低下、授業中に寝ている、集金が滞る、保護者が参観日に来ないなどのサインがあったら、貧困がこれらの背景にあるのではないかと、想像力を働かせていただきたいと思います。
 
学校教育費を支援する制度として、義務教育であれば就学援助、高校であれば就学支援金、奨学給付金などがありますが、貧困家庭の保護者のなかにはこれらの制度を知らない人もいるので、このことを知らせるだけでも大きな支援となります。
 
特に小学生時の教育が大切です。貧困家庭の保護者はダブルワークも珍しくありませんので、子どもの勉強を見てあげる余裕がありません。塾に行かせる経済的な余裕もありません。
 
義務教育では、落第も留年もないので、分数や九九ができなくても卒業できます。勉強がわからない状況では、高校への進学の意欲もわかないでしょうし、高校に進学したとしても中退することになるでしょう。
 
無料で学習支援をする団体も増えていますので、このような情報も保護に知らせてあげるとよいでしょう。
 
最低限、高校卒業は貧困家庭から脱け出すために大切です。また、将来の選択肢を増やすためにも必要です。教育は積み重ねが大切です。特に、小学校で学力較差が広がらないように、先生に対策をしっかり立てていただきたいと思います。
 

子どもの貧困は社会全体で解決すべき問題

子どもの貧困は、社会全体で支援する必要があります。教育機会に恵まれない貧困家庭の子どもは、希望する職に就けず、低収入に甘んじ、生活水準も低くなります。その子どもにも貧困が引き継がれる可能性があります。
 
貧困の子どもは自己肯定感が低いといわれています。自己肯定感が低い若者が増えるのは国力にも影響するでしょう。また、貧困の若者は結婚率も低く少子化にも影響します。
 
勉学する能力や意欲があるにも関わらず、経済的な理由で大学進学ができないことは、国にとっても大きな損失です。このように、子どもの貧困問題は、個人で解決できるものではなく、社会全体で解決すべき問題といえます。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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