更新日: 2019.09.02 その他
「請負契約」と「雇用契約」の4つの違い 名前だけでは分からないその内容とは
どうせ同じ会社で働くのであれば、請負も雇用も同じようなものだろうと考えてしまいませんか?
もし、そう考えてしまうのであれば、それは非常に危険な考えです。
なぜなら、請負と雇用では、その内容が大きく異なっているからです。
そこで、今回は両者の違いの中でも特に重要な4つの違いについてご紹介していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
法律による保護の範囲が異なる
雇用契約を結んで就労する場合には、雇用主(会社)と労働者との間に指揮監督権などが生じ、労働関係の法令における「労働者」に該当します。そのため、労働関係の法令による保護を受けて就労することができます。
それに対し、請負契約では注文者(会社)と請負人(労働者)との間に指揮監督権などが発生しません。それにより、労働関係の法令における「労働者」に該当せず、労働関係の法令による保護を受けることができなくなります。
求められる要件が異なる
雇用契約は、一方が労働に従事することを約し、他方がそれに対し報酬を支払うと約することによって成立します。つまり、雇用契約では労働に従事することが求められています。
それに対し、請負契約では、請負人が仕事の完成を約し、注文者がその結果について報酬を支払うと約することで成立します。つまり、請負契約において求められているのは労働への従事ではなく、仕事の完成です。
それらを言い換えて比較するとこうなります。
雇用契約を結んでいるのであれば、仕事が完成していなくても給料がきちんと支払われます。しかし、請負契約ではどれだけ働いても、仕事が完成していなければ報酬は支払われない、ということとなります。
責任の重さが異なる
雇用契約であれば、通常発生するであろうと予想される範囲の損害は雇用主が負担します。雇用契約では、雇用主の指揮命令に基づき業務を行う以上当然だといえます。
労働者は、悪意や重大な過失があった場合など一定の自由に該当する場合に限り、損害を負担します。
ところが、請負契約においては、仕事の目的物に瑕疵(かし)(不具合や失敗など)があるとき、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めてその瑕疵(かし)の修補を請求できると定められています。
そして、その修補に代えて、または修補とともに損害賠償の請求をすることができるとも定められています。
雇用契約であれば、上司からのお説教や、始末書で済まされていた失敗であっても、請負契約であったばかりに、何百万単位の賠償を負担することとなってしまう可能性も十分にありえます。
契約解除の要件が異なる
雇用契約について、雇用主の都合で契約を解除する場合には、客観的かつ合理的な理由や、社会通念上相当と認められることが必要であり、理由もなく契約を解除することはできないようになっています。
一方で請負契約においては、請負人が仕事を完成しない間であれば、いつでも損害賠償を請求し、契約の解除をすることができると定められています。
つまり、雇用契約を結んでいるのであれば、前触れもなく契約が解除されてしまうことはほとんどありません。逆に、請負契約では、仕事が完成しない限り、いつ契約が解除されるのかわからない状態で仕事を進めることになります。
請負契約と雇用契約の違いは名前だけではない
請負契約と雇用契約の違いは名前だけでなく、その内容も大きく異なります。契約の締結前には、自身の契約形態が請負なのか、それとも雇用なのかを明確に理解したうえで、契約を結ぶようにしてください。
また、結んだ契約が請負なのか、それとも雇用なのかという判断は、名称だけでなく、契約の内容などを総合して判断します。
自身の契約について、判断が難しいと感じたときは、必ず専門家へ相談するようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー