更新日: 2019.07.04 その他
「ひも状態の恋人」と突然の別れ 今まで貢いだお金は請求したら戻ってくるのか
しかし、結婚を目前に同棲したにも関わらず、破局してしまった場合、困るのはお金の問題です。
今回は同棲の末、破局したM子さんとD助さんのカップルを参考にみてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
看護師のM子さん。恋人のD助さんは驚くべき「ひも体質」
M子さん(30歳)は都内の病院に勤める看護師。恋人のD助さん(34歳)とは街コンで知り合いました。D助さんの長身で端正なルックスと朗らかな性格に惹かれ、M子さんの方から交際を申し込みました。
D助さんは会社員。M子さんと同程度の収入がありましたが、D助さんは驚くべき「ひも体質」です。3回目のデートから財布を持ってこなくなり、デート中の支払いはすべてM子さんがするようになりました。
しかし、M子さんはD助さんに全く嫌な印象を持たなかったといいます。いつもにこにことしていて、自分を楽しませてくれるD助さんにますます惹かれていきました。
その後、2人は結婚を前提に同棲を始めることにしました。2人で決めた新居でしたが、ここでも気が付けばほとんどの費用をM子さんが負担していました。月12万円の家賃や光熱費はM子さんが全額支払い、食費も外出の際、たまにD助さんが支払う程度でした。
D助さんの隠された事実が明るみに!その時M子さんは?
同棲を始めて3カ月たったある日、驚くべき事実が明らかになりました。
D助さんにはパチンコで作った800万円近い借金があったのです。M子さんはそのことを街コンで知り合った友人を介して知ることになりました。D助さんに確認すると、事実とのことです。
そうなると話が変わります。M子さんはD助さんがギャンブルでそれだけの借金を作ったということと、事実を隠して婚約を申し込んだということに不安を感じました。
別れを決めたM子さん。D助さんに今までのお金を支払ってもらえる?
結局、M子さんは別れを決意しました。D助さんの「M子ちゃんが無理だっていうならしょうがないね」などというひとごとのような口ぶりにも腹が立ちました。
M子さんは、お金に執着するわけではありませんが、戒めとしてD助さんに今までのお金を支払ってほしいと考えています。
M子さんが請求した場合、D助さんはそれまで支払ってもらったお金を支払わなくてはいけないのでしょうか?
同棲を解消した場合、それまでかかったお金は請求できるのでしょうか。東京桜橋法律事務所弁護士の池田理明先生にお伺いしました。
上記のようなケースだと、請求は難しいと思います。
単なる恋人どうしの同棲の場合、お互いに納得して生活費を負担し合っている場合が多いと思われます。内縁関係と認められる程度の同棲であれば別論ですが、恋人どうしの同棲の場合、恋人のために代わって支払う都度、お互いに対する贈与としてみなされることがほとんどです。そのため、返還を求める根拠がありません。
もちろん、事実上、2人の合意で生活費を精算すること自体が禁止されているわけではありません。返還を求める根拠がなくても、話し合いで解決することが望ましいですね。
話し合いで解決できず、それでもどうしても請求したい場合は、事実関係を綿密に分析した上で、第三者弁済や事務管理などの民法上の規定に当てはめて、請求の根拠を検討する必要があるでしょう。
基本的に贈与の気持ちが後で変わったという事例の場合、それを取り返すことはできません。男性が女性にブランドものや車などを貢いだ後で、けんか別れしたから貢いだ分を返してほしいという相談もありますが、基本的には贈与と考えられますので、返還請求することはできません。
これと異なり、婚約関係に入った当事者間で、最近では、結納の形で指輪や腕時計を交換することが多いと聞きます。この場合、後に結婚が破断となったら、お互いにプレゼントを返還するべき場合が考えられます(大審院T6・2・28、大阪地裁S43・1・29)。
このような場合、破談に至った経緯にもよりますので、弁護士に相談することをお勧めします。
同棲の場合は、2人の法律的な地位はとても不安定な面があります。もし金銭的なことでもめ事にしたくなければ、せめてお互いの負担額が折半になるように、十分に話し合っておくべきだと思います。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応。