業務時間外の会社のイベントが「強制参加」、断っても問題ない?
配信日: 2018.03.09 更新日: 2019.09.18
女性の中には、バレンタインが来るたびに職場でも準備をしなくてはならず、うんざり…という人もいるかもしれません。
会社にもよりますが、職場において慰労や交流の意図でさまざまなイベントが行われることがあります。
しかし、みなさん家庭の事情や、金銭的な事情で参加したくないなあ…と思うこともあるでしょう。
もし、会社のイベントで強制参加と言われたら、どうすればいいのでしょうか。
通常の業務時間外のイベントの場合、請求すれば残業代はもらえるのでしょうか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
目次
残業時間の定義とは?手待時間は労働時間に入る?
残業代をもらうのは、残業時間に労働した場合です。
残業時間の中には、時間外労働時間と所定外労働時間があり、どちらに該当するかによって、もらえる残業代が変わってきます。このことを確認するために、「法定労働時間」と「所定労働時間」について確認しておきましょう。
「法定労働時間」とは、国で決められた労働時間の制限のことです。「1日8時間、1週間40時間」と決められています。この時間を超えた分が時間外労働時間になります。
「所定労働時間」は、会社の就業規則などで設定する1日の所定の労働時間です。所定労働時間は法定労働時間内に収まらなくてはいけません。この時間を超えた分が所定外労働時間になります。
そして、法定労働時間を超えた時間外労働時間があれば、通常であれば25%増しの時給相当の給料がもらえることになります。
また、法定労働時間を超えていなくても、所定労働時間を超えた所定外労働時間があれば、時給相当の給料がもらえることになります。
前述のとおり、ひとくちに残業時間と言っても、所定外労働時間の範囲で収まるのか、それを超えて時間外労働時間に至るのかによって、残業代が変わってくる。ここが、難しいところですね。
また、どこからどこまでが「労働時間」に入るのかという解釈も問題になることがあります。実のところ労働基準法において労働時間の定義は明文化されていません。
これまでの裁判例の蓄積などから解釈し、一般的には「労働に従事している時間だけでなく、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と考えられています。
また、平成27年12月に発生した電通事件を受けて、厚生労働省は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)を策定し、例示を挙げながら、労働時間の考え方を示しています。
これらの基準から考えると、作業と作業の間、作業をせずに待機する時間も労働時間とみなされます。同じく、休憩時間中にも来客対応をしなければならないなど、労働から離れることが保証されない状態で待機している時間も、労働時間に当たると解釈されています。
会社のイベントへの参加を強制する力はあるのか、業務時間外のイベントだった場合、残業代がもらえるのかなどについて、東京桜橋法律事務所弁護士の池田理明先生にお伺いしました。
会社のイベント参加は、それが強制的に義務付けられるものでなければ拒否しても問題ありません。反対に、強制的に義務付けられるものであれば、労働時間として、所定外労働時間を超えていれば残業代が発生します。
明言されていない、事実上の強制の場合は判断が難しいところです。
例えば「偉い人が来るから絶対参加!」という呼びかけがあった場合などは微妙なところですが、拒否する自由があるのであれば、強制とみなさない可能性が高いでしょう。
「なんで来ないんだ」などと上司がしつこく参加を迫る場合でも、会社が業務命令として参加を指示していなければ、労働時間とは言えません。ただ、こういった場合は、労働時間の問題ではなくて、パワハラの問題にはなり得ます。
会社の業務外イベントで新たな交流が生まれることも。たまには参加してみては?
会社の業務外イベントの参加を拒否することは、法的にまったく問題がないことが分かりました。イベントに参加したくない時も無理して参加していた人にとっては、少し気が楽になる情報ですね。
とはいえ、会社の業務外イベントは決して悪いことばかりではありません。上司や同僚と仕事中には話さないような話題が出ることでお互いをより深く知ることができますし、思わぬ人と新たな交流が生まれる可能性もあります。
家庭の事情や金銭的な事情などで参加できない場合はやむを得ませんが、「面倒だから参加したくないんだよね~」と毎回断っているならば、たまには参加してみるのもよいかもしれませんね。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応