更新日: 2019.07.08 その他
残業代の未払い、仕事を辞めずに請求することはできるのか
しかし、期待を胸に入った会社で残業代が支払われなかったら、どうしますか?
当然、見切りをつけて退職する人も多くいますが、せっかく入った会社、簡単に辞めたくはないですよね。
今回は、会社を辞めずに残業代を請求する際の注意点や、それによって嫌がらせを受けた場合の対処法をご紹介します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
弁護士/東京桜橋法律事務所
第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。
座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。
残業代が支払われないときの主な対応3つ
残業代が支払われなかったときの対応は、主に3つあります。
1.労基署に通報する
メールやFAX、手紙という手段もありますが、最も効果的なのは労基署に直接足を運んで相談することです。複数回、訪問通報することによって、企業に調査が入る可能性が高まります。
調査の際に通報者の名前は明かさないことになっていますが、中小企業だと誰が通報したか分かってしまうこともあるようなので注意しましょう。
2.労働局にあっせんの申し立てをする
労働局へ行って、そこでもらった「あっせん申請書」に必要事項を書いて提出します。その他、資料を準備して一緒に提出すると効果的です。
労働局の委員が間に立ち、会社に残業代を支払うように指導したり、問題解決に尽力します。
3.労働審判を起こす
個々の労働者と事業主との間に起きたトラブルを、裁判所において原則3回以内の期日で話し合います。
3回の期日で解決できなかった場合や、相手方が審判に対して異議申し立てをした場合は、訴訟手続に移行してしまうことも。
上記の方法は在職中に行うことができますが、実際には退職するときに請求を行うことが多いようです。
もちろん悪質な場合は退職してしまうのが一番ですが、会社を辞めずに請求したいと考える人もいますよね。そのような場合、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか。東京桜橋法律事務所弁護士の池田理明先生にお伺いしました。
在職中に未払いの残業代を請求する場合の注意点、嫌がらせ行為を受けた場合の対処法とは
請求の手続きとしては、退職する場合も辞めずに続ける場合も同じ流れです。
在職しているかしていないかで、基本的に大きな違いはありませんし、在職しながらの請求に法律的な問題はありません。
在職中に残業代を請求する場合、どうしても感情が先立ちますし、上司や社長との人間関係も悪化することが懸念されます。請求をきっかけにして、社内で悪態をついてしまうなど、角が立つような行動をすることなどは控えましょう。
現実的には、残業代請求は、会社を辞めてから訴えるケースが多いのですが、その理由は、職場での居心地が悪くなるという心理的な問題があるからです。
特に小さな会社で従業員が少ないと、社長との距離も近く、息苦しさを感じることがあるかもしれません。
また、残業代を支払わないことは決して許されることではありませんが、会社に愛着があって仕事にもやりがいを感じている人は、折り合いをつけて目をつぶっていることが少なくありません。
残業代を請求していることが社内に知れると、そういう人からも悪感情を持たれることもあります。
また、請求をきっかけに、パワハラや不当な評価などの嫌がらせ行為がなされることもあります。しかし、こういうことはあってはならないことであり、場合によっては、そのような行為自体が不法行為として慰謝料等の損害賠償の請求の対象となることもあります。
残業代請求をする際には、このようなことにも対応するため、労基署や担当の弁護士と十分に打合せをしながら進める必要があります。
おそらく、残業代の未払いに関して現実的な対処法を考えてしまう時点で、その方には会社に対する複数の不満があるのだと思います。
会社に見切りをつけた上で、辞めてから残業代を請求する傾向が強いのも、そのためと感じます。
在職中の残業代請求はリスクもあるが、正当な行為と考える
在職中に残業代を請求することは、職場での居心地が悪くなる、嫌がらせをされる可能性があるなど、リスクもあることが分かります。
しかし、池田先生もおっしゃるように、在職しながらの請求に法律的な問題はありません。当然問題があるのは残業代を支払わない職場であり、それを訴えることは正当な行為です。
もし、在職中に残業代の請求を行う際は、会社や会社の人をおとしめたりせず、同時に自分に負い目を感じたりもせず、毅然(きぜん)とした態度で臨みましょう。
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/
IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応。