更新日: 2020.05.25 その他
日韓で違うメダリストの報奨金とインセンティブ。韓国男子は必死?
一方、開催国の韓国も17個と、こちらも過去最高を記録しました。
日本では、羽生選手の2連覇、女子スピードスケートの活躍、女子カーリングが特に注目を浴びていますが、韓国では、スケルトンの金メダル、ショートトラック、女子カーリングが注目を浴びています。
女子カーリングは両国とも金メダルではありませんでしたが、「メガネ先輩」の注目度は群を抜いています。
執筆者:黄泰成(こう たいせい)
公認会計士(日本)
スターシア・グループ代表
慶応義塾大学経済学部卒業後、大手監査法人へ入社し、アトランタや韓国での駐在を経験。
2007年、日本に韓国ビジネス専門のコンサルティング会社(株式会社スターシア)を、
韓国に株式会社スターシア・コンサルティング(現)を韓国初の日本資本の会計事務所として設立。2017年にグループ会社として、韓国に税務法人スターシアを設立。
「日本の会計士として日系企業の期待を充分に汲取り、その期待を超え続けるサービスを提供する」という考えのもと、日系企業による韓国ビジネスの成功をサポートしている。
報奨金は誰からもらえるのか
さて、オリンピックのメダリストとなると、必ず話題になるのが報奨金についてです。日本の報奨金は、日本オリンピック委員会(JOC)、各競技団体、スポンサー企業からもらうという構造になっているようです。
一方、韓国の報奨金は、政府、各競技団体、スポンサー企業から受け取ります。政府から直接報奨金を受け取るという部分が日本とは異なります。
公的機関からの報奨金
まずは、公的機関(JOCおよび韓国政府)からの報奨金について比較します。日本は、金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円です。一方、韓国はそれぞれ、630万円、350万円、250万円です。
ただし、韓国は団体競技の場合は75%の水準に減額されるという特徴があります。また、指導者に対しても報奨金が与えられるというのも特徴の一つです。
例えば金メダルの場合、監督には800万円、コーチには600万円の報奨金となります。競技者本人の報奨金と同水準かそれよりも上というのは、少々意外に感じられますが、合理的といえば合理的なのかもしれません。
競技団体からの報奨金
次に、競技団体です。これは、各競技団体によって千差万別です。日本でも、スケート競技の場合は、JOCと同額の報奨金が支給される一方、カーリングは報奨金ゼロということで話題になっています。
韓国でも、カーリングは報奨金ゼロです。最も報奨金を高く設定している競技団体は大韓スキー協会で、金3000万円、銀2000万円、銅1000万円です。ソチ五輪までは該当者がいませんでしたが、今回スノーボード大回転で銀メダルを獲得した選手がいるため、初めて支給されることになりました。ちなみにこの大韓スキー協会のスポンサーはロッテグループです。
また、韓国でもスケート競技はメダルを量産する競技ですが、大韓氷上競技連盟はまだ報奨金の額を発表していません。ただし、4年前のソチ五輪のときの金額(300万円、150万円、100万円)よりは増額する計画とのことです。
スポンサー企業からの報奨金
最後に、スポンサー企業からです。これこそ、まちまちです。日本では、日本電産サンキョーが金メダル1つにつき2000万円支払うとか、ANAがファーストクラスの航空券をプレゼントするとか、全農が100俵分の米をカーリングの選手にプレゼントするとか、いろいろな話が聞こえてきます。
これは、韓国でも同様ですが、金額はあまり公表されていません。ただ、スポーツウェアメーカーのFILAが、銀メダルに対して700万円の報奨金を出すということです(個人ではなくチームに対して)。
高木選手の報奨金はチェ選手の約2倍?
このままだと、具体的にイメージできないので、例として金メダル2つとったスケート選手同士で比較しましょう。日本は高木菜那選手、韓国はチェ・ミンジョン選手。チェ選手はショートトラック1500mと3000mリレーで2冠に輝いた選手です。
高木選手:500万円x2 + 500万円x2 + 2000万円x2 = 6000万円
チェ選手:630万円x1.75 + 300万円x2 + 1080万円 = 2782.5万円
チェ選手には、スポンサー企業の協賛金がいくら入るか分からないため、計算から除外しました。また、韓国では報奨金の他に、オリンピックメダリストは国民体育振興公団から「競技力向上研究年金」をもらうことができるため、この1080万円を加算しました。
韓国では報奨金以外にインセンティブも
また、報奨金とは異なりますが、男子メダリストに対しては、徴兵免除というインセンティブが与えられます。絶頂期である20代に2年程度軍隊に入隊しなければならないというのは、スポーツ選手にとって大きな悩みですが、オリンピックメダリストになると徴兵が免除されることになっています。
男子選手にとっては報奨金よりもむしろこっちの方が大きなインセンティブになることでしょう。
ちなみに「免除」というのは俗称で、正確には、4週間の基礎訓練を受けたのちに、2年10カ月の期間にわたって「芸術・体育要員」として服務し、「特技を活用して奉仕活動」をすることになっています。つまり、正式な所属先は軍となります。
さて、今度はパラリンピックが3月9日に開幕します。パラリンピックのメダリストの報奨金についてですが、韓国はオリンピックと同額の報奨金が支払われます。
一方、日本は、金150万円、銀100万円、銅70万円とオリンピックに比べ金額が大幅に下がります。これは、報奨金の支給主体がJOCではなく日本障がい者スポーツ協会となり財源が限られていることによるようです。
どうしてもパラリンピックの方が注目度は落ちてしまいますが、メダリストへの報奨金はオリンピックと同水準にするような施策をとってあげてほしいと思います。
文中の韓国に関する金額は便宜的に1円=10ウォンで換算しています。
Text:黄 泰成(こう たいせい)
公認会計士(日本)、スターシア・グループ代表