更新日: 2020.05.25 その他
海外ロングステイ不動の人気を誇るマレーシア 魅力の1つは「高金利」!?
マレーシアのお金事情を見てみると、最大の魅力のうちの一つは『金利』ではないでしょうか。
世界的に低金利政策が続く昨今でも、その政策金利は何と3%。その上、リンギット建の投資であれば、高いリスクをとらない『定期預金』でも利息が3%以上に加えて、利子所得が『非課税』。日本はマイナス金利政策が続く中、利子所得にかかる税金が、源泉税ももろもろで20.315%なわけですから、単純比較だとその差は歴然です。
しかし、一見魅力的なお金事情をオファーするマレーシアですが、やはりFP目線からするといくつか注意点があります。そこで、マレーシアの銀行で定期を組むときの注意点についてお話をしていきます。
執筆者:田中ゆき恵(たなか ゆきえ)
イギリスCII AFP
アメリカパブリックアイビー、The University of Michigan, Ann Arborを卒業後、マレーシアを本社にもつイギリス系IFA、Infinity Financial SolutionsにてシニアコンサルタントとしてFP歴10年以上のキャリアを持つ。バンコク、ジャカルタ、クアラルンプールを中心に、海外居住者のために、財テクゲームを取り入れたお金セミナーを実施。海外居住中のへそくり術、教育資金のため方、老後資金準備法、相続対策などを得意としており、わかりやすさと包括的なアドバイスをモットーに活動中。各地の日本人向けフリーペーパーなどでも執筆協力している。
https://www.facebook.com/InfinitySolutionsJapaneseService/
【為替リスク】
ロングステイ人気国首位の座を10年もキープしているマレーシア。その魅力のうちの一つに、『高金利』が考えられます。
直近の一年定期レートをざっくりと見渡したところでは、3.75%(非課税)くらいをオファーする銀行もある様子なので、前述の日本の状況との比較だと、 かなりの好条件に感じる方は少なくないのではないでしょうか。
しかし、まとまった資金を換金する場合、換金の時期はとても重要なポイントです。
直近は日本円からの換金であれば割安感のあるリンギットですが、長いスパンで見ると高いときと安いときでは、同じ100万円で購入できるリンギットに1万リンギット(約30万円)以上の差が出ることもあります。こうなると、年利3%程度の利益は一気に吹っ飛んでしまいますので、為替リスクは侮るなかれと覚えておいてください。
【インフレの脅威】
為替と共に侮れないのが『インフレリスク』。『物価が上昇基調』にある経済圏では、利息を引き上げることで市場に回っているお金が銀行に集まってくる流れを作るのが定石。
事実、マレーシアの利息が高い理由の一つは『インフレ率が高いこと』に起因しているところが大きいのです。
マレーシアのインフレ率は、2017年11月の時点で3.4%。5.1%ものインフレ率だった5月から比べると緩やかにはなったものの、過去44年の平均インフレ率でも3.64%。同じ月に0.6%だった日本と比べるとどれだけ物価が上昇しているのかが一目瞭然です。
ちなみに、3%で物価がどんどんインフレしていくと、72の法則を使うと、24年で倍の資金が必要になる計算になります。例えば、今ラーメン1杯が500円相当で食べられているとしたら、24年後は1000円相当必要になるということです。
インフレ率平均が3.64%の経済圏で、マレーシアの銀行にお金を預けて3.2%利息をもらったとします。
すると、実質の利息はマイナス0.44%で、インフレ負けということがわかります。マレーシアの経済状況でもらう3.2%の利息は、実質の購買力で考えると赤字になってしまうことが見えてくるのです。
【海外居住中、日本の銀行口座に残された資金のリスク】
海外居住になるに辺り、意外と灯台下暗しになっているのが、日本の銀行口座に残された資金のこと。
と言っても、平時はなんの問題もありません。しかし、名義人に何かあったとき、慌てるのも負担がくるのも残された家族となることまでは、あまり考えが及ばないところです。
日本では銀行名義は単独名義しか扱いがありません。そして、名義人に何かあると銀行にある『個人の資産』は『故人の遺産』となります。
こうなると、法定相続人が所定の相続手続きを済ませるまで、遺族は遺産を手にすることができません。海外に住んでいる家族の場合、日本に帰国してこのような法的な手続きをこなす必要が出てくるわけですが、海外居住者となると、この日本の手続きと同時に、居住地にある銀行口座も居住地の法律にのっとって相続手続きを行う必要性も発生してくるのです。
居住地では『外国人』の皆さんは、『プロベート(検認手続き)』という、居住者とは異なるステップを踏むことになります。
『プロベート』と呼ばれるこの手続きは、『外国人』がその土地源泉の資産を相続するに当たり必要で、遺産管理人や裁判所での決算処理などなかなか複雑です。
しかし、この手続きを踏まないと、遺族は口座資金にタッチすることができません。
多くの書類提出を求められることに加え、相続人はマレーシアの裁判所に何度も足を運んで手続きをすることになり、場合によっては多くの時間とコストを費やすこととなります。
ただでさえ身内の死に直面している時期の作業は、遺族にとってはストレスになりうることは、安易に想像できます。
このような『リスク』も踏まえて、次回からはマレーシアにいながら、これらの『リスク』をミニマムに抑えるにはどのような方法があるかを掘り下げていきます。
Text:田中 ゆき恵(たなか ゆきえ)
イギリスCII AFP