更新日: 2019.01.10 その他
高校生を対象にした新しい奨学金 東京都独自の奨学金は地方自治体に影響を与えるか
経済的に厳しい家庭にとっては、検定試験の受験料は大きな負担です。「給付型奨学金」は現在、東京都独自の奨学金ですが、この動きはほかの自治体にも影響を与えるのではないでしょうか。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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高校の学校教育費を支援する制度
まず、高校で必要な学校教育費を支援する制度について確認しておきましょう。学校教育費は授業料と学用品費、通学用品費、クラブ活動などの教科外活動費、修学旅行の積立金等に分けることができます。
授業料を国が負担する制度としては「就学支援金」、都道府県が学用品費、通学用品費等を補助する制度として「奨学のための給付金」があります。
●就学支援金
就学支援金の受給資格は、保護者(共働きの場合は2人分)の市区町村民税所得割額が304,200円未満の人です。両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳)、中学生1人の子どもがいる世帯では、おおよそ年収910万円未満の世帯が対象となります。
支給額(基本額)は年額118,800円(公立高校の授業料相当額)です。私立高校等の生徒の場合、世帯の経済状況によって基本額の2.5倍の支援を受けられます。保護者に現金が給付されるものではありません。申請は、1学年は年2回(4月、7月)、2学年以上は年1回(7月)です。高校により手続き時期は異なることがありますので、在籍する高校でご確認ください。
私立高校の授業料に対する自治体独自の支援策として、私立高等学校等授業料軽減助成金があります。
●奨学のための給付金
奨学のための奨学金の受給資格は、生活保護世帯および市区町村民税所得割額が非課税の世帯です。両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳)、中学生1人の子どもがいる世帯では、おおよそ年収250万円未満の世帯が対象となります。就学支援金との両方が受給できます。
全日制の場合、生活保護(生活扶助)受給世帯は年額32,300円(私立52,600円)、非課税世帯(第1子)は75,800円(私立84,000円)、非課税世帯(第2子)は129,700円(私立138,000円)が支給されます。申請は年1回(7月)です。高校により手続き時期は異なることがありますので、在籍する高校で確認ください。就学支援金と異なり、12月頃、保護者の口座に振り込まれます。
東京都独自の「給付型奨学金」とは
資格取得費や検定試験の費用等を東京都が負担します。受給資格者は、(1)生活保護受給世帯、(2)市区町村民税所得割額が非課税世帯および(3)市区町村民税所得割額が51,300円未満の世帯です。給付限度額は、(1)および(2)の世帯は 50,000円、(3)の世帯は30,000円です。限度額を超えた部分の費用は保護者の負担となりますので注意しましょう。
また、保護者が現金を直接受け取るものではありません。学校に給付されます。
給付対象経費(学校の取り組みであることが条件です)は以下のとおりです。
(1)学校行事における経費
例:勉強合宿、語学合宿、介護実習費 等
(2)学力向上に向けた経費
例:模擬試験受験料、AO・論文対策講座受講料 等
(3)検定試験経費
例:英語検定、漢字検定、簿記検定 等
(4)資格試験経費
例:電気工事士資格、危険物取扱者取得 等
申請は年1回(2月)です。高校により手続き時期は異なることがありますので、在籍する高校でご確認ください。
「英検」や「漢検」は、大学・短期大学・専門学校の特に推薦入試・AO入試において優遇されています。また、入試のときだけではなく、合格したあとも役立ちます。漢検は、2級以上を目指しましょう。英検も主にAO入試や推薦入試における学科試験免除、入学金・授業料免除や入学後の英語科目の単位認定など、級によってさまざまな優遇措置を受けることができます。2級以上、できれば準1級以上を目指して勉強しましょう。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。