更新日: 2019.08.30 子育て

生活保護とは違う生活困窮者自立支援制度とは?暮らしぶりを覗いてみた

生活保護とは違う生活困窮者自立支援制度とは?暮らしぶりを覗いてみた
生活保護受給者は、平成29年9月時点では約213万人。世帯数でいうと約164万世帯となっています。平成27年3月をピークに減少傾向にありますが、単身世帯が多い高齢の生活保護受給者が増加しているため、世帯数が増加しています。

ところで、福祉事務所来所者のうち生活保護に至らない人は約30万人(平成29年)にも上ります。

生活保護を受ける手前で支援していこうというのが、平成27年4月に新しい仕組みとして創設された生活困窮者自立支援制度です。
生活保護の制度は知っていてもこの制度を知らない人は多いのではないでしょうか?
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

池田理明

監修:池田理明(いけだみちあき)

弁護士/東京桜橋法律事務所

第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。

座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。

生活困窮者自立支援制度の近況

生活困窮者自立支援制度施行後の2年間で新規相談者は約45万人、自立支援計画の作成による継続的な支援を行った人は約12万人となっています。
 
新規相談者の状況としては全体の約6割が男性であり、特に40~50代の就労していない男性が全体の約2割、子どものいる50代以下の相談者が全体の約3割を占めている状況です。
厚生労働省 社会保障審議会 生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000188339.pdf

生活困窮者自立支援制度の7つの支援

ここで、この制度の中身を紹介していきたいと思います。生活困窮者自立支援制度は、主に7つの支援から成っています。
項目によっては、一定の資産収入に関する要件を満たしている方が対象となります。
 
(1)自立相談支援事業
地域の相談窓口で、支援員が困っている事の相談にのってもらえます。どのような支援が必要か支援プランを作成し、サポートしてくれます。

厚生労働省 平成29年度自立相談支援機関窓口情報(1月1日現在)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000191346.pdf

 
(2)就労準備支援事業
他人とのコミュニケーションの不安など、すぐに働くのが難しい人向けに、6カ月から1年の間、一般就労に向けた基礎能力のトレーニングを提供。
就労に向けた機会の提供や、支援を行ってくれます。
 
(3)就労訓練事業
すぐに一般就労する事が難しい方のために、その人に合った作業機会を提供しながら、一般就労に向けた支援を中・長期的に実施、いわゆる就労訓練を受ける事ができます。
 
(4)一時生活支援事業
住居をもたない方またはネットカフェ等で生活している方に対し、一定期間、宿泊場所や衣食を提供してくれます。退所後の生活に向けて、就労支援などの自立支援も行ってくれます。
 
(5)住居確保給付金の支給
会社を辞めるなどして、住まいを失った方もしくは失うおそれのある方向けに、就労活動をする事を条件に、一定期間家賃を支給してくれます。住居を整えたあと、就職に向けた支援を行ってくれます。
 
(6)家計相談支援事業
家計の立て直しのアドバイスを受ける事ができます。必要に応じて貸し付けのあっせん等を行い、早期の生活再生を支援してくれます。
 
(7)生活困窮世帯の子どもの学習支援
子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、仲間と出会い活動ができる居場所づくりなどを提供してくれます。

生活困窮者自立支援制度活用の事例

また、厚生労働省のホームページには、生活困窮者自立支援制度活用の事例として以下のようなケースが紹介されています。
 
26歳の男性が、飲食店で住み込み就労をしていました。人間関係が苦手で、職場でのトラブルを機に、仕事を休みがちになり、その結果、職場を解雇されました。その後の就職活動も途切れがちになり、貯金がつきて、このままでは、アパートを出て行かなければならない状態になりました。
 
そこで、自立相談支援機関窓口に相談に行きます。まず、生活困窮者自立支援制度を活用して、住居確保給付金の給付を受けました。
 
そして、就業に向け、生活リズムを考え、対人スキルを身につける事を短期目標として、就労訓練事業の非雇用型として高齢者施設に通う事になりました。
 
訓練を受けた結果、非雇用型から雇用型に切り替わり、今では人の役にたちたいとヘルパーの資格を取るべく準備を進めているそうです。

厚生労働省 生活困窮者自立支援制度の紹介
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000073432.html
 
このように、生活全般にわたる困りごとの相談窓口が全国に設置されていますので、困ったときはまず相談する事をお薦め致します。

支援制度活用の注意点

最後に、東京桜橋法律事務所弁護士の池田理明先生に制度を活用するときの注意点をお伺いしました。
 
生活困窮者自立支援制度は、働きたくても働けない、住む所がない、など生活困窮者のセーフティーネットを作り、本当に困っている人を支援していく制度です。
 
その一方で、公的補助金の不正受給は、問題になっております。お金が目的で、虚偽の申告をして不正に受給した場合、詐欺罪となる場合があります。また、その金額の大きさによっては、起訴される場合もあります。
 
収入に関する虚偽の報告、自動車・家などの資産を隠し持っている、福祉事務所に届け出ている世帯員以外の人と一緒に住んでいるなどの事例があります。
 
生活保護費を不正受給して、起訴され、執行猶予なしの実刑が下っている例もあります。くれぐれも、正しい報告を心がけてください。
 
 
著:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属  http://tksb.jp/

IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応。
 


 

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