最終更新日: 2020.03.31 公開日: 2020.04.01
暮らし

離婚後の養育費が決まらない! 話し合いの前に知っておきたい5つの「きほん」

Hさん(妻、専業主婦)とAさん(夫、会社員、年収500万円)は、ともに30代前半で結婚6年目。 未就学児の3人の子どもがいます。
 
近年は夫婦の争いが絶えず、「性格の不一致」により、Hさんは離婚を決意。離婚すること、財産分与、そして3人の子どもの親権はHさんが持つことについて、Aさんとすんなり合意しました。
 
しかし養育費に関しては、そうはいきませんでした。
 
養育費のことについて、ほとんど何も知らなかったHさん。そこで、友人にたずねたところ「養育費は子ども1人当たり月3万円ほどらしいよ」という話を聞きました。「え、そんなに少ないの? でも、それが現実なんだ…」と思ったそうです。
 
そこで、子ども3人分として月9万円をAさんに要求。しかし、Aさんは耳を傾けず、こう言い返しました。「月5万円が限界。これ以上は払えない」2人の議論は、そのまま平行線に。しかし、3人の子どものためにも養育費を取り決めずに離婚はできません。
 
本記事では、養育費の話し合いを進める前に知っておきたい、養育費の「きほん」について、やさしく解説します。
 
酒井 乙

執筆者:

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

酒井 乙

執筆者:

執筆者:酒井 乙(さかい きのと)

AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。  
 
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。  
 
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。 
 

きほん1:養育費は、人によって違う

Hさんは「養育費とは子ども1人につき月3万円」と思い込んでいました。しかし、養育費には決められた額が存在するわけではありません。
 
養育費とは、子どもが「健やかに」成長するために必要な費用です(※1)。健やかに成長するためには、ある程度以上の費用がかかりますが、養育費は、離婚する当事者によって変わることを知っておきましょう。

きほん2:養育費算定表を使って、養育費の「目安」を知ることができる

それではHさんの場合、3人の子どもの養育にいくら必要なのでしょう? 食費、衣服費、そして……、と1つひとつ計算していくと気が遠くなりそうです。そこで、簡単に養育費の「目安」を知る方法があります。それは裁判所が公表している「養育費算定表(※2)」です。
 
養育費算定表は、義務者(払う側)と権利者(もらう側)の年収、それぞれが給与所得者か自営業か、そして子どもの年齢と人数、これら3つを元に養育費の目安が算出できるように作られています。相手と話し合いを進める前に、まずは養育費算定表を使って、おおよその額を算出してみましょう。

きほん3:養育費算定表は「絶対」ではない

Hさんはさっそく算定表を使って養育費を計算してみました。すると、10万円から12万円の間という結果になりました(図1、※3)。
 


 
予想していたより多い金額です。しかし、今度は別の不安が出てきました。今後3人の子どもを習い事や塾にたくさん通わせたいけど、この金額で本当に足りるのだろうか。
 
裁判所の実務でも広く使われている養育費算定表。それでは、この算定表で算出した養育費から、これ以上額を増やす余地はないのでしょうか?裁判所では、養育費の最終的な金額は、算定表だけでなく、「当事者間のいろいろな事情を考慮して決める」としています(※4)。
 
Hさんの場合、3人の子どもを小学校から私立に通わせたいと考えており、教育費が気になっていました。こうした「気になる点」があれば、算定表の養育費とは別にしっかり議論する必要があります。

きほん4:しかし、算定表以上の養育費は特別な事情がある場合のみ

しかし一方で、算定表以上の養育費が認められる場合は限られています。裁判所によれば、算定表の額以上の養育費が認められるのは、算定表によることが著しく不公平となるような特別な事情がある場合に限られるとしています(※5)。
 
したがって、算定表以上の養育費を第三者に認めてもらうには、例えばお子さまの持病に多額の治療費がかかるなど、特殊な事情であることを合理的に説明する必要があることも覚えておきましょう。

きほん5:養育費の取り決めは、必ず離婚前に行うこと

Hさんは、算定表で算出した養育費を元に、再度Aさんと話し合いに臨みました。しかし、Aさんは「養育費は月5万円まで」の一点張り。子ども3人を私立に行かせるなどもってのほか、という態度に業を煮やしたHさんは、裁判所の調停を受ける道を選びました。
 
すでに離婚を考えている夫婦の間で養育費を決めるのは、とても難しいことです。それは統計にも表れており、図2、3(※6)にあるように、母子家庭の6割が養育費の取り決めを行っていません。その理由は「相手と関わりたくない」や「相手に支払う能力や意思がないと思った」が大半を占めています。
 


 

 
離婚後に養育費の取り決めをすることは可能ですが、離婚前の取り決め以上の労力が必要です。そして何より、お子さまの成長には養育費が不可欠。必ず、離婚前に養育費の取り決めを行うようにしましょう。
 
(出典および注釈)
(※1)裁判所「養育費について」
(※2)裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
(※3)※2の養育費算定表を元に、筆者作成
(※4、5)裁判所「養育費・婚姻費用算定表について」P4、5
(※6)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果 表17-(2)-1(母子世帯の母の養育費の取り決め状況等)及び、表17-(2)-11-1(母子世帯の母の養育費の取り決めをしていない理由)」より、筆者作成。
 
執筆者:酒井 乙
AFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。

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